個人再生で減額できない債権

1 税金など一部の未払金は減額されない

個人再生は、借金を減額した上で3年や5年といった期間かけて分割払いしていく手続きです。

もっとも、全ての借金や未払金が減額されるわけではなく、税金など一部の債権は個人再生をしても減額されることはなく、そのまま支払い続けなければなりません。

民事再生法122条において「一般の先取特権その他一般の優先権」(一般優先債権)は、個人再生を行っても減額されません。

また、抵当権など担保がついている債権は、個人再生をしても担保権の実行をすることができるため、個人再生で減額をする前に債権回収が行われてしまいます。

個人再生で減額されない債権は、一覧にすると以下のとおりです。

もっとも、細かくみていくと、民事再生法以外の法律も関係してくるため、減額されるのか減額されないのか、弁護士でも判断に困ることもあります。

そこで、以下でいくつかピックアップして細かく説明します。

2 担保権のついている債権

 自宅に抵当権を付けるなどして担保に借入を行った借金は、別除権を有します。(民事再生法53条1項)

 別除権を有する債権は、個人再生の手続中であっても別除権の行使が可能です。(民事再生法53条2項)

 つまり、例えば自宅に抵当権を借りた不動産担保ローンについては、自宅を競売にかけて売却することができ、借金を自宅の売却代金から回収されてしまいます。

 また、リースで購入した自動車については、所有権留保が自動車についているため、自動車は引き揚げられて売却されてしまいます。

 なお、「個人再生において住宅ローンは残せる」とよく言われますが、住宅ローンも別除権付債権にあたり、原則は自宅の競売が可能です。

 しかし、住宅ローンについては特例があり、要件を満たせば例外的に住宅を売却されずに残せることになっています。

3 租税等の請求権

「租税等の請求権」については、「一般優先債権」(民事再生法第122条1項)にあたり、個人再生で減額ができません。

租税というと、いわゆる税金をイメージしますが、税金以外の国民健康保険料や社会保険料なども租税債権に含まれます。

「租税等の請求権」は、「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」とされています。(破産法97条4号)

国税徴収法では通常の民事訴訟等を経ないで差し押さえをすることができますが、市税や保険料などは、国税徴収法と同じ仕組みで差押等の手続きをすることができます。

つまり、このような仕組みで差押ができる請求権は、「租税等の請求権」として、個人再生を行っても減額できません。

具体的には、市県民税、固定資産税などの市税や国民健康保険料や社会保険料などの保険料が減額できません。

4 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求とは、人を殴った場合の慰謝料など、故意に行った違法行為についての損害賠償を指します。

 ここでいう「悪意」とは法律用語で、言い換えるなら「わざと」という言葉が一番しっくりくるかもしれません。

 「悪気があって」という意味とは少々ニュアンスが違います。

 稀にあるケースとして、借金の返済に困って会社のお金に手を付けてしまった場合などはこれにあたり、個人再生をしても減額することができません。

 また、支払うお金がないからと返さないと刑事事件にされるリスクもあるため、扱いは慎重にならなければいけません。

5 故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

 典型例としては、交通事故で相手に怪我をさせた場合の治療費などがこれにあたります。

 「故意又は重大な過失」が条件であるため、裏返すと通常の過失や軽過失により発生した事故によりけがを負わせた場合は、個人再生で減額の対象になる可能性があります。

 もっとも、このようなケースでは被害者側からの強い反対が想定され、個人再生の手続きが難航する恐れがあるため、よく弁護士に相談しましょう。

6 まずは弁護士に相談

以上を見ていくとわかるように、どれが減額できてどれが厳格できないかは、個別に見ていくとかなり専門的な内容です。

もっとも、減額できると思っていたものが減額できないとすると将来の返済計画が大きく崩れます。

そのため、不安がある場合は、まずは弁護士に相談しましょう。

相続放棄にかかる費用

1 費用の種類

相続放棄では、次のような種類の費用がかかります。

・収入印紙:800円

・予納郵券:約500円

・郵便切手代:数百円~数千円

・定額小為替:300円~750円×戸籍等の枚数

・弁護士費用等:2万円~

以下で、詳細を説明します。

2 収入印紙:800円

相続放棄の申立書には、収入印紙800円を貼る必要があります。

申立書は相続人の人数分だけ用意する必要があるため、子供2人が相続放棄する場合は、800円×2人=1600円必要になります。

3 予納郵券:約500円

相続放棄の申立書には、未使用の郵便切手をつける必要があります。

裁判所は、申述人から提出された切手を使って、様々な書類の郵送をします。

切手の金額と枚数は、裁判所ごとに違うことがあり、随時金額も変更されるため、申し立てる前に裁判所のホームページで確認する必要があります。

東海市を管轄する名古屋家庭裁判所半田支部では、現在時点では、84円切手×5枚が必要になります。

予納郵券は、相続人の人数分用意する必要になることがほとんどです。

4 郵便切手代:数百円~数千円

相続放棄の申述書は、裁判所に持参することもできますが、郵送することもできます。

郵送の場合は、その分の切手代がかかります。

紛失してしまうと一大事のため、念のため簡易書留等を利用した方がいいため、500円程度はかかります。

また、相続放棄をする際は、戸籍や住民票が必要になります。

必要な戸籍等については、以下のとおりです。

戸籍や住民票は、窓口で発行ができますが、遠方の市役所で取得しなければいけない場合は郵送で申請書を送り、郵送で戸籍等を送ってもらいます。

往復の切手代がかかるため、1通取得するのに数百円~1000円程度かかります。

5通取寄せると、3000円程度は見ておいた方が良いでしょう。

5 定額小為替:300円~750円×戸籍等の枚数

相続放棄をする際は、戸籍や住民票が必要になり、手数料がかかります。

発行手数料は市役所ごとに違いますが、

住民票:200~400円

戸籍謄本:450円

除籍謄本:750円

の市役所・区役所がほとんどです。

相続放棄で必要になる戸籍は以下のとおりです。

なお、相続関係によって、追加で戸籍謄本等が必要になることがあるので、正確には専門家に相談することをお勧めします。

⑴ 子供が放棄をする場合

・被相続人の除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

⑵ 孫が相続放棄する場合

・被相続人の除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子(相続人の親)の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑶ 親が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑷ 祖父母が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の両親の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑸ 兄弟姉妹が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の両親の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の祖父母の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑹ 甥姪が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の両親の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の祖父母の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の兄弟姉妹(相続人の親)の死亡の記載のある戸除籍謄本

6 弁護士費用等:2万円~

相続放棄を弁護士等の専門家に依頼する場合は、上記のような経費とは別に専門家の費用が掛かります。

相続放棄を依頼する専門家としては、弁護士と司法書士が挙げられますが、料金はほぼ変わらないことが多いです。

料金は事務所ごとにバラバラであるため、よく比較した方が良いですが、相続人1人あたり2万円~10万円程度のことが多いです。

また、相続放棄の料金は、相続関係の複雑さやサービス内容によって変わってくるため、単に値段で比較するので、なにをどこまでやってくれるかを良く確認した方が良いでしょう。

例えば、司法書士は書類を作ることしかできず、裁判所や借金の取立に対する窓口にはなれないため、裁判所からの質問があった場合や借金の取立てがあった場合の対応は自分でやることになります。

一方で、弁護士は代理人となれるため、裁判所や借金の取立に対する窓口などまで任せることができます。

自己破産をすると勤務先にバレるか?

1 勤務先にバレないことが多い

自己破産をしても、勤務先に連絡は必須ではないため、バレないことが多いです。

もっとも、以下のパターンでは勤務先に自己破産の手続き中であることが伝わってしまう可能性があります。

以下で、詳しく説明します。

2 ①給料の差押えがされた場合

借金を支払わないまま放置しておくと、訴訟や支払督促などの法的手続きを取られます。

そして、裁判所からの呼出等を放置したり、裁判所において分割払いの合意ができなかったりすると、債務名義を取られてしまいます。

給料の差押えは、自己破産でなくとも任意整理(借金の分割払い交渉)でも発生する可能性のある話ですが、自己破産の場合は、

の2点から、早期に分割払いの和解をして差し押さえを止めることができないため、リスクが高くなりがちです。

3 ②勤務先に借金がある場合

勤務先から給料を前借している場合や、社長から借金をして毎月の給与から天引きをしていることはよくあると思います。

自己破産の場合は、借金の支払いを全て止めなければならず、貸金業者には返済せず勤務先だけに返済を継続するということになると、「偏波弁済(へんぱべんさい)」にあたり免責不許可事由として破産ができなくなる一因となってしまいます。

そのため、勤務先に

を説明しなければいけないため、勤務先に自己破産をしていることがバレることにはなってしまいます。

差押えは、破産の申立てをすれば止められるため、対策としては、できる限り早く破産の申立ての準備を終わらせることになります。

4 ③退職金額の証明書を発行依頼する場合

自己破産の手続きにおいては、現在退職した場合の退職金の金額を裁判所に報告する必要があります。

大企業の場合は、人事システムが整備されており、社員がいつでもアクセスして退職金額を調べることができる場合もあります。

しかし、大半の企業ではそこまでシステムが整備されていることは珍しく、退職金額を確認するには、人事部などに問い合わせをしなければいけないことが多々あります。

具体的には、退職金額の報告方法は以下のとおりです。

a.b.d.の場合は、勤務先に必ずしも破産のことを話す必要がありません。

特に注意が必要なのが、退職金がなくとも「退職金がないことを証明する資料」は提出しなければいけないことです。

ご自身のケースで、会社への問合せが必要かは、弁護士に確認をした方が良いでしょう。

相続放棄の延期(期間伸長)をすべきか

1 相続放棄の3か月の期限は延長できる。

相続放棄は、原則、死亡を知った時から3か月以内に裁判所に申立てを行う必要がありますが、この3か月の期限は延長することができます。

正式には、相続放棄の承認又は放棄の期間伸長申立てといいます。

延長できる期限は、裁判所ごとに違いがありますが、一般的には、3か月間延長しそれでも足りなかったら再度3か月延長の申請をします。

2 相続放棄の期限を延長するには、調査に時間がかかるなどの理由がいる。

相続放棄の期間伸長は、「相続すべきか、相続放棄をすべきかを決めるのに時間が足りない」という理由があって初めて認められます。

特に理由のない期間伸長の申立ては却下されるため、注意が必要です。

一般的なケースとしては、次のような場合です。

このケースの場合は、借金の調査が3か月で終わらなかったので、延長を求めるということになります。

逆に、特にこれ以上調査をすべきこともないとか、何の調査もしないまま、期限を延長したいと言っても却下されるでしょう。

(相続人には、財産調査をする権利があります。)

3 相続放棄の期限は、無制限に延長できるわけではない。

相続放棄の期限は、何回でもいつまでも延長できるわけではありません。

理由としては、借金を請求する立場の人からすれば、相続放棄の期限が延期されている間はいつまで経っても借金の請求ができないという不安定な状況になってしまうためです。

そこで、期限の延期は裁判所が許可した場合しか認められず、理由がなければ却下されます。

もっとも、1回目の延期(3か月→6か月)は比較的緩やかに認められます。

一方で、2回目以降(6か月以上)に延ばすためには、1回目の期限延長の間(3か月~6か月)にどのような調査を行って、どこまで調査が終わり、これからどのような調査を何か月かけて行うかを詳細に報告しなければいけません。

何も調査をせず6か月が経過してしまった場合は、延長が却下されることもありうるため注意が必要です。

4 「相続放棄が間に合わないから、期限を延期する」という選択肢は存在しない。

相続放棄の申立ては、戸籍を集めたりしなければいけないため、急いでも申立まで1~2か月程度かかることがあります。

そのため、「相続放棄の手続きが間に合わないから、期限の延期をしたい」という相談を良くいただくのですが、それは無理です。

なぜなら、相続放棄の期間伸長に必要な書類は相続放棄と全く同じで、期間伸長の理由説明をしなければいけない分、むしろ期間伸長の申立ての方が手間がかかります。

そのため、「相続放棄の手続きが間に合わない」=「期間伸長の申立ても間に合わない」となってしまいます。

「調査をしないと放棄するか決められない」という状況でなければ、期間伸長はせずに、相続をするか放棄をするかを決めて申立てをしてしまった方が良いケースがほとんどです。

相続放棄をすべきかは、弁護士によく相談しましょう。

自己破産と個人再生における家計簿の作り方

1 自己破産や個人再生では、家計簿を作る必要がある。

 自己破産と個人再生は、裁判所を利用して借金を減らす手続きですが、お金を貸した人は借金が返ってこなくなるという極めて重大な不利益があるため、審査は厳格に行われます。

 裁判所の審査の一つとして、家計簿を作成して裁判所に提出する必要があります。

 裁判所は家計簿を見ることで

① 浪費などがなくなり、生活が改善されているか

② 自己破産等が終わった後に、借金をせずやっていけるか(経済的に立ち直れるか)

③ 毎月の安定した返済が可能か(個人再生のみ)

等を審査します。

 以下で、家計簿の作り方や注意点を紹介します。

2 家計簿は、同居の家族全員分の物が必要

 家計簿は、自己破産等をする本人だけでなく、夫や妻、子供、親などの同居してる家族全員分の収支をまとめる必要があります。

 また、籍を入れていない、いわゆる内縁関係の配偶者や同棲している交際相手も家計簿の対象になります。

 以下で説明しますが、同居人の通帳・給与明細・領収書などを裁判所に提出する必要があるため、同居人に自己破産をすることを伝えて協力を貰う必要があります。

 なお、成人した子供が、家賃代わりに生活費を親に支払っており、それ以外の自分の給料は全て自身で使用している場合などは、家計が別ということで通帳等の提出が必要ない場合もあり得ます。

 もっとも、そのような場合でも、裁判官次第で提出を求められることもあるため、基本は協力は必要と腹積もりをしておいた方が良いです。

3 家計簿のまとめ方

 家計簿は、1か月の収入や出費を1枚の紙にまとめます。

 用紙をみればわかりますが、収入については

給料(申立人) 35万円

給料(配偶者) 10万円

給料(長男) 20万円

当月収入計 65万円

といったようにまとめます。 

また、出費も、食費、家賃など、項目別に1か月分をまとめて記載します。

収入や家賃、水道光熱費などは1円単位で正確に記入する必要がありますが、食費や日用品などは概算でも大丈夫です。

4 家計簿につける資料

家計簿には、セットで資料をつける必要があります。

必要になる資料は、以下のとおりです。

① 通帳のコピー(該当する月のページ、同居人全員分)

② 給与明細(同居人全員分)

③ 児童手当、年金などの受給金額がわかる資料(ハガキや受給証明など)

④ その他、収入の明細がわかる資料(個人事業主の場合、請求書や領収書など)

⑤ 家賃、水道光熱費、保険料などの領収書

⑥ 1万円を超えるような高額な出費の領収書

⑦ ATMでおろした現金の使用した内訳のメモ等

5 家計簿が必要な期間

 家計簿は、もっとも少なければ1か月分、多いと1年間毎月作成する必要があります。

 手続きの内容によって変わってきます。

 具体的には、以下のとおりです。

① 自己破産の同時廃止事件

 申立ての前月、もしくは前々月の家計簿1か月が必要になります。

(7月申立てなら、5月分か6月分の家計簿を提出)

 申立て後は、家計簿の提出は必要ありません。

② 自己破産の管財事件の場合

 申立ての前月、もしくは前々月の家計簿1か月が必要になります。

 また、申立て後、開始決定もしくは初回の管財人面談までの家計簿(追加で1~3か月分くらい)は提出が必要になります。

 また、裁判所などの指示により、さらに追加で必要な場合もあります。

③ 個人再生の場合

 申立て前3か月分の家計簿1か月が必要になります。

(7月申立てなら、4~6月分)

 また、申立て後、返済の練習(履行テスト)を3か月行う必要があり、その期間は家計簿の提出が必要になります。

6 とりあえず弁護士に相談

 裁判所の求める家計簿は少々特殊で、慣れないと作成に戸惑うことがほとんどです。

 また、家計簿の内容も家族ごとに注意点が様々です。

 何はともあれ、弁護士に相談して、自分の場合はどのようなところに注意すればいいかを質問するのがいいでしょう。 

会社の破産と代表者(社長)の破産

1 会社だけの破産はできるか?

会社を作って事業をやる場合、例えば飲食店であれば店舗の内装や調理器具などの初期投資のために借金をすることが多いです。

運送業であれば初期投資としてトラックを購入したり、仲介業であれば外注への支払いや資金繰りのために借り入れをします。

その場合、法人を作り、法人名義で借金をして会社代表者が連帯保証人になっていることがほとんどです。

そのため、会社を破産すると、会社代表者に一括で借金の請求がされるため、結局は会社代表者も破産や個人再生をしなければいけなくなってしまいます。

2  代表者が連帯保証人になっていない場合

たまに、事業資金を銀行から借り入れている場合でも、会社代表者が連帯保証人になっていない場合があります。

また、法人名義のクレジットカードの滞納分や、取引先からの材料の仕入れ費や外注業者への支払いの未払いであれば、連帯保証人がついていないことが多いです。

このような場合、会社だけ破産させて、会社代表者はそのままにできないかという相談はかなり多くいただきます。

理由としては、会社と会社代表者の財産がしっかり区別されていることがまずないため、財産隠しができてしまうためです。

会社の破産だけ認めると、例えば会社に1000万円の預金と1億の借金がある場合に、1000万円を役員報酬として支払ってしまえば、1000万円を手放さずに1億円の借金だけ破産できてしまうからです。

3 会社のみの破産申立をするとどうなる?

破産申立をすると、裁判所が開始決定を出すと初めて手続が始まります。

会社の破産のみを申し立てても、会社代表者の破産申立がされない限り、開始決定を裁判所が出さない運用にしています。

そのため、いつまでも破産ができないことになり、最終的には申立を取り下げなければいけなくなります。

なお、個人に借金が一切ない場合は、「支払不能」という破産の要件を満たさないため、その場合は個人の財産状況を、破産申立と同レベルで正確に報告することになります。

(ただし、おそらくは会社からの貸付金などで、会社代表者が会社から借金を負っていると判定されて、自己破産せざるを得なくなるケースが多いです。)

4 まずは弁護士に相談

会社の破産はかなり複雑で、インターネットで少し調べたくらいでは気付けないような注意点などが多くあります。

個人の自己破産をやっている弁護士でも、会社の破産の経験がないと見落としがあることが多々あります。

そのため、会社を経営していて、支払いが苦しくなってきたと感じた場合は、まずは会社の破産に詳しい弁護士に相談してみてください。

相続放棄と遺品整理

1 単純承認になる可能性

相続放棄の相談で、最も多くの相談をもらうのが遺品整理です。

これは、遺品整理が、財産処分にあたるとされると単純承認になる可能性があるためです。

単純承認をしてしまうと問題になる場面は以下の2点です。

・家庭裁判所に相続放棄の申立てをした際に、相続放棄が認められない可能性がある。

・相続放棄が認められた後、債権者が相続放棄が無効だとして、相続放棄した人を訴えてくる可能性がある。

どちらの場合でも、相続放棄ができなくなってはしまうため、亡くなった人の借金を全額支払わなければいけなくなってしまいます。

2 どこまでなら遺品整理してよいか

遺品には一切手を付けないのが安全ではありますが、一切の遺品整理がいけないかというとそういうわけではありません。

過去の裁判例では、亡くなった人の家に残されたごみを処分した場合でも相続放棄は有効と認められたケースがあります。

また、相続の単純承認になるには、相続を認めたといえるだけの行為である必要があるとされているため、あらゆる行為が単純承認になるわけではありません。

そのため、衣類やごみなどおよそ財産的価値のないものを捨てるなどして処分したとしても相続放棄ができなくなる可能性はそこまで高くはないと思われます。

もっとも、何をもって財産的価値がないとするかは難しく、走行距離の長い年式の古い車は、買取価格は0円だとしても、おそらく財産的価値がないとまでは言い切れないと思います。

中古の家電製品も難しいところです。

そのため、可能であれば、遺品整理は一切手を付けずにいられるのならそれが安全です。

3 いつまで保管するか

遺品に手を付けないとして、いつまで保管をするかという問題はあります。

例えば、亡くなった人の名義の車を処分しない場合は、今後ずっと駐車場代を払わなければいけないのかということになります。

この点、家庭裁判所において相続放棄が認められたら処分していいと勘違いしている人が多いですが、単純承認にあたるかどうかに時期は関係ないため、相続放棄が認められた後でも処分をしてはいけません。

後々の訴訟で争われて相続放棄が無効となる可能性があります。

というのが、一般的な案内ですが、実際のところ、遺品整理をしても相続放棄が認められなかったり、後日、訴訟で相続放棄が認められなかったりする可能性はそこまで高くありません。

例えば、家庭内の遺品整理であれば、どんな遺品があり何を捨てたのか証拠がほとんど残らないため、おそらく訴訟になっても証拠不十分で、相続放棄が無効になる可能性は低いでしょう。

また、仮に遺品整理をしていた場合でも、それを追求するために、債権者が弁護士を入れて数十万円の経費をかけて訴訟まで起こすかというと、借金の金額次第では、回収できる借金よりもかかる経費の方が多くなってしまうので、訴訟まで行かないことの方が多いです。

3か月を経過した相続放棄の解決事例

1 事案の概要

実家には、両親と兄が住んでいましたが、10年以上前に両親が亡くなり、昨年、兄が亡くなったため、実家の土地と建物が残りました。

実家の建物は古く、このまま放っておくと倒壊する恐れもあるため、取り壊しをする必要がありました。

建物を解体するとなると数百万円単位の費用がかかってしまうため、兄が亡くなったタイミングで相続放棄をしようと考えました。

しかし、法務局で土地と建物の名義を調べたところ、父と母と兄の名義がそれぞれ入っていました。

そこで、どうにか管理責任を免れるために、弁護士に相談をしました。

2 相続放棄をする場合の問題点

このケースの問題点は、兄の相続放棄をしても、実家に父と母の名義が残っているため、不動産の管理責任が残ってしまうことです。

不動産の管理責任があると、万が一、実家が倒壊して周りの住民に損害を負わせたら、それを賠償する必要があります。

しかし、父と母の相続放棄をしようにも、両親は10年以上前に亡くなっているため、相続放棄の期限である3か月を大幅に過ぎてしまっています。

そこで、10年以上前に亡くなった父と母の相続放棄をする必要があります。

3 解決方法

亡くなったことを知った時から3か月を過ぎた場合は、財産や借金の存在を知らなくても、原則として相続放棄はできません。

しかし、過去の裁判例で、いくつかの条件を満たせば、例外的に相続放棄ができる場合があります。

その条件は、次の2つです。

① 被相続人に、相続財産又は相続債務が一切ないと信じていたこと

② 相続財産や相続債務が一切ないと信じたことに相当な理由があること

つまり、今回の場合は、実家が兄の名義で両親の名義ではないと信じていたこと(①)、実家の名義が兄の名義であると信じたことに理由があること(②)が必要になります。

もっとも、相続人は、被相続人が死亡したときに財産を調査する義務があるため、単に「知りませんでした。」というだけでは「調べたらわかることなのに、調べなかった方が悪い。」ということで、相当な理由がないと裁判所が認定し相続放棄が却下されてしまいます。

そこで、実家の名義が両親のものだと知らなかったことがどれだけ仕方ないことか、説得的に説明できるかが重要になります。

今回のケースでは、

両親が亡くなったあとに、10年以上も兄が実家に暮らしていたこと

昔、実家の名義を兄の名義に変更する手続きをしたことがあること

(司法書士に任せていたため、実際には、一部の名義しか変わっていなかった)

から、実家が兄の名義であると信じたことに相当な理由があるとして相続放棄が認められました。

3か月を経過した相続放棄の解決事例2

 今回ご紹介する件は、相続放棄の期限は 年前に過ぎていましたが、かなり複雑な法律構成をしたところ、どうにか相続放棄が認められた事案です。

1 事案の概要

 父親は個人事業をしていましたが上手くいかず、銀行から2000万円以上の借金をしていました。

 7年前、父親が亡くなりましたが、その時、依頼者の方はまだ高校生でした。

 そのため、葬式や死亡手続などは母親が全て行い、依頼者の方は借金があることを教えられていませんでした。

 その後、7年経ち、母親宛で自宅に届いていた封筒を開けたところ、父の借金が2000万円以上残っており、長男である依頼者の方がその半分の1000万円を相続していることを知りました。

2 相続放棄をする場合の問題点

 この事案の問題点は、相続放棄の期限が、父親が亡くなった日から3ヶ月であることです。

 つまり、相続放棄の期限は7年前に過ぎているのです。

 その理由は以下の2つです。

① 借金を知らなくても、死亡したことを知っていれば、相続放棄の3ヶ月の期限はスタートする。

② 未成年者の場合、子供が知らなくても、親(=法定代理人)が知ったときから相続放棄の3ヶ月の期限はスタートする。

 ①については、民法で「自己のために相続の開始を知ったときから3ヶ月」と定められており、この「自己のために相続の開始を知ったとき」というのは、原則は借金の存在は知らなくても良いとされています。 

民法 915条

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

 ②については、民法で次のように定められています。

民法 第917条

 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間(相続放棄の期限)は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 そのため今回は、母親が、父親の死亡を知った7年前に相続放棄の3ヶ月の期限がスタートしてしまうのです。

3 解決方法

 今回は、相続放棄の3ヶ月の期限のスタート地点を、子供である依頼者の方が借金を知ったときにする必要があります。

 この点については、有名な裁判例があり、いくつか条件を満たせば、亡くなった人の借金を知ったときから3ヶ月以内の相続放棄を認めた先例があります。

最高裁 昭和59年4月27日判決(判例タイムズ528号81頁、判例時報1116号29頁 )
 熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知った時から起算すべきものであるが、相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識うべかりし時から起算するのが相当である。

 しかし、これだけでは②の問題点をクリアできません。

 母親が、亡くなった父親の借金を知っていたため、いずれにしろ7年前に相続放棄の期限は過ぎてしまいます。

 そこで、母親が相続放棄をしなかったこと(相続の単純承認)が利益相反に当たるとして、取消しを主張したところ、無事に相続放棄が認められました。

(本当は、不作為である単純承認が取り消せるのかといった問題など、様々な問題がありましたが、そこもどうにかなりました。)

4 3ヶ月を過ぎた相続放棄は弁護士に

 3ヶ月を過ぎたケースでも、相続放棄を認められるケースはあります。

 司法書士の先生などは、3ヶ月を過ぎた時点で「無理だから諦めた方が良い」と案内をすることも多いようですが、弁護士がちゃんと意見書を書けばそのような場合でも相続放棄できることがあります。

 3ヶ月を過ぎてしまった場合でも、まずは弁護士に相談してみてください。

 なお、このケースは、弊社の相続が詳しい弁護士にも「難しいかもしれない」と言われてはいました笑

3か月を経過した相続放棄の解決事例1

 昨年の私が行った相続放棄の件数を数えたところ、約320件でした。

 もちろん、320件の中には、死亡したことを知ってから3か月を経過した案件もかなりの数ありました。

 依頼をいただいた案件は、100%相続放棄は成功しているのですが、その中でも特に難しかった案件をいくつか紹介したいと思います。

1 3年前に死亡した父の借金の手紙を、開けずに放置していたケース

概要)

 父が、40年前に自宅を買い住宅ローンを組んだが、支払ができず自宅は競売になってしまい、借金も残ってしまった。

 そのとき、まだ息子である相談者は高校生で、住宅ローンがあることすら知らず、なぜか引っ越しになったくらいにしか考えていなかった。

 3年前に父が死亡したときにも、父宛に未払の住宅ローンの請求は届いていたが、封筒を開けなかったため借金の存在に気づけなかった。

 父死亡の3年後に、相談者宛に約8000万円の住宅ローンの支払を求める手紙が届き、相続放棄ができないか、急いで弁護士に相談した。

問題点)

 相続放棄の期限は、「自己のために相続の開始を知った時から3か月」とされています。

 3か月の期限のスタートになる「自己のために相続の開始を知った」とは、このケースでは、父親が死亡したことを知った時から3か月になります。

 問題は、借金を知った時から3か月ではないため、原則は、相続放棄の期限自体は3年前に過ぎてしまっていることです。

 このケースは、借金を知った時から3か月で相続放棄を認めた最高裁判所の裁判例に紐づけて意見書を書いたことで、借金を知った時から3か月以内の相続放棄が認められました。

2 30年以上前に死亡した祖父母の実家の固定資産税の支払を求められたケース

概要)

 30年以上前に祖父母が亡くなり、実家は祖父母名義のままだった。

 実家には、祖父母の長男(相談者から見て叔父)の夫婦が住んでいた。

 1年前に、相談者の叔父家族が亡くなったため、今頃になって相談者に固定資産税の支払の請求が来た。

問題点)

 この件は、

祖父母 死亡

     ↓ 25年後

相談者の母(長女) 死亡

    ↓ 5年後

相談者(孫) 相続放棄

と相続をしています。

 そのため、相続放棄をするのであれば、5年前に相談者の母(祖父母の長女)が相続放棄をしていなければなりませんでした。

 再転相続放棄という制度もあるのですが、その場合も、祖父母が死亡してから3か月以内に母親が死亡している必要があります。

 つまり、本来は、以下のようなスケジュールで放棄をする必要があります。

祖父母 死亡

      ↓ 3か月以内

相談者の母(長女) 死亡

      ↓ 3か月以内

相談者(孫) 相続放棄

 2か所で3か月の期限を、25年、5年と大幅に過ぎてしまっています

 このケースも、実家については居住している長男の所有物だと思っていたことを理由に、相続放棄が認められました。

 このケースは、退職した裁判官にも「無理だから諦めた方がいい」と言われていましたが、何とか解決できました。

 司法書士や専門でない弁護士はまず断る案件でしょうが、弁護士が意見書を書くことでどうにかなることもある、いい例かなとは思います。

任意整理と利息カット

1 任意整理とは

借金の任意整理とは、貸金業者などと弁護士を通じて交渉をすることで、分割払いにする手続きです。

たとえば、クレジットカードをリボ払いにしていたところ、借金の残高が240万円になってしまい、今月は20万円支払わなければいけなくなってしまったとします。

こういった場合でも、任意整理が上手く行けば、毎月4万円を5年間(=60回)支払っていけばよくなる可能性があります。

自己破産や個人再生などの、裁判所を利用する「法的整理」より、柔軟に簡素な手続きで借金整理をできるのが任意整理の魅力です。

2 任意整理では将来の利息カットができる可能性がある

任意整理のメリットは、毎月の支払額を抑えられることです。

これに加えて、任意整理の大きなメリットとして、将来の利息がカットできる場合があります。

利息カットというとイメージしづらいですが、以下の図をみるとわかりやすいです。

ここで、よく見ていただきたいのが、最初の月は4万円払っているのに、そのうちの3万円が利息の支払いで、借金の返済は1万円しかされていません。

そして、240万円の支払いが終わるころには、206万3761円の利息を追加で払っています。

これをもし、将来利息のカットができると、4万円支払えば、借金が4万円減っています。

そして、240万円を支払終わるまでに240万円を支払えばいいため、利息の約200万円分だけ得をしていることになります。

また、返済期間も112か月から60か月と約半分になっています。

これが、将来利息カットの効果で、イメージはしづらいですが効果絶大です。

任意整理は、「自己破産などと違って借金は減らない手続き」と思われがちですが、実際には利息カットにより借金の総支払額が大幅に減る可能性があります。

返済の終わりが見えないと思ったら、まずは弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

弁護士法人心でも任意整理に関する相談を無料で承っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

民法改正と借金の消滅時効

1 時効の期間は、借入先や借り入れた時期により年数は変わる。

消滅時効は、現在の民法では、原則は返済期限から5年とされています。

もっとも、これは、令和2年4月1日に改正された民法で、改正前は10年とされていました。

また、この時効には特例がたくさんあり、借金において特に関係があるのが商法の商事消滅時効と裁判を起こされた場合です。

そのため、いくつか場合分けをして紹介をしたいと思います。

2 時効の年数

⑴ 令和2年4月1日以降に借りた借金:5年

借金を借りたときの民法が適用されるため、民法改正後に借りた借金は返済期限が来てから5年で時効になります。

また、返済期限を決めずに借りた借金は、返済の請求を受けたときから5年の時効がスタートします。

⑵ 令和2年4月1日以前に借りた借金:10年

民法改正前は、時効の一般規定は10年とされていました。

そのため、これより前に借りた借金は10年で時効になります。

なお、次で説明しますが、10年になるのは、家族や友人などに借りた借金で、金融業者に借りた借金は5年です。

⑶ 銀行や貸金業者から借りた借金:5年

旧民法の10年というのは一般原則で、銀行や貸金業者から借りた借金は商法の特別規定で消滅時効が5年になります。

商法 第522条

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合 を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。

銀行や貸金業者から借金をする行為は商行為に当たるため、この条文が適用されます。

なお、民法改正により原則が5年になったため、この条文は現在では削除されています。

⑷ 裁判を起こされた場合:10年

今まで説明したとおり、基本的には借金の時効は5年です。

ただし、裁判を起こされた場合、特則で、敗訴判決が出て判決が確定してから10年が時効になります。

民法 第169条

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

裁判は欠席すると、欠席のまま敗訴判決が出てしまうため、5年で時効だと思っていたら知らない間に裁判が起こされていて時効になっていなかったという可能性はあり得ます。

3 民法改正で変わったのは、友人・知人からの借入

結局のところ、民法改正で変わったのは、友人知人など(≠貸金業者などの「商人」)から借りた借金が、

 令和2年4月1日以前:10年

 令和2年4月1日以降:5年

に変更になった点です。

そのほかの部分はあまり変わってはおらず、借金の多くは貸金業者が中心だと思うので、あまり民法改正が影響してくる場面は少ないでしょう。

時効は、時効の中断などややこしい問題もあるので、まずは弁護士に相談してみましょう。

個人再生の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

自己破産の免責

1 免責により借金がなくなる。

自己破産は、免責許可決定が出ると手続きが終了します。

この免責許可決定が出ることにより、借金を請求されることがなくなります。

そのため、自己破産は、免責を受けるための手続きと言っても良いでしょう。

免責は、法律で決められた免責不許可事由(破産法252条1項各号)がなければ、認められることになっています。

また、仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判官の裁量により免責を受けることができます、

2 借金がなくならない場合(免責不許可事由)

⑴ 不当な財団価値減少行為

支払不能後(借金が返せなくなった後)に、自身の財産を不当に消費、贈与、安価での売却をした場合です。

例えば、破産すると車を失ってしまう場合に、親族や知人に、車を相場の50万円ではなく、10万円など極めて安い金額で売却する行為がこれに当たります。

また、財産隠しなども該当します。

⑵ 不当な債務負担行為・不利益処分

破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で借金をした場合や、クレジットカードで購入して安価で売却した場合です。

例えば、借金が返せなくなって、闇金で借りてしまう場合があります。

また、借金を返すために、クレジットカードでカメラやスマートフォンを購入した後、その購入物を原価より安く売却して現金を得る行為も該当します。(いわゆる「現金化」)

⑶ 不当な偏波弁済

偏波弁済(「へんぱべんさい」)とは、一部の借金だけ返して、他の借金を返さないなど、借金に差をつけて返済することです。

例えば、クレジットカードや消費者ローンは返さずに、親族や知人の借金だけを返す行為がこれに当たります。

また、車を残すために、車のリース料金だけ支払う場合も該当します。

⑷ 浪費・賭博等による財産減少行為・債務負担行為

「浪費」とは、破産者の地位、職業、収入、及び財産状態に比して通常の程度を超えた支出をすることを言います。

自身の収入で返済できない金額の買い物をクレジットカードでしてしまう場合です。

「賭博」には、競馬・パチンコなどのいわゆるギャンブルです。

また、株の売買やFX取引等、投機的な取引も、この項目に該当します。

⑸ 詐術による信用取引

収入などを偽ってかりいれることは、免責不許可事由にあたります。

また、積極的に嘘をついた場合だけでなく、誤解させるような表現をしたり、返済可能性がないことなどを黙って借り入れることも、詐術に当たる可能性があります。

⑹ 説明義務違反

裁判所による調査に対して説明を拒んだり嘘の説明をする場合や、そのほかの破産法が定める義務に違反する場合です。

仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判所に対して隠し事をしたり嘘をついたりすると余計に状況が悪化するため、弁護士には正直に話して、裁判所への説明を考えていくのが良いでしょう。

3 免責不許可事由があっても、免責される場合(裁量免責)

仮に、免責不許可事由があっても、裁判官の裁量で免責となり、借金がなくなる場合があります。

裁量免責になるかは、次のような事情が考慮されます。

⑴ 浪費、ギャンブル等がある場合

・使った金額

・浪費、ギャンブルをしていた期間

・浪費、ギャンブルをしていた時期

・破産手続きに誠実に協力したか

⑵ 詐術による信用取引の場合

・嘘をついて借り入れた額

・悪質性

・債権者の免責意見の有無

・破産手続きに誠実に協力したか

⑶ 裁判所への説明義務違反

・説明義務違反の内容、程度

・説明義務違反が破産手続きに与えた影響

4 破産してもなくならないもの(非免責債権)

破産をしても、免責されない(なくならない)借金等があります。

これを非免責債権と言います。

具体的には、次のものがあげられます。

・税金等

・悪意の不法行為に基づく損害賠償(人を殴った場合などの治療費、慰謝料等)

・故意、重過失による人の生命、身体を害する不法行為に基づく損害賠償(交通事故でけがを負わせた場合の治療費、慰謝料等)

・養育費や婚姻費用等

・従業員の給料等

・故意に債権者名簿に記載しなかった借金

5 まずは、弁護士に相談

・罰金

破産をする場合、大なり小なり免責不許可事由が疑われる事情は出てきます。

しかし、弁護士による説明などによっては、免責になることは珍しくないため、まずは、弁護士に話してみてください。

個人再生をする場合の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を裁判所に提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

相続登記の義務化について

1 令和6年4月1日からは、不動産の名義変更をしないと罰金の可能性

不動産登記法が改正され、来年の4月から施行されます。

今回の改正の目玉は、相続登記の3年以内の申請の義務化で、違反すると、10万円以下の過料(罰金のようなものです。)が発生する可能性もあります。

今までは、全く問題なかったところが、義務化され罰金もあるということで衝撃は大きいかとは思います。

制度の概要について、紹介します。

2 何が変わった?何をすればいい?

今までは、死亡した人の名義の不動産は、名義を書き換えなくとも、何も罰則はありませんでした。

そのため、先代、先々代の名義のまま放置されていることは珍しくありませんでした。

それが、これからは、名義変更をしておかないと罰則が科されるようになりました。

具体的には、死亡してから3年以内に

①相続登記

②相続人申告登記

のどちらかを行わなければいけません。

3 相続登記と相続人申告登記の違い

①相続登記

相続登記は、不動産の所有者が死亡し、相続する人が所有者が決まったら、その新所有者に名義変更をすることです。

「相続登記」という単語は法律には書いておらず、手続的には「所有権移転登記手続」という名前にはなります。

相続登記をするためには、次のような書類が必要です。

遺言がある場合

・遺言書

・死亡した人の戸籍謄本、住民票

・相続する人の戸籍謄本、住民票

・固定資産評価証明書、固定資産税納税通知書

・申請者の印鑑登録証明書

遺言がない場合

・遺産分割協議書

・死亡した人の出生~死亡までの全ての戸籍謄本

・死亡した人の住民票

・相続人全員の戸籍謄本・住民票

・固定資産評価証明書、固定資産税納税通知書

・相続人全員の印鑑登録証明書

②相続人申告登記

相続人申告登記は、今回の法律改正で新たに作られた制度です。

相続登記は、遺言書があるか、相続人全員が話し合って1枚の遺産分割協議に実印を押すかしないといけないので、3年以内にできない可能性があります。

そういった場合に、暫定的に行う登記が相続人申告登記です。

法務局の登記簿には、所有者が死亡したこと、相続人申告登記をした人の氏名・住所が記載されます。

必要な書類は、次のとおりです。

・申出をする相続人が、死亡した人(登記名義人)の相続人であることがわかる戸籍謄本等

4 いつまでに申請が必要か

相続登記もしくは相続人申告登記の期限は、相続の開始があったことを知った時から3年です。

つまり、原則は、死亡したことを知った時から3年以内に申告をする必要があります。

遺言があるか、3年以内に遺産分割協議が終わる場合には、相続登記を行います。

また、3年以内に遺産分割協議が終わらない場合には、とりあえずは相続人申告登記をしておけば罰金の心配はありません。

なお、令和6年4月1日より前に死亡している場合は、令和6年4月1日から3年後、すなわち令和9年(2027年)4月1日までが期限となります。

今まで名義変更を放っておいた人も、令和9年(2027年)4月1日までに全ての不動産について行う必要があり、一斉に期限が来てしまうので注意が必要です。

両親、祖父母が土地を持っていたけれど、サインや相続の手続きなどをした覚えがないという人は、まずは弁護士に相談した方が良いでしょう。

相続放棄を弁護士に依頼するメリット

1 そもそも相続放棄は弁護士に依頼すべき?

インターネットで何でも調べられるご時世、相続放棄も、弁護士に依頼しなくても、調べれば自身でできてしまうようにも思えます。

もっとも、インターネットで調べてわかることは法律の一部だけで、本当に注意すべき点はホームページに書いていないことだったりします。

そこで、弁護士に依頼するメリットをいくつか紹介したいと思います。

2 1度きりの相続放棄は失敗できない

相続放棄の手続は、一度申立をして却下されてしまうと、それを覆すのは至難の業です。

「3ヶ月の期限を過ぎてしまう」「裁判所からの問合せの対応を間違えてしまう」など、ご本人で手続きをして失敗してしまうケースは多々あります。

私も、ご本人が申立されて相続放棄が却下されてしまった後に相談を受けたこともありますが、その時点ではもう却下を覆すことはできない状況でした。

裁判所に申し立てる前に相談をいただいていればどうにかできたケースだったので残念でした。

弁護士に依頼すれば、本当なら認められるはずの相続放棄をミスで失敗してしまうということはないのは、メリットの一つでしょう。

3 弁護士に任せっきりにできる

相続放棄を自身で行うと、申立の準備・資料集め・裁判所からの問合せへの対応など、全て自身で対応しなければなりません。

(ご家族の方が代わりに対応することもできません。)

戸籍謄本などの資料を、市役所・区役所が開いている平日の午後5時までに集めるのは、お仕事をされている方ですと中々大変です。

また、本籍地が住んでる場所から遠くにある場合ですと、取り寄せることになり一苦労です。

また、申立書の書き方や裁判所からの問合せの回答を間違えてしまうと相続放棄できなくなってしまうこともあります。

相続放棄が終わるまで、本当に認められるか不安ばかりというのも精神的に辛いものがあります。

この点、弁護士に依頼すれば、これらの面倒事を任せられるので、あとは終わるまで待つだけで精神的にも楽です。

4 まずは弁護士に相談を

相続放棄の相談をしていると、本人は問題だと思っていなかったことが、弁護士からすると大問題で、相談していただいて良かったなんてこともよくあります。

手続も裁判所の手続きとなり大変ですので、まずは弁護士に無料相談をしてみるのが良いかとは思います。

横浜で相続放棄をお考えの方は、こちらをご覧ください。

自己破産、個人再生に領収書は必要?

1 自己破産、個人再生ではお金の使い途を審査される。

 自己破産や個人再生は、「お金を借りてしまったけれど、どうしても返済ができないので、裁判所の審査のもとで借金を減らす」という手続です。

 そのため、過去に浪費やギャンブルをしていないかなどお金の使い途は、裁判所の審査の対象となります。

 また、自己破産は、いま手元にある財産は(自由財産を残して)返済に充てて、残った借金をゼロにします。

 個人再生は、手持ちの財産の総額まで借金を減らす手続です。

 したがって、自分の財産を減らす行為は、債権者への返済金額を減らすことに繋がるので、厳しく審査されます。

2 領収書が必要な理由

 自己破産や個人再生では、過去から申立前まで、無駄遣いしていないかをチェックされます。

 そのため、領収書で無駄遣いをしていないことを証明する必要があるのです。

 仮に、使い途を説明できないと、使途不明金ということで無駄遣いと同視されてしまう可能性もあります。

 使途不明金となってしまうと、自己破産の場合は使途不明金の金額だけ裁判所に納めたり(財団組入れ)、個人再生の場合は将来の返済額を増やされたり(清算価値の上乗せ)してしまう可能性があります。

 このため、領収書が必要になってきます。

3 領収書が必須の場面

① ライフラインの領収書

 自己破産、個人再生の必要書類に家計簿があります。

 毎月の収入と出費を記録して家計簿を作り、裁判所への申立書と一緒に提出します。

 この家計簿に書く、家賃、水道光熱費、駐車場代、保険料などは1円単位で正確に記入し、領収書を添付します。

 領収書がないと、必要書類が足りないということで、そもそも自己破産や個人再生の審査をしてもらえません。

 そのため、家賃、水道光熱費、駐車場代、保険料などの領収書は必須のため、捨てないようにしてください。

② 高額な出費をした場合

 自己破産や個人再生では、無駄遣いを厳しく審査されます。

 領収書がないと、無駄遣いではない場合でも、使途不明金ということでその分だけ弁償しなければならない場合まであります。

 また、浪費は免責不許可事由として、破産が認められなくなる理由の一つです。

 そのため、高額な出費をした場合は、必ず領収書を残しておくようにしましょう。

4 領収書がいらない場合

① ライフラインの支払を口座引落などで支払っている場合

 口座引落や決済サービスで家賃や水道光熱費を支払っている場合は、領収書は不要です。

 口座引落の場合は通帳のコピー、決済サービスの場合は利用明細やWEBページのスクリーンショットなどが代わりに必要になります。

 ただし、携帯料金などが金額が高額になる場合は、領収書や支払明細の提出を求められることもあるので注意が必要です。

② 食費、日用品などの生活費

 毎月作成する家計簿には、食費や日用品の購入費を記入する欄があります。

 この欄は月ごとの合計額を記入しますが、1円単位に正確である必要はなく、ある程度は丸めて書いても大丈夫です。

 食費のレシートを何十枚も集める必要などはないです。

 ただし、通帳の出金額とズレがある場合や毎月の合計額が高額になる場合は、領収書などで説明が必要になります。

5 まずは弁護士に相談を

 領収書が必要かどうかは、ケースバイケースです。

 「領収書がないから破産できない」といったことはなく、弁護士と相談しながら集めていけばいい場合も多いです。

 まずは一人で悩まず相談をしてみましょう。

自己破産・個人再生の必要資料

 自己破産・個人再生など、裁判所を使った手続きを行う場合は、資料集めが一つのハードルになります。

 実際には、弁護士と相談しながら資料を集めていくため、最初から全てを完璧に揃えておく必要はなく、まずは気軽に相談をしてみることをお勧めします。

1 直近2年分の通帳

 持っている全ての通帳のコピーが必要になります。

 WEB通帳やアプリの場合は、印刷をしたもので大丈夫です。

 また、通帳をなくしてしまっている場合は、銀行の窓口で過去の履歴を発行することができます。

 何年間も一切使っていない0円の口座でも、口座を解約していない場合は提出対象になる点は、注意が必要です。

 また、長期間記帳をしていない通帳は「おまとめ記帳」といって、何件かの取引が合算した金額になっています。

 「おまとめ記帳」になっている期間は、銀行の窓口で履歴を別で取寄せる必要があります。

2 家計簿

 直近1~3か月の家計簿を作成して提出する必要があります。

 書式は、裁判所の書式があります。

 弁護士に依頼してから申立までに数か月程度の準備期間があるため、その間に作ることになります。

 そのため、弁護士に相談する前に家計簿はなくて大丈夫です。

3 毎月固定の生活費(ライフライン)の領収書のコピー

 家賃・ガス・水道・電気・通信(電話代)費・保険料等の直近1~3か月の領収書のコピーが必要になります。

 口座引き落としの場合は、通帳のコピーで大丈夫です。

 また、WEBやアプリで利用明細が出る場合は、画面を印刷したものやスクリーンショットでも大丈夫です。

 これらの領収書も、弁護士に依頼してから申立てまでの準備期間に用意するため、今までの分を捨ててしまっていても心配はありません。

4 給与明細のコピー

 自己破産・個人再生をする人の給与明細はもちろん、同居している人の給与明細も必要となります。

 生計を別にしている場合、不要でない場合でも、同居している場合は必要となってきます。

5 年金、児童手当などの受給者証のコピー

 児童手当、年金、生活保護、失業保険等の国や地方自治体から給付を受けてる場合は、その受給者証や受給金額がわかる資料のコピーが必要になります。

 証明書は、はがきなどが送られてきている場合や、窓口で発行が必要な場合があります。

6 賃貸借契約書のコピー

 住んでいる家の契約書のコピーが必要になります。

 契約が数年ごとに更新されてる場合は、更新されている最新のものが必要になります。

 また、更新契約の場合は、貸主・借主・毎月の家賃・敷金が省略されていることがあるため、その場合は、一番最初の契約書(原契約)が必要になります。

7 不動産の査定書・登記簿等

 持ち家に住んでいる場合は、今売った時の金額を評価してもらった査定書が必要になります。

 方法としては、インターネットで不動産会社に査定する方法や、不動産屋の窓口で「この不動産売った時の値段を教えてください」など聞いていただく方法があります。

 査定書は2~3社からとることになります。

 注意点としては、一般の顧客に売った場合と不動産会社が買い取る場合で金額が違うので、一般の顧客に売った場合の査定書を作ってもらう必要があります。

8 車の査定書・車検証

 車やバイクも査定書が2~3社分必要になります。

 不動産と違い、正式に査定書を作ってくれないケースも多いです。

 その場合は、中古買取業者の担当者の名刺の裏に、口頭で教えてもらった金額をメモしておくことでも代用できます。

9 直近2年分の源泉徴収票のコピー、課税証明書の原本

10 保険証券のコピー・解約返戻金計算書

 保険は、生命保険・医療保険・火災保険・自動車の任意保険・自賠責保険などあらゆる保険が対象となります。

 また、保険を解約したときに、いくらお金(解約返戻金)が戻ってくるかを計算した書類も必要となります。

 解約返戻金計算書は、毎年手紙が来ているなどしない場合、最初から手元にないことも多いので、その場合は、保険会社に問い合わせることになります。

生活保護を受けていた場合の相続放棄

1 財産が残っていないことが多い

 生活保護を受けるには、収入が最低生活費以下であること、保有資産が一定以下であることなどの条件があります。

 そのため、亡くなった時点でプラスの財産が残っている可能性は低いです。

 相続をしても、マイナスになってしまうことが多いため、相続放棄をした方がいいケースが多いです。

2 数か月経ってから請求が来ることがある

 「借金がないから相続放棄しなくても大丈夫だろう」と放っておくと、数か月してから市役所などから税金や保険料の請求が来てしまうこともあります。

 未払の住民税や水道料金などは、亡くなってすぐ相続人に請求は来ないです。

 独り暮らしで亡くなった場合は、発見後、市役所等が相続人の住所を調査してから、その後に請求書を送ってきます。

 請求書が死亡してから半年、1年経ってに届くことは珍しくありません。

 相続放棄は、亡くなったことを知った日から3か月以内に行うことが原則であるため、請求書が届いてから相続放棄をしても認められないことが多いです。

 そのため、相続人に請求が来ていなくとも、相続放棄をしておくことをお勧めします。

3 生活保護費の返還を求められることも

 生活保護を受けていた方の場合、相続人が、数百万円の生活保護費の返還を求められることがあります。

 生活保護を受けるには、資産が一定以下でなければならず、持ち家がある場合など資産がある場合は、原則として生活保護を受けられません。

 しかし、持ち家を売却して引っ越しをするとかえって費用が掛かってしまう場合や、賃貸物件が借りられない場合は、例外的に持ち家を売却せずに生活保護を受けられることがあります。

 この場合は、生活保護を受けている方が亡くなった後に、受け取った生活保護費を返還しなければいけなくなることがあります。

 生活保護費の返還額は、持ち家の売却金額になるため、多くは数百万円になってきます。

4 生活保護を受けている方の相続は放棄するべき?

 そもそも、相続は、

① 既にわかっているプラスの財産があるとき

② 借金がないことが確実な場合

のどちらかの場合に行うべきで、それ以外の場合は、相続放棄をした方が良いケースがほとんどです。

 しかし、

「生活保護を受けている」

=プラスの財産はまずなく(≠①)、親戚の支援を受けられなかった結果として生活保護になっているため財産状況を知っている人がほとんどいません(=②)。

 そのため、生活保護を受けている方の相続は、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多く、相続をすると赤字になってしまうケースが多いです。

 そのため、費用をかけてでも速やかに相続放棄をした方が良いケースが多いです。