会社の破産と代表者(社長)の破産

1 会社だけの破産はできるか?

会社を作って事業をやる場合、例えば飲食店であれば店舗の内装や調理器具などの初期投資のために借金をすることが多いです。

運送業であれば初期投資としてトラックを購入したり、仲介業であれば外注への支払いや資金繰りのために借り入れをします。

その場合、法人を作り、法人名義で借金をして会社代表者が連帯保証人になっていることがほとんどです。

そのため、会社を破産すると、会社代表者に一括で借金の請求がされるため、結局は会社代表者も破産や個人再生をしなければいけなくなってしまいます。

2  代表者が連帯保証人になっていない場合

たまに、事業資金を銀行から借り入れている場合でも、会社代表者が連帯保証人になっていない場合があります。

また、法人名義のクレジットカードの滞納分や、取引先からの材料の仕入れ費や外注業者への支払いの未払いであれば、連帯保証人がついていないことが多いです。

このような場合、会社だけ破産させて、会社代表者はそのままにできないかという相談はかなり多くいただきます。

理由としては、会社と会社代表者の財産がしっかり区別されていることがまずないため、財産隠しができてしまうためです。

会社の破産だけ認めると、例えば会社に1000万円の預金と1億の借金がある場合に、1000万円を役員報酬として支払ってしまえば、1000万円を手放さずに1億円の借金だけ破産できてしまうからです。

3 会社のみの破産申立をするとどうなる?

破産申立をすると、裁判所が開始決定を出すと初めて手続が始まります。

会社の破産のみを申し立てても、会社代表者の破産申立がされない限り、開始決定を裁判所が出さない運用にしています。

そのため、いつまでも破産ができないことになり、最終的には申立を取り下げなければいけなくなります。

なお、個人に借金が一切ない場合は、「支払不能」という破産の要件を満たさないため、その場合は個人の財産状況を、破産申立と同レベルで正確に報告することになります。

(ただし、おそらくは会社からの貸付金などで、会社代表者が会社から借金を負っていると判定されて、自己破産せざるを得なくなるケースが多いです。)

4 まずは弁護士に相談

会社の破産はかなり複雑で、インターネットで少し調べたくらいでは気付けないような注意点などが多くあります。

個人の自己破産をやっている弁護士でも、会社の破産の経験がないと見落としがあることが多々あります。

そのため、会社を経営していて、支払いが苦しくなってきたと感じた場合は、まずは会社の破産に詳しい弁護士に相談してみてください。