相続放棄の前の財産調査の必要性

相続放棄の前に財産調査をする必要はありますか?

1 相続放棄の前に財産を調査する必要性

相続放棄をした後に,予想だにしなかった財産が見つかった場合は,相続をしておけばよかったと思うかもしれません。

また,相続放棄をしたら,自宅が亡くなった人の名義で出ていかなければならなくなったという事例もあります。

そのため,相続放棄をする前には,専門家に依頼して財産調査を行っておいた方がいい場合が多いです。

2 財産調査を行うケース

⑴ 財産がどれだけあるのか不明な場合

財産がどれだけあるのか不明な場合は,区役所や市役所、法務局、銀行など様々な機関に調査を行い,土地や預金口座がないかを調査します。

相続財産調査の経験が豊富で,様々な調査方法を熟知した専門家であれば,調査漏れがないよう網羅的に財産を調査することができます。

⑵ 借金がいくらあるのかが不明な場合

借金がどれだけあるのかわからないと,相続放棄をするか相続するかは決められません。

借金がないからと相続をした後に借金が見つかってしまった場合、借金の支払に負われることになってしまいます。

そこで,専門家に依頼して,網羅的に借金の全容を調査することをお勧めします。

どこから借りたのか,何社からの借金があるのかがわからなくても借金の有無を調査することができます。

3 財産調査が不要な場合

財産調査は可能であれば行う方が良いですが,これをしないと相続放棄ができないというわけではありません。

全く連絡を取っていない遠縁の親戚が亡くなり相続してしまった場合には,財産調査をせず相続手続に関与しないために相続放棄をする方もいます。

この場合は,放棄によりプラスの財産があっても引き継げなくはなりますが,それよりも相続手続に関与したくないとお考えの方が多いようです。

4 財産調査でお悩みの方はまずは弁護士に相談を

財産や借金の調査は様々な機関で調査をしなければならず,調査方法や必要な提出書類は市役所ごと、銀行ごとにバラバラです。

そのため,調査を網羅的に行おうとすると,相当な手間と時間がかかります。

また,平日の日中に窓口に行かなければならないことも多く,調査のために仕事を何度も休む必要があります。

そこで,手間と時間のかかる手続は専門家に一任することをお勧めします。

また,財産調査をしない場合のリスクについてもわかるため,まずは弁護士に相談するのが良いでしょう。

コロナ情勢と弁護士

1 弁護士業務とコロナ

昨今,猛威を振るう新型コロナウイルスですが,弁護士業務も無関係ではいられません。

弁護士業務は次の2つの点からテレワークに向いていないからです。

 

2 ①仕事道具を外に持ち出しにくい

弁護士は,事件の資料を事務所外に持ち出すことは原則禁止とされている場所が多いです。

これは,弁護士の扱う情報はプライバシー性や機密性が高いため,外部で紛失した場合に依頼者や関係者の方々に大変なご迷惑をかけてしまうからです。

プライバシー性の高い資料としては,一例として,住所が記載されている住民票や病歴の記載されているカルテなどがあります。

また,企業法務の場合には,報道前の情報などの機密情報もありえます。

このように,プライバシー情報や機密情報を扱う機会が多いため,これらを持ち出しにくい弁護士業務はテレワークに不向きです。

また,セキュリティ上の観点から,パソコンのデータに外部からアクセスするのも危険であることも理由の一つです。

 

3 ②対面で話をする必要がある

弁護士がテレワークをするのを妨げる要因に,実際に向かい合って話す必要があるという点があります。

これは,資料の現物を実際に確認しなければならない場面があること及び実際に裁判所に行く必要があることが理由です。

 

⑴ 資料の現物を確認する必要

お電話でお話をうかがっているときに,手元の資料についてご説明をお願いすることはしばしばあります。

しかしながら,法的な文章や税金に関わる通知書などは難解で一見して意味が取りづらいものも多いです。

そのような書類をお電話で説明をお願いするのはかなりのご負担を強いることになるため,実際に資料をご持参いただいて現物を弁護士が確認した方がよい場合があるのです。

また,資料の中には,一見して重要には見えない記載でも法的に重要な意味を持つ記載があります。

このような記載を電話での説明だと見落としてしまうリスクがあるため,やはり,弁護士が資料の現物を確認した方が安全です。

 

⑵ 裁判所に行く必要

裁判所の手続は,実際に裁判所へ行かなければならないものが多いです。

確かに,書面のみを提出し直接裁判所に行かない場合や,電話での期日を行うこともあります。

しかし,全てを書面の提出のみで終わらせることは難しいです。

また,遠方の裁判所でない場合は電話での期日を認められない場合もあります。

このため,結局どこかのタイミングでは裁判所に行かなければならず,完全なテレワークを行うことは難しいです。

 

4 リモートデスクトップ等の活用

リモートデスクトップにより,事務所のPC上の資料に比較的にリスクを減らしてアクセスすることはできます。

また,資料についても,依頼者の方にスキャンして送っていただくことで対応する場面も多くなっています。

裁判所も,会議システムを利用した裁判期日を行う取り組みを始めており,いずれは弁護士が裁判所に行く必要はなくなるかもしれません。

しかしながら,リモートデスクトップでもセキュリティ面でのリスクは0にはできません。

また,依頼者の方の中には,ご高齢で技術的に資料送付が難しい方もいらっしゃいます。

裁判所の取り組みも試験的に始まったばかりで,全面的な活用までは今しばらくの時間を要するでしょう。

このため,弁護士が完全なテレワークを行うことはもう少し先になりそうです。

 

5 手洗いうがいをこまめに

とは言いつつも,このご時世,感染リスクは極めて大きいので,皆様,不要不急の外出を控えて,手洗いうがいをこまめに行って,お体にお気をつけてください。