1 申立の経緯とは
自己破産、個人再生の申立書には「申立の経緯」という欄があります。
ここには、なぜ自己破産、個人再生をすることになったのか経緯を書きます。
2020年5月 コロナで勤務していた飲食店が休業する。収入がなくなり、アコムで30万円借り入れる。
2020年8月 勤務先が閉店し、無職になる。生活費を賄うために、プロミスで50万円借りる。
というように、時系列で記載していきます。
2 申立の経緯に何を書くか
申立の経緯を書こうにも、何を書けばいいのか、何年何月から書けばいいのか、筆が止まってしまうと思います。
書く際のポイント、裁判所が求めている情報は、「借りたお金の使い道」です。
借金が500万円あったら、500万円を何に使ったのかを書き、原因となった事情を書きます。
例)
2025年4月
大学を卒業して就職する。一人暮らしを始めるにあたり、初期費用50万円をクレジットカードでリボ払いにする。
→50万円の理由説明になる。
2025年8月
交通事故に遭う。入院して会社を1か月休む。毎月の給与30万円がなくなり、治療費10万円も用意できず、消費者金融で借入をする。
→40万円の理由説明になる。
このように、借りたお金を何に使ったのかを意識しながら、借金の総額を説明できるように積み上げていくイメージです。
3 よくある間違い「返済のために借金をして、自転車操業になった」
債務整理の相談者に質問すると、10人中10人から聞く説明が「借金の返済に追われて借り入れをした」です。
もちろん、それは間違いではないのですが、申立の経緯としては不適切です。
なぜなら、借金のために借金をしても、基本的には借金の総額は増えないからです。
例えば、A社の借金が100万円あったとします。
A社からの督促に対応するため、B社から30万円を借りてA社に返済したとします。
そうすると、新たにB社から30万円を借金をしますが、A社の借金は70万円に減るため、結局借金の総額は100万円のままです。
そのため、「借金が増えた理由」の説明にはならないのです。
(なお、実際は、A社に30万円払っても、数万円は利息で持って行かれるので、A社75万円+B社30万円=合計105万円となり借金の総額はわずかに増えていきます。)
4 よくある間違い「生活費のために借り入れた」
これも10人中10人の相談者からうかがいます。
「返済をしていたら生活費が足りなくて、気が付いたら借金が」ということです。
もちろん、弁護士に相談する直前は全ての方がそのような状況です。
しかし、裁判所が聞きたいのはその話ではありません。
先ほど説明したように、「借金返済のための借金」は借金の金額が増えるわけではないため、理由にはなりません。
そうすると、2年前から借金を始めて今は500万円の借金がある人は、2年間のどこかで500万円を使っているのです。
そして、収入を聞くと手取40万円ということになると、平均すると
月収40万円+借金500万円÷2年(24か月)=約60万円
となり、毎月平均して60万円を使っていることになります。
家賃10万円、食費9万円(1日3000円)、水道光熱費2万円、携帯1万円、日用品2万円・・・と足していっても35万円もいかないと考えると、どこかで25万円は不要な出費をしていることになります。
流石にこれを「生活費」の一言で片づけるのは無理でしょう。
裁判所が聞きたいのは、「この25万円の出費が何か」です。
これを意識すると、申立の経緯は書きやすくなります。
5 申立の経緯はたくさん書いた方が良い
申立ての経緯は、具体的で充実しているに越したことはありません。
破産手続の役割の一つに、借金をした理由を解明し、免責不許可事由がないかを審査するという側面があります。
そのため、申立の経緯が具体的に充実して書かれていると、裁判所としても借金の原因がわかりやすく審査しやすいため、歓迎されます。
むしろ、申立の経緯がペラペラで内容が薄いと、借金の原因が不明であるとして、免責調査型の管財事件となったり、破産者の報告義務に違反しているとして免責不許可事由になる可能性があります。
裁判所も、正直に真実を話して破産手続きに協力している場合、免責不許可事由があったとしても裁量免責の方向に持って行ってくれます。
後ろめたい内容があったとしても、正直に全部話した方が上手く行くことが多いです。
何をどこまで書くかは、弁護士とよく相談するといいでしょう。


