特別寄与料の請求

1 制度の概要

相続法改正で新設された目玉制度の一つで、2019年(令和元年)7月1日に施行されました。

今までは、相続人以外の人は、亡くなった方の介護をどれだけ親身にしていたとしても、財産を受け取ることはできませんでした。

この制度のポイントは、亡くなった方の面倒を見ていた人が相続人以外であっても、相続人にお金を請求できるようになったことです。

以前もご紹介しましたが、親の介護などをした相続人がいた場合は、寄与分として相続の取り分が増える場合があります。

しかし、寄与分は、あくまで「相続人」でなければ認められません。

例えば、Aさんの子供BさんとCさんは、結婚して東京で暮らしており、田舎に一人残ったAさんは、兄弟のDさんやその子供のEさん(Aさんからすると甥姪にあたる)に面倒を見てもらっている、というケースは珍しくないと思います。

このような場合、相続人はあくまで子供のBさんとCさんです。そのため、相続人ではないDさんとEさんに寄与分が認められることはありません。

しかし、これでは不公平だろうということで設けられたのが、この特別寄与料の制度です。介護をしたDさんやEさんも、介護に応じてお金を受け取れる可能性が出てきたのです。

2 特別寄与料が認められるための要件

基本的には、寄与分の場合と同じ文言が使われていますが、以下の⑴⑵の点が寄与分と異なります。

⑴ 介護をした人が「親族」であること

特別寄与料の請求は、誰でもできるわけではなく、相続人以外の「親族」に限られます。

この「親族」は、法律用語としての「親族」です。

「親族」については、民法725条に定めがあり、

   ①6親等内の血族

   ②配偶者

   ③3親等内の姻族

が「親族」となります。

※1 血縁関係が近い順に1親等、2親等、3親等・・・と順位付けがされています。

   たとえば、

   1親等・・・親、子

   2親等・・・祖父母、孫、兄弟

   3親等・・・叔父叔母、甥姪、曽祖父母、ひ孫

   などです

※2 血族とは、親子、兄弟など血のつながりのある親戚です。

   姻族とは、配偶者がわの血族で、直接血のつながりはありません。

⑵ 療養看護その他の労務の提供をしたこと

寄与分は、被相続人にお金を支援した結果、遺産が増えた場合にも認められていましたが、特別寄与料は、あくまで介護をした場合(療養看護)や家業を手伝った場合(その他の労務の提供)に限られています。

なお、「特別の寄与」などその他の要件は、文言は同じですが要件の解釈が寄与分とは異なります。

この点については、また次回紹介をさせていただきます。

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生命保険契約照会制度

1 亡くなった方の生命保険を網羅的に調べられる!

2021年7月から、亡くなった方の生命保険を調べられる「生命保険契約照会制度」が始まりました。

今までは、亡くなった方が生命保険に加入しているかどうかは、加入している生命保険会社に聞いてみないとわかりませんでした。

しかし、そもそもどこの生命保険に加入しているかがわからないと、せっかく保険に入っていたのに、知らないままということもありました。

今回の「生命保険契約照会制度」では、生命保険協会に問い合わせることで、全42社の生命保険会社に、生命保険契約の有無を網羅的に照会することができるようになりました。

2 生命保険契約照会制度のやり方

照会のやり方は

 ①専用のホームページから行う場合

 ②郵送で行う場合

の2つの方法があります。

①専用のホームページから行う場合

step1)ユーザー登録をする

https://seiho.force.com/seiho/s/login/?ec=302&startURL=%2Fseiho%2Fs%2F

上のURLにアクセスし、生命保険契約照会制度の専用ホームページにユーザー登録をします。

ユーザー登録は一番下の「初めて利用される方はこちら(新規ユーザー登録)」の項目をクリックします。

上の初回登録ページで、必要事項を記入して「送信する」を押すと、登録したメールアドレス宛にパスワード設定用のURLが届きます。

パスワードを登録すると、アカウント登録完了です。

step2)必要書類の準備

必要書類を準備します。

必要な書類は次のとおりです。

 ・生命保険契約照会 同意書

   生命保険契約照会制度の専用ホームページでダウンロードできます。

 ・照会者の本人確認書類

   照会者(=調査を行う人)の免許証等の本人確認書類が必要になります。

 ・被相続人の死亡診断書

 ・相続人と被相続人(=亡くなった方)の関係性がわかる戸籍(or法定相続情報一覧図)

   調査を行う人が亡くなった方の相続人であることを示す戸籍が必要になります。

   相続人であることを示す戸籍は、相続人により次のように異なります。

(ご家族の状況により、次の戸籍以外に戸籍が必要になる場合がありますため、詳しくは専門家までご相談ください。)

配偶者

→被相続人の除籍謄本

→被相続人の除籍謄本、照会者(=子)の現在戸籍

両親

→被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、子の死亡記載のある戸籍謄本、照会者(=両親)の現在戸籍

兄弟姉妹

→被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、子の死亡記載のある戸籍謄本、両親の死亡記載のある戸籍謄本、照会者(=兄弟姉妹)の現在戸籍

Step3)必要書類をホームページで提出する。

https://seiho.force.com/seiho/s/login/?ec=302&startURL=%2Fseiho%2Fs%2F

専用ホームページで、step1登録した、メールアドレスとパスワードで「マイページ」にログインします。

マイページ内下部にある「照会手続き」をクリックすると、照会対象登録者の入力画面が出るため、

必要事項を入力し、「次へ」を押して、画面に従って進みます。

「必要書類のアップロード」の画面で、step2で用意した書類をスキャンしたものをアップロードし、画面に従って進むと手続完了です。

②郵送で行う場合

https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/paper/

上のURLにアクセスし、次の項目を入力し「次へ」をクリックします。

・氏名

・生年月日

・住所

・電話番号

入力した住所宛に、申請書等が郵送されます。

申請書等を記入し、①のstep2に挙げました必要書類等を返送すると、手続完了です。

なお、このときに返送する必要書類は全てコピーで大丈夫です。

3 生命保険契約照会制度の注意点

この生命保険契約の照会制度は、「生命保険があるかないか」のみです。

・生命保険契約の種類

・保険金の金額

・保険金の受取人

などは調査対象外です。

実際に保険金を請求する場合や、他の相続人がいくら受け取っているかを知りたい場合は、照会でわかった保険会社に個別に調査をする必要があります。

しかし、保険会社への個別の調査は、相続人であっても、受取人でなければ必ずしも回答してくれるとは限りません。

生命保険金が特別受益として遺産分割の際に考慮される場合も存在するなどの必要性があれば、弁護士会を通した調査の場合は回答が得られる場合があります。

そのような場合は、弁護士にご相談ください。

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3ヵ月経過後の相続放棄

1 相続放棄の期限は3か月

 亡くなった方の借金は、亡くなったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄ができます。

 しかし、亡くなった方と疎遠だった場合、借金の存在を知らないことは珍しくありません。

 そのため、借金がないからと相続放棄をしないでいたら、あとから借金が出てきてしまうというケースがあります。

 もっとも、3か月を過ぎた後の相続放棄でも例外的に相続放棄が認められる場合もあります。

2 3か月経過後の放棄が認められた判例

⑴ 昭和59年4月27日最高裁第二小法廷判決

 この判例は、熟慮期間(=相続放棄をできる期間)は、原則として、相続人となったことを知った時から3か月としており、借金の存在をあとから知っても原則は相続放棄をできないとしています。

 しかし、例外として、次の①②の条件が認められるときに、3か月経過後でも相続放棄を認めています。

要件① 相続財産が全く存在しないと信じており

要件② 相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続財産が全く存在しないと信じることに相当な理由があるとき

⑵ 判例の解説

ア 基本的な考え方

  この判例は、本来、相続人は3か月以内に遺産の調査を行って、相続放棄をするかどうかを決断しなければいけないとの考え方に立っています。

  そのため、「借金があるかもしれない」と思っていたけれども、調査をしなかった場合には、相続放棄をしなかった人に責任があるとして相続放棄を認めないという判断がされやすくなります。

  しかし、「相続財産が全く存在しないから相続放棄をしなくてもいい」と信じており(要件①)、財産調査をしなかったことが仕方ない場合(要件②)に例外的に相続放棄を認めています。

イ 相続放棄が認められる具体例

  この裁判例は、「被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況」からみて、財産調査をしようと思うかどうかを重視しています。

  すなわち、亡くなった方と相続人の関係性が重要になってきます。

  例えば、次のような場合は、例外的に相続放棄が認められやすくなります。

● 両親が物心つく前に離婚して、30年以上会っていない父親が亡くなり、子供として相続人になった場合

● 会ったこともない叔母の相続人になってしまった場合

3 あとから借金が見つかったときは弁護士に相談を

  亡くなってから3か月を過ぎたあとの相続放棄は難しいです。

  しかし、裁判所に申立をする際に、主張書面をつけることで相続放棄が認められやすくなります。

  そのため、あとから借金が見つかった場合など、難しいケースの相続放棄は、弁護士に相談をして行うことをお勧めします。

  東京で相続放棄をお考えの方はこちら

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介護をした際の寄与分の計算方法

親の介護などをした相続人の相続の取り分を増やす寄与分ですが、その計算方法がよく問題となります。

東京では、もしかしたら、親と同居して介護をするといった家庭は減ってきているのかもしれませんが、それでも相続で一、二を争うテーマです。

寄与分の類型により、計算方法は変わってきますが、特に問題となるのが、病気や高齢により独りで生活ができない親を子供が世話をした場合(療養看護型)の計算方法です。

 

1 介護の日数に応じて計算される

このような場合は、相続人の介護がなければ介護サービスや老人ホームの費用が必要になるところ、介護によりその支払いをせずに済んだ場合には、寄与分として認められるケースがあります。

そのため、計算方法は介護日数に応じて次のように計算されます。

 

看護報酬額×日数×裁量割合

 

2 看護報酬額の算定

介護保険における「介護報酬基準」が用いられることが多くなっています。

「介護報酬基準」では、要支援1~2、要介護1~5の7段階に分け、介護サービスの内容等により報酬を定めています。

具体的には、次の通りです。

要支援1:1397円~2793円

要支援2:2212円~4423円

要介護1:2212円~4423円

要介護2:3215円~6430円

要介護3:3215円~6430円

要介護4:3671円~7342円

要介護5:4127円~8254円

 

なお、要介護認定がされていない場合でも、寄与分が認められる可能性があります。

その場合は、被相続人の状況から要介護度を推測して介護報酬基準を利用するといくらかを基準にすることもあります。

 

また、介護を相続人で分担して行っていた場合には、行った介護時間の割合で介護報酬を分けるといった計算がなされます。

 

3 裁量割合により減額される

寄与分が認められたとしても、介護報酬基準などに基づく報酬相当額が当然認められるわけではありません。

介護報酬基準は、家政婦協会等の介護機関に支払う金額であり、実際に介護をした人が受け取る金額はこれより少なくなります。

また、介護報酬基準に基づく報酬は、看護・介護の資格を持つプロに支払われる金額であり、資格のない親族が行う介護については介護の内容も異なってきます。

加えて、親族は扶養義務を負っているため、扶養義務を超えた分の介護が寄与分となります。

そのため、実際には50%~80%の裁量割合がかけられるケースが多くなります。

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寄与分とは

1 相続でしばしば問題になる「寄与分」

相続で、しばしば問題となるのが、介護をした相続人とそうでない相続人がいる場合です。

「あれだけ苦労をして介護したのに、相続の取り分が何もしていない相続人と同じなのはおかしい」

と思うのは、自然な感覚だと思います。

一方で、

「介護というが、家賃も払わず同居してもらっているのだから、それくらい面倒をみて当たり前だ」

「そんなに大変ならプロを雇えばよかった」

という言い分も納得できるものがあります。

 

2 「寄与分」とは

このような、相続でよく問題になる介護の問題について、民法では「寄与分」という制度を設けています。

「寄与分」が認められると、たとえば、介護をした相続人の相続分が、介護をしていない相続人の相続分より多くなります。

 

一例として、父親の遺産が2000万円で長男Aと次男Bが相続した場合、今まで長男が行ってきた介護が200万円の寄与分として認められると、それぞれの相続分は次のような計算になります。

長男A:(2000万円-200万円)÷2+200万円=1100万円

次男B:(2000万円-200万円)÷2      =900万円

このように、長男Aと次男Bの間では、寄与分200万円の分だけ、相続で差ができます。

 

この寄与分は、よく問題になるのは親の介護の場面ですが、他にも、

・子が親にお金を支援した結果、親の遺産が増えた場合

・子が親の事業(会社、農業)などを手伝った結果、親の遺産が増えた場合

などでも問題となります。

 

3 寄与分が認められる場合

なんでもいいから少しでも親の面倒を見れば寄与分になるわけではありません。

たまに親のもとを訪れて、話をきいてあげたり、食事を作ってあげたりした、というだけでは寄与分は認められません。

寄与分が認められるためには、法律で定められた要件を満たすことが必要となります。

まず、例えば、「特別の寄与」であることが求められます。少し面倒を見たくらいではダメということです。

また、よく問題になるのが、「財産の維持又は増加」に寄与していないといけません。「親の世話をしたことでデイサービス等の利用回数が減った=財産が増えた」など、金銭的にプラスになってなければ意味がないという考え方です。

 

詳しい要件については、また紹介をできればと思いますが、このようにややこしい要件が法律で定められています。

もし、ご自身のご相続で、介護が問題になりそうな場合は、弁護士にご相談ください。

 

 

 

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生命保険が特別受益になる例外的な場合

1 「著しい不公平」がある場合には生命保険金が特別受益となる

生命保険は、原則的に特別受益にはなりません。

しかし、例外的に特別受益になる場合があります。

判例上も、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、生命保険金も特別受益にあたるとしています。

 

そして、「著しい不公平」となるかどうかは

①保険金の額

②保険金額の遺産の総額に対する比率

③同居の有無

④被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係

⑤各相続人の生活実態等

を総合考慮して判断されます。

(最高裁判所平成16年(許)第11号 平成16年10月29日第二小法廷決定)

 

3 生命保険金が特別受益となる具体的な場合

生命保険金が特別受益となるかは、事案ごとに判断されますが、②遺産の総額に対する保険金の比率は重要な考慮要素となります。

※「遺産の総額」とは、生命保険金を含みません。

 

例えば、次のような場合には生命保険金が特別受益とされています。

 

例1)東京高決平成17年10月27日

ア 遺産の総額:1憶 134万円

イ 生命保険金:1憶 129万円

ウ イ ÷ ア:99.9%

→〇特別受益にあたる

 

例2)名古屋高決平成18年3月27日

ア 遺産の総額:8423万円

イ 生命保険金:5154万円

ウ イ ÷ ア:61.1%

→〇特別受益にあたる

 

また、次のような場合には、特別受益性が否定されました。

 

例3)大阪家堺支審平成18年3月22日

ア 遺産の総額:6963万円

イ 生命保険金: 428万円

ウ イ ÷ ア:6.1%

→×特別受益にあたらない

 

4 特別受益になるかは事案ごとの判断が必要

生命保険金の遺産に対する割合は重要ですが、もちろんこれだけで特別受益であるかどうかが決まるわけではありません。

 

例えば、今まで無償で介護をしてきた相続人が保険金を受け取った場合には、今までの介護へのお礼・対価としての意味合いがあることから、介護をしていない相続人と著しい不公平は生じないとして特別受益には当たりにくくなります。(④相続人の貢献の度合い)

また、喪主になる予定の長男にだけ2~300万円程度の生命保険金の受取人に設定されていた場合などは、生命保険金は葬儀費用に充てるためであり、仮に葬儀費用より保険金の方が多くとも、相続人間に著しい不公平があるとはなりにくいでしょう。

 

生命保険金が特別受益になるかの判断は難しいため、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

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生命保険と特別受益

1 生命保険金は特別受益にならない

生前に贈与を受けたときは、「特別受益」として相続の際にその分だけ取り分が減ります。

そこで、よくご質問をいただくのが、「生命保険金を受け取った人は相続の取り分が減るのか」です。

結論から申し上げますと、生命保険金は原則として特別受益になりません。

これについては、判例があり、生命保険金は亡くなって初めて請求できるようになるため、「相続人固有の権利」であり、生前贈与とは性質が違うことが理由とされています。

(最高裁判所平成16年(許)第11号 平成16年10月29日第二小法廷決定)

 

2 「相続人固有の権利」とは?

土地であれ現金であれ、被相続人(=亡くなった方)の権利を引き継ぐのが相続です。

生前贈与も、亡くなる前に権利を引き継ぐ点では同じです。

これに対し、「相続人固有の権利」とは、元々被相続人が持っていた権利ではなく、最初から相続人のものとなる権利をいいます。

被相続人から貰った権利ではないため、相続人”固有”と言われています。

生命保険金は、生前に請求することはできず、亡くなって初めて請求できるようになります。

そのため、被相続人が元々持っていた権利(遺産)を相続したのではなく、法的には生命保険金は最初から相続人のものであったと扱われます。

相続放棄をしても、生命保険が受け取れるのも同じ理由になります。

 

3 生命保険金が特別受益となる例外的な場合

しかし、このような考え方は、とっさには受け入れにくいと思います。

というのも、例えば一時払いの生命保険金は、被相続人が生前に支払った保険料が、死後に生命保険金という形で戻ってくるため、実質的には生前贈与と変わらないからです。

(理屈はともかく、感覚としては弁護士でも受け入れにくいと思います笑)

判例も、生命保険が生前贈与と性質が似ている点から、例外的に生命保険金を特別受益とすることを認めています。

要は、2000万円の生前贈与をもらおうと、2000万円を生命保険でもらおうと、不公平には変わりがないでしょうという考え方です。

ただし、生命保険が特別受益になるのは、あくまで”例外的”な場合で、基本的には認められないことは注意が必要です。

何が”例外的”な場合なのかについては、長くなるので次回紹介させていただきます。

 

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法定相続情報一覧図の作り方

1 法定相続情報一覧図の作り方

前回は法定相続情報一覧図のメリットを紹介しました。

今回は、具体的にその作り方をご紹介します。

⑴ 必要書類

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

・被相続人の住民票の除票

・相続人の戸籍謄抄本

・申請する人の身分証

・法定相続情報一覧図

・申出書

(・相続人の住民票の写し)

以上の書類を集めて、法務局に提出することで法定相続情報一覧図は作成できます。

なお、法定相続情報一覧図(家系図のようなもの)や申出書は法務局のHPにテンプレートがあるので、これらをダウンロードして作成できます。

相続人の住民票は必須ではないですが、あわせて提出することで、相続人の住所を一覧図に記載できます。

これをしておくと、法定相続情報一覧図1枚で相続手続ができるようになるのでお勧めです。

 

⑵ 提出先

提出先の法務局は

・亡くなった方の本籍地

・亡くなった方の住所地

・申出人の住所地

・亡くなった方名義の不動産がある場所

のいずれかの地域を管理する法務局から選ぶことができます。

東京都内、例えば池袋にお住いの方の場合は、東京法務局台東出張所を利用できます。

どこで作ったとしても完成する物は同じなので、行きやすい法務局を選ぶことをおすすめします。

 

⑶ 法定相続情報一覧図の作成方法

法定相続情報一覧図とは、家系図のようなもので、自身で作成する必要があります。

法務局は戸籍をチェックして、提出された法定相続情報一覧図に間違いがないかを確認します。

法務局のホームページにテンプレートがあり、これらをダウンロードしてPCで作成することができます。

 

⑷ 法定相続情報一覧図を作る際の注意点

法定相続情報一覧図は、家系図みたいなものですが、いわゆる家族・親族全員の名前を記載する家系図とは少々違いがあります。

 

① 名前を書くのは相続人だけ

法定相続情報一覧図には、相続人以外は記載をしません。

例えば、亡くなった方に子供がおらず親も既に亡くなっている場合、その兄弟姉妹が相続人になります。

先に亡くなっている両親も法定相続情報一覧図に記載はしますが、相続人ではないため、「父」「母」とのみ記載され、名前は記載しません。

また、相続人となるはずだった兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子供たち(亡くなった方から見ると甥・姪にあたる方)が代襲相続人となりますが、相続人でない親の名前は「被代襲者」とのみ記載します。

 

② 相続放棄をしていても相続人として記載する

相続放棄をすると相続人ではなくなります。

しかし、法定相続情報一覧図には、「亡くなった瞬間に」相続人だった人を記載するため、「亡くなった瞬間に」相続人だったが相続放棄で相続人ではなくなった人も法定相続情報一覧図には記載する必要があります。

そのため、「もう相続人ではないから」と相続放棄をした人を省略すると、作り直しになってしまうため、注意が必要です。

 

③ 相続人の住所は必須ではない

法定相続情報一覧図には、相続人の住所を記載するかどうか選べます。

住所を記載しない場合、相続手続の際には、相続人の住民票をあわせて銀行窓口等に提出する必要があります。

しかし、せっかく戸籍を1枚にまとめたのに、住民票は別で提出しなければならないのはややこしいです。

住所を法定相続情報一覧図に記載してしまえば、戸籍も住民票も一切なしで、1枚で相続手続が可能になります。

そのため、法定相続情報一覧図を作る際は、相続人の住所はぜひ記載してください。

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法定相続情報証明制度の活用

1 法定相続情報証明制度とは

相続手続には、ほぼ必ずと言っていいほど戸籍謄本や住民票除票が必要となります。

銀行預金の解約や不動産の名義変更には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍として、祖父や曽祖父が載っている手書きの戸籍までの提出を求められるため、その数は10通~20通となることもあり大変です。

こういうときに利用できるのが「法定相続情報証明制度」です。

集めた戸籍の束を法務局に提出して申請することで、「法定相続情報一覧図」という1枚(場合によっては数枚)の紙にしてくれます。

これが1枚あれば、大抵の相続手続で戸籍が不要となります。

保険会社、銀行での預金解約、法務局での登記手続きはもちろん、税務署や裁判所でも戸籍の代わりに使うこともできる優れものです。

 

2 法定相続情報一覧図のメリット

法定相続情報一覧図は、戸籍の束を1枚の紙にする制度です。

これを作るためには、「いずれにしろ戸籍を集める必要があるのに、何のメリットが?」と思われると思います。

しかし、法定相続情報には、次のようなメリットがあります。

 

① 何通でも作れる

法定相続情報一覧図は、交付申請をすることで簡単に何通でももらえます。

戸籍を、一度、相続手続の窓口に預けてしまうと、返ってくるまで次の相続手続ができません。

しかし、10通以上ある戸籍をもう1セット発行しようとすると、数万円の費用がかかる上、申請手続も10回以上必要になるため難しいです。

しかし、法定相続情報一覧図であれば、簡単に複数通用意ができるため、相続手続をスムーズに行うことができます。

 

② 窓口での手続が早くなる

相続手続では、窓口の担当者は何通もの戸籍を確認して、相続人に間違いがないかを確認します。

そのため、戸籍の確認が終わるまで窓口で待たされたり、場合によっては、手続が後日になってしまうこともあります。

しかし、法定相続情報一覧図は、相続関係を法務局がチェックしてくれているため、窓口の担当者も戸籍のチェックをする時間が必要なくなるため、手続が早く終わります。

 

③ 戸籍集めの間違いがなくなる

出生から死亡までの戸籍を正確に漏れなく集めるのは、専門家でもミスをすることがあるくらいで、とても大変です。

戸籍を全部集めたと思って窓口に行ったところ、戸籍が足りないと言われて出直すことになると、また同じ市役所に戸籍を取りにいかなければならない上、相続手続も最初からやり直しになってしまいます。

しかし、法定相続情報一覧図は、法務局が戸籍に漏れがないかチェックをしてくれるため、いざ相続の窓口で戸籍が足りない!という事態を避けることができます。

 

3 作成の代理は、弁護士などの専門家に

このように便利な法定相続情報一覧図は、相続のすぐの段階でお作りすることをオススメします。

代わりに作成を依頼する場合は、家族などではできず、弁護士などの専門家でないとできないため、ご希望の場合はお気軽にご相談ください。

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一人だけ多額の生前贈与を受けた場合の特別受益

1 通常の特別受益の計算

相続人に生前贈与があった場合は、特別受益として相続分が減るというお話を以前したと思います。
この場合は「持ち戻し」という処理を行い実際の相続分を計算します。
※「持ち戻し」=相続財産から出て行ってしまった生前贈与を、相続財産の中に戻して相続の計算をすること
例①
Aが亡くなり、配偶者Bと子CDEの4人が2400万円の預金を相続した場合
それぞれの相続分は
配偶者B:2400万円÷2=1200万円
子CDE:2400万円÷2÷3=400万円
となります。
例②
①のケースで子Bが生前に300万円の贈与を受けていた場合
配偶者Bと子DEの相続分は、2400万円に相続財産に300万円の生前贈与を「持ち戻し」て
配偶者B:(2400万円+300万円)÷2=1350万円
子DE:(2400万円+300万円)÷2÷3=450万円
となります。
そして、贈与を受けた子Bは、贈与分300万円を引いて、
450万円-300万円=150万円
となります。

2 一人が多額の生前贈与を受けている場合

この場合は、先ほどの例②で行った通常の計算ができなくなります。
例③
のケースで子Bが2400万円相当の東京にマンション1室の贈与を受けていた場合
贈与を受けていない配偶者Bと子DEの相続分を②と同じように計算すると
配偶者B:(2400万円+2400万円)÷2=2400万円
子DE:(2400万円+2400万円)÷2÷3=800万円
となります。
しかし、3人合わせると
2400万円+800万円+800万円=4000万円<2000万円
となり、預金だけでは足りなくなってしまいます。
※子Cは相続分を超えて贈与を受けていますが、相続分が0になるだけで、超えた分をBDEに対して返す必要はありません。
そこで、2400万円の預金を配偶者Bと子DEの3人で分けなければいけません。
この計算は、本来ならもらえた相続分の割合で預金2400万円を3人で分けます。
具体的には
配偶者B:2400万円×(2400万円/4000万円)=1440万円
子DE:2400万円(800万円/4000万円)=480万円
となります。
このように、相続人の一人が相続分を超える多額の贈与を受けている場合には、特別受益の計算方法が変わるため注意が必要です。

3 特別受益でお困りの場合はご相談ください。

実際のケースでは、生前贈与を複数の相続人が受けていることは珍しくありません。
そのような場合、更に計算は複雑になります。
計算に間違いがあると大変ですので、特別受益でお困りの際は、まずは弁護士にご相談ください。

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