任意整理と利息カット

1 任意整理とは

借金の任意整理とは、貸金業者などと弁護士を通じて交渉をすることで、分割払いにする手続きです。

たとえば、クレジットカードをリボ払いにしていたところ、借金の残高が240万円になってしまい、今月は20万円支払わなければいけなくなってしまったとします。

こういった場合でも、任意整理が上手く行けば、毎月4万円を5年間(=60回)支払っていけばよくなる可能性があります。

自己破産や個人再生などの、裁判所を利用する「法的整理」より、柔軟に簡素な手続きで借金整理をできるのが任意整理の魅力です。

2 任意整理では将来の利息カットができる可能性がある

任意整理のメリットは、毎月の支払額を抑えられることです。

これに加えて、任意整理の大きなメリットとして、将来の利息がカットできる場合があります。

利息カットというとイメージしづらいですが、以下の図をみるとわかりやすいです。

ここで、よく見ていただきたいのが、最初の月は4万円払っているのに、そのうちの3万円が利息の支払いで、借金の返済は1万円しかされていません。

そして、240万円の支払いが終わるころには、206万3761円の利息を追加で払っています。

これをもし、将来利息のカットができると、4万円支払えば、借金が4万円減っています。

そして、240万円を支払終わるまでに240万円を支払えばいいため、利息の約200万円分だけ得をしていることになります。

また、返済期間も112か月から60か月と約半分になっています。

これが、将来利息カットの効果で、イメージはしづらいですが効果絶大です。

任意整理は、「自己破産などと違って借金は減らない手続き」と思われがちですが、実際には利息カットにより借金の総支払額が大幅に減る可能性があります。

返済の終わりが見えないと思ったら、まずは弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

弁護士法人心でも任意整理に関する相談を無料で承っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

民法改正と借金の消滅時効

1 時効の期間は、借入先や借り入れた時期により年数は変わる。

消滅時効は、現在の民法では、原則は返済期限から5年とされています。

もっとも、これは、令和2年4月1日に改正された民法で、改正前は10年とされていました。

また、この時効には特例がたくさんあり、借金において特に関係があるのが商法の商事消滅時効と裁判を起こされた場合です。

そのため、いくつか場合分けをして紹介をしたいと思います。

2 時効の年数

⑴ 令和2年4月1日以降に借りた借金:5年

借金を借りたときの民法が適用されるため、民法改正後に借りた借金は返済期限が来てから5年で時効になります。

また、返済期限を決めずに借りた借金は、返済の請求を受けたときから5年の時効がスタートします。

⑵ 令和2年4月1日以前に借りた借金:10年

民法改正前は、時効の一般規定は10年とされていました。

そのため、これより前に借りた借金は10年で時効になります。

なお、次で説明しますが、10年になるのは、家族や友人などに借りた借金で、金融業者に借りた借金は5年です。

⑶ 銀行や貸金業者から借りた借金:5年

旧民法の10年というのは一般原則で、銀行や貸金業者から借りた借金は商法の特別規定で消滅時効が5年になります。

商法 第522条

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合 を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。

銀行や貸金業者から借金をする行為は商行為に当たるため、この条文が適用されます。

なお、民法改正により原則が5年になったため、この条文は現在では削除されています。

⑷ 裁判を起こされた場合:10年

今まで説明したとおり、基本的には借金の時効は5年です。

ただし、裁判を起こされた場合、特則で、敗訴判決が出て判決が確定してから10年が時効になります。

民法 第169条

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

裁判は欠席すると、欠席のまま敗訴判決が出てしまうため、5年で時効だと思っていたら知らない間に裁判が起こされていて時効になっていなかったという可能性はあり得ます。

3 民法改正で変わったのは、友人・知人からの借入

結局のところ、民法改正で変わったのは、友人知人など(≠貸金業者などの「商人」)から借りた借金が、

 令和2年4月1日以前:10年

 令和2年4月1日以降:5年

に変更になった点です。

そのほかの部分はあまり変わってはおらず、借金の多くは貸金業者が中心だと思うので、あまり民法改正が影響してくる場面は少ないでしょう。

時効は、時効の中断などややこしい問題もあるので、まずは弁護士に相談してみましょう。

個人再生の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

自己破産の免責

1 免責により借金がなくなる。

自己破産は、免責許可決定が出ると手続きが終了します。

この免責許可決定が出ることにより、借金を請求されることがなくなります。

そのため、自己破産は、免責を受けるための手続きと言っても良いでしょう。

免責は、法律で決められた免責不許可事由(破産法252条1項各号)がなければ、認められることになっています。

また、仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判官の裁量により免責を受けることができます、

2 借金がなくならない場合(免責不許可事由)

⑴ 不当な財団価値減少行為

支払不能後(借金が返せなくなった後)に、自身の財産を不当に消費、贈与、安価での売却をした場合です。

例えば、破産すると車を失ってしまう場合に、親族や知人に、車を相場の50万円ではなく、10万円など極めて安い金額で売却する行為がこれに当たります。

また、財産隠しなども該当します。

⑵ 不当な債務負担行為・不利益処分

破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で借金をした場合や、クレジットカードで購入して安価で売却した場合です。

例えば、借金が返せなくなって、闇金で借りてしまう場合があります。

また、借金を返すために、クレジットカードでカメラやスマートフォンを購入した後、その購入物を原価より安く売却して現金を得る行為も該当します。(いわゆる「現金化」)

⑶ 不当な偏波弁済

偏波弁済(「へんぱべんさい」)とは、一部の借金だけ返して、他の借金を返さないなど、借金に差をつけて返済することです。

例えば、クレジットカードや消費者ローンは返さずに、親族や知人の借金だけを返す行為がこれに当たります。

また、車を残すために、車のリース料金だけ支払う場合も該当します。

⑷ 浪費・賭博等による財産減少行為・債務負担行為

「浪費」とは、破産者の地位、職業、収入、及び財産状態に比して通常の程度を超えた支出をすることを言います。

自身の収入で返済できない金額の買い物をクレジットカードでしてしまう場合です。

「賭博」には、競馬・パチンコなどのいわゆるギャンブルです。

また、株の売買やFX取引等、投機的な取引も、この項目に該当します。

⑸ 詐術による信用取引

収入などを偽ってかりいれることは、免責不許可事由にあたります。

また、積極的に嘘をついた場合だけでなく、誤解させるような表現をしたり、返済可能性がないことなどを黙って借り入れることも、詐術に当たる可能性があります。

⑹ 説明義務違反

裁判所による調査に対して説明を拒んだり嘘の説明をする場合や、そのほかの破産法が定める義務に違反する場合です。

仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判所に対して隠し事をしたり嘘をついたりすると余計に状況が悪化するため、弁護士には正直に話して、裁判所への説明を考えていくのが良いでしょう。

3 免責不許可事由があっても、免責される場合(裁量免責)

仮に、免責不許可事由があっても、裁判官の裁量で免責となり、借金がなくなる場合があります。

裁量免責になるかは、次のような事情が考慮されます。

⑴ 浪費、ギャンブル等がある場合

・使った金額

・浪費、ギャンブルをしていた期間

・浪費、ギャンブルをしていた時期

・破産手続きに誠実に協力したか

⑵ 詐術による信用取引の場合

・嘘をついて借り入れた額

・悪質性

・債権者の免責意見の有無

・破産手続きに誠実に協力したか

⑶ 裁判所への説明義務違反

・説明義務違反の内容、程度

・説明義務違反が破産手続きに与えた影響

4 破産してもなくならないもの(非免責債権)

破産をしても、免責されない(なくならない)借金等があります。

これを非免責債権と言います。

具体的には、次のものがあげられます。

・税金等

・悪意の不法行為に基づく損害賠償(人を殴った場合などの治療費、慰謝料等)

・故意、重過失による人の生命、身体を害する不法行為に基づく損害賠償(交通事故でけがを負わせた場合の治療費、慰謝料等)

・養育費や婚姻費用等

・従業員の給料等

・故意に債権者名簿に記載しなかった借金

5 まずは、弁護士に相談

・罰金

破産をする場合、大なり小なり免責不許可事由が疑われる事情は出てきます。

しかし、弁護士による説明などによっては、免責になることは珍しくないため、まずは、弁護士に話してみてください。

個人再生をする場合の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を裁判所に提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

自己破産、個人再生に領収書は必要?

1 自己破産、個人再生ではお金の使い途を審査される。

 自己破産や個人再生は、「お金を借りてしまったけれど、どうしても返済ができないので、裁判所の審査のもとで借金を減らす」という手続です。

 そのため、過去に浪費やギャンブルをしていないかなどお金の使い途は、裁判所の審査の対象となります。

 また、自己破産は、いま手元にある財産は(自由財産を残して)返済に充てて、残った借金をゼロにします。

 個人再生は、手持ちの財産の総額まで借金を減らす手続です。

 したがって、自分の財産を減らす行為は、債権者への返済金額を減らすことに繋がるので、厳しく審査されます。

2 領収書が必要な理由

 自己破産や個人再生では、過去から申立前まで、無駄遣いしていないかをチェックされます。

 そのため、領収書で無駄遣いをしていないことを証明する必要があるのです。

 仮に、使い途を説明できないと、使途不明金ということで無駄遣いと同視されてしまう可能性もあります。

 使途不明金となってしまうと、自己破産の場合は使途不明金の金額だけ裁判所に納めたり(財団組入れ)、個人再生の場合は将来の返済額を増やされたり(清算価値の上乗せ)してしまう可能性があります。

 このため、領収書が必要になってきます。

3 領収書が必須の場面

① ライフラインの領収書

 自己破産、個人再生の必要書類に家計簿があります。

 毎月の収入と出費を記録して家計簿を作り、裁判所への申立書と一緒に提出します。

 この家計簿に書く、家賃、水道光熱費、駐車場代、保険料などは1円単位で正確に記入し、領収書を添付します。

 領収書がないと、必要書類が足りないということで、そもそも自己破産や個人再生の審査をしてもらえません。

 そのため、家賃、水道光熱費、駐車場代、保険料などの領収書は必須のため、捨てないようにしてください。

② 高額な出費をした場合

 自己破産や個人再生では、無駄遣いを厳しく審査されます。

 領収書がないと、無駄遣いではない場合でも、使途不明金ということでその分だけ弁償しなければならない場合まであります。

 また、浪費は免責不許可事由として、破産が認められなくなる理由の一つです。

 そのため、高額な出費をした場合は、必ず領収書を残しておくようにしましょう。

4 領収書がいらない場合

① ライフラインの支払を口座引落などで支払っている場合

 口座引落や決済サービスで家賃や水道光熱費を支払っている場合は、領収書は不要です。

 口座引落の場合は通帳のコピー、決済サービスの場合は利用明細やWEBページのスクリーンショットなどが代わりに必要になります。

 ただし、携帯料金などが金額が高額になる場合は、領収書や支払明細の提出を求められることもあるので注意が必要です。

② 食費、日用品などの生活費

 毎月作成する家計簿には、食費や日用品の購入費を記入する欄があります。

 この欄は月ごとの合計額を記入しますが、1円単位に正確である必要はなく、ある程度は丸めて書いても大丈夫です。

 食費のレシートを何十枚も集める必要などはないです。

 ただし、通帳の出金額とズレがある場合や毎月の合計額が高額になる場合は、領収書などで説明が必要になります。

5 まずは弁護士に相談を

 領収書が必要かどうかは、ケースバイケースです。

 「領収書がないから破産できない」といったことはなく、弁護士と相談しながら集めていけばいい場合も多いです。

 まずは一人で悩まず相談をしてみましょう。

自己破産・個人再生の必要資料

 自己破産・個人再生など、裁判所を使った手続きを行う場合は、資料集めが一つのハードルになります。

 実際には、弁護士と相談しながら資料を集めていくため、最初から全てを完璧に揃えておく必要はなく、まずは気軽に相談をしてみることをお勧めします。

1 直近2年分の通帳

 持っている全ての通帳のコピーが必要になります。

 WEB通帳やアプリの場合は、印刷をしたもので大丈夫です。

 また、通帳をなくしてしまっている場合は、銀行の窓口で過去の履歴を発行することができます。

 何年間も一切使っていない0円の口座でも、口座を解約していない場合は提出対象になる点は、注意が必要です。

 また、長期間記帳をしていない通帳は「おまとめ記帳」といって、何件かの取引が合算した金額になっています。

 「おまとめ記帳」になっている期間は、銀行の窓口で履歴を別で取寄せる必要があります。

2 家計簿

 直近1~3か月の家計簿を作成して提出する必要があります。

 書式は、裁判所の書式があります。

 弁護士に依頼してから申立までに数か月程度の準備期間があるため、その間に作ることになります。

 そのため、弁護士に相談する前に家計簿はなくて大丈夫です。

3 毎月固定の生活費(ライフライン)の領収書のコピー

 家賃・ガス・水道・電気・通信(電話代)費・保険料等の直近1~3か月の領収書のコピーが必要になります。

 口座引き落としの場合は、通帳のコピーで大丈夫です。

 また、WEBやアプリで利用明細が出る場合は、画面を印刷したものやスクリーンショットでも大丈夫です。

 これらの領収書も、弁護士に依頼してから申立てまでの準備期間に用意するため、今までの分を捨ててしまっていても心配はありません。

4 給与明細のコピー

 自己破産・個人再生をする人の給与明細はもちろん、同居している人の給与明細も必要となります。

 生計を別にしている場合、不要でない場合でも、同居している場合は必要となってきます。

5 年金、児童手当などの受給者証のコピー

 児童手当、年金、生活保護、失業保険等の国や地方自治体から給付を受けてる場合は、その受給者証や受給金額がわかる資料のコピーが必要になります。

 証明書は、はがきなどが送られてきている場合や、窓口で発行が必要な場合があります。

6 賃貸借契約書のコピー

 住んでいる家の契約書のコピーが必要になります。

 契約が数年ごとに更新されてる場合は、更新されている最新のものが必要になります。

 また、更新契約の場合は、貸主・借主・毎月の家賃・敷金が省略されていることがあるため、その場合は、一番最初の契約書(原契約)が必要になります。

7 不動産の査定書・登記簿等

 持ち家に住んでいる場合は、今売った時の金額を評価してもらった査定書が必要になります。

 方法としては、インターネットで不動産会社に査定する方法や、不動産屋の窓口で「この不動産売った時の値段を教えてください」など聞いていただく方法があります。

 査定書は2~3社からとることになります。

 注意点としては、一般の顧客に売った場合と不動産会社が買い取る場合で金額が違うので、一般の顧客に売った場合の査定書を作ってもらう必要があります。

8 車の査定書・車検証

 車やバイクも査定書が2~3社分必要になります。

 不動産と違い、正式に査定書を作ってくれないケースも多いです。

 その場合は、中古買取業者の担当者の名刺の裏に、口頭で教えてもらった金額をメモしておくことでも代用できます。

9 直近2年分の源泉徴収票のコピー、課税証明書の原本

10 保険証券のコピー・解約返戻金計算書

 保険は、生命保険・医療保険・火災保険・自動車の任意保険・自賠責保険などあらゆる保険が対象となります。

 また、保険を解約したときに、いくらお金(解約返戻金)が戻ってくるかを計算した書類も必要となります。

 解約返戻金計算書は、毎年手紙が来ているなどしない場合、最初から手元にないことも多いので、その場合は、保険会社に問い合わせることになります。

相続放棄の前の財産調査の必要性

相続放棄の前に財産調査をする必要はありますか?

1 相続放棄の前に財産を調査する必要性

相続放棄をした後に,予想だにしなかった財産が見つかった場合は,相続をしておけばよかったと思うかもしれません。

また,相続放棄をしたら,自宅が亡くなった人の名義で出ていかなければならなくなったという事例もあります。

そのため,相続放棄をする前には,専門家に依頼して財産調査を行っておいた方がいい場合が多いです。

2 財産調査を行うケース

⑴ 財産がどれだけあるのか不明な場合

財産がどれだけあるのか不明な場合は,区役所や市役所、法務局、銀行など様々な機関に調査を行い,土地や預金口座がないかを調査します。

相続財産調査の経験が豊富で,様々な調査方法を熟知した専門家であれば,調査漏れがないよう網羅的に財産を調査することができます。

⑵ 借金がいくらあるのかが不明な場合

借金がどれだけあるのかわからないと,相続放棄をするか相続するかは決められません。

借金がないからと相続をした後に借金が見つかってしまった場合、借金の支払に負われることになってしまいます。

そこで,専門家に依頼して,網羅的に借金の全容を調査することをお勧めします。

どこから借りたのか,何社からの借金があるのかがわからなくても借金の有無を調査することができます。

3 財産調査が不要な場合

財産調査は可能であれば行う方が良いですが,これをしないと相続放棄ができないというわけではありません。

全く連絡を取っていない遠縁の親戚が亡くなり相続してしまった場合には,財産調査をせず相続手続に関与しないために相続放棄をする方もいます。

この場合は,放棄によりプラスの財産があっても引き継げなくはなりますが,それよりも相続手続に関与したくないとお考えの方が多いようです。

4 財産調査でお悩みの方はまずは弁護士に相談を

財産や借金の調査は様々な機関で調査をしなければならず,調査方法や必要な提出書類は市役所ごと、銀行ごとにバラバラです。

そのため,調査を網羅的に行おうとすると,相当な手間と時間がかかります。

また,平日の日中に窓口に行かなければならないことも多く,調査のために仕事を何度も休む必要があります。

そこで,手間と時間のかかる手続は専門家に一任することをお勧めします。

また,財産調査をしない場合のリスクについてもわかるため,まずは弁護士に相談するのが良いでしょう。

相続放棄ができなかった場合の対処法

1 相続放棄ができない場合は、借金を支払う必要がある。

3か月の期限を過ぎてしまったり、故人名義の預金を引き出してしまったりした結果、相続放棄できないというケースは多くあります。

相続放棄ができないと、借金なども相続してしまい、どうにかしてこれを支払わなければいけません。

借金を支払わないでいると、裁判を起こされたり、故人とは関係のない相続人自身の預金、自宅や給料が差し押さえられるケースもあるため、何かしらの対応が必要です。

プラスの財産があれば、現金化して支払いに充てることもできますが、そのようなケースは稀です。

このようなケースでは、債権者と任意の交渉や、場合によっては、破産などの法的手続きも視野に入れる必要があります。

2 債権者との交渉で分割払い

借金を相続すると一括払いを要求されることが多いです。

もっとも、一括での支払いが難しい場合、各社と交渉をして借金を分割払いにしてもらえる場合があります。

たとえば、総額で240万円の借金がある場合、5年間で60回払にする交渉が成立すれば、240万円÷60回=4万円/月となり、毎月4万円を支払っていけばよくなります。また、交渉次第では、将来の利息をカットできることもあります。

3  自己破産で借金を0に

自己破産は、裁判所の認可により、借金を0円にする手続きです。

手持ちの財産と比較して、借金の方が多い場合は自己破産により借金をなくせる場合があります。

ギャンブルや浪費で作った借金の場合は破産できないケースがありますが、相続で借金を引き継いでしまった場合はそのような問題点も少ないため、比較的に破産手続きはしやすいです。

ただし、自己破産は、手持ちの財産を売却して返済に充ててしまうため、自宅や車など手放したくない財産がある場合は、注意が必要です。

4  個人再生で借金を圧縮して分割払い

個人再生は、裁判所で認可を受け、借金を圧縮して、3年〜5年かけて分割払いをしていく手続きです。

自己破産との違いは、自宅や車など、売却されてしまうと困る財産があるときにも手放さなくて済む点です。

実際に圧縮できる金額は、次の①〜③から一番高い額となります。

①法律で定められた最低弁済額

②借金の総額の1/5

③清算価値(手持ちの財産総額)

例えば、借金の総額が720万円で、手持ちの財産が預金20万円のときは、

①法律で定められた最低弁済額

→100万円

②借金の総額の1/5

→144万円

③清算価値(手持ちの財産総額)

→20万円

となり、一番高い②144万円を毎月4万円を3年間かけて返済していくことになります。

5  まずは弁護士に相談を

借金が返済できない場合の対応方法は色々ありますが、何が最適な方法かはケースバイケースで難しいです。

まずは、弁護士に相談し、現在の状況を踏まえて、一緒に方針を決めていくのが良いでしょう。