相続放棄と遺品整理

1 単純承認になる可能性

相続放棄の相談で、最も多くの相談をもらうのが遺品整理です。

これは、遺品整理が、財産処分にあたるとされると単純承認になる可能性があるためです。

単純承認をしてしまうと問題になる場面は以下の2点です。

・家庭裁判所に相続放棄の申立てをした際に、相続放棄が認められない可能性がある。

・相続放棄が認められた後、債権者が相続放棄が無効だとして、相続放棄した人を訴えてくる可能性がある。

どちらの場合でも、相続放棄ができなくなってはしまうため、亡くなった人の借金を全額支払わなければいけなくなってしまいます。

2 どこまでなら遺品整理してよいか

遺品には一切手を付けないのが安全ではありますが、一切の遺品整理がいけないかというとそういうわけではありません。

過去の裁判例では、亡くなった人の家に残されたごみを処分した場合でも相続放棄は有効と認められたケースがあります。

また、相続の単純承認になるには、相続を認めたといえるだけの行為である必要があるとされているため、あらゆる行為が単純承認になるわけではありません。

そのため、衣類やごみなどおよそ財産的価値のないものを捨てるなどして処分したとしても相続放棄ができなくなる可能性はそこまで高くはないと思われます。

もっとも、何をもって財産的価値がないとするかは難しく、走行距離の長い年式の古い車は、買取価格は0円だとしても、おそらく財産的価値がないとまでは言い切れないと思います。

中古の家電製品も難しいところです。

そのため、可能であれば、遺品整理は一切手を付けずにいられるのならそれが安全です。

3 いつまで保管するか

遺品に手を付けないとして、いつまで保管をするかという問題はあります。

例えば、亡くなった人の名義の車を処分しない場合は、今後ずっと駐車場代を払わなければいけないのかということになります。

この点、家庭裁判所において相続放棄が認められたら処分していいと勘違いしている人が多いですが、単純承認にあたるかどうかに時期は関係ないため、相続放棄が認められた後でも処分をしてはいけません。

後々の訴訟で争われて相続放棄が無効となる可能性があります。

というのが、一般的な案内ですが、実際のところ、遺品整理をしても相続放棄が認められなかったり、後日、訴訟で相続放棄が認められなかったりする可能性はそこまで高くありません。

例えば、家庭内の遺品整理であれば、どんな遺品があり何を捨てたのか証拠がほとんど残らないため、おそらく訴訟になっても証拠不十分で、相続放棄が無効になる可能性は低いでしょう。

また、仮に遺品整理をしていた場合でも、それを追求するために、債権者が弁護士を入れて数十万円の経費をかけて訴訟まで起こすかというと、借金の金額次第では、回収できる借金よりもかかる経費の方が多くなってしまうので、訴訟まで行かないことの方が多いです。

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3か月を経過した相続放棄の解決事例

1 事案の概要

実家には、両親と兄が住んでいましたが、10年以上前に両親が亡くなり、昨年、兄が亡くなったため、実家の土地と建物が残りました。

実家の建物は古く、このまま放っておくと倒壊する恐れもあるため、取り壊しをする必要がありました。

建物を解体するとなると数百万円単位の費用がかかってしまうため、兄が亡くなったタイミングで相続放棄をしようと考えました。

しかし、法務局で土地と建物の名義を調べたところ、父と母と兄の名義がそれぞれ入っていました。

そこで、どうにか管理責任を免れるために、弁護士に相談をしました。

2 相続放棄をする場合の問題点

このケースの問題点は、兄の相続放棄をしても、実家に父と母の名義が残っているため、不動産の管理責任が残ってしまうことです。

不動産の管理責任があると、万が一、実家が倒壊して周りの住民に損害を負わせたら、それを賠償する必要があります。

しかし、父と母の相続放棄をしようにも、両親は10年以上前に亡くなっているため、相続放棄の期限である3か月を大幅に過ぎてしまっています。

そこで、10年以上前に亡くなった父と母の相続放棄をする必要があります。

3 解決方法

亡くなったことを知った時から3か月を過ぎた場合は、財産や借金の存在を知らなくても、原則として相続放棄はできません。

しかし、過去の裁判例で、いくつかの条件を満たせば、例外的に相続放棄ができる場合があります。

その条件は、次の2つです。

① 被相続人に、相続財産又は相続債務が一切ないと信じていたこと

② 相続財産や相続債務が一切ないと信じたことに相当な理由があること

つまり、今回の場合は、実家が兄の名義で両親の名義ではないと信じていたこと(①)、実家の名義が兄の名義であると信じたことに理由があること(②)が必要になります。

もっとも、相続人は、被相続人が死亡したときに財産を調査する義務があるため、単に「知りませんでした。」というだけでは「調べたらわかることなのに、調べなかった方が悪い。」ということで、相当な理由がないと裁判所が認定し相続放棄が却下されてしまいます。

そこで、実家の名義が両親のものだと知らなかったことがどれだけ仕方ないことか、説得的に説明できるかが重要になります。

今回のケースでは、

両親が亡くなったあとに、10年以上も兄が実家に暮らしていたこと

昔、実家の名義を兄の名義に変更する手続きをしたことがあること

(司法書士に任せていたため、実際には、一部の名義しか変わっていなかった)

から、実家が兄の名義であると信じたことに相当な理由があるとして相続放棄が認められました。

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3か月を経過した相続放棄の解決事例2

 今回ご紹介する件は、相続放棄の期限は 年前に過ぎていましたが、かなり複雑な法律構成をしたところ、どうにか相続放棄が認められた事案です。

1 事案の概要

 父親は個人事業をしていましたが上手くいかず、銀行から2000万円以上の借金をしていました。

 7年前、父親が亡くなりましたが、その時、依頼者の方はまだ高校生でした。

 そのため、葬式や死亡手続などは母親が全て行い、依頼者の方は借金があることを教えられていませんでした。

 その後、7年経ち、母親宛で自宅に届いていた封筒を開けたところ、父の借金が2000万円以上残っており、長男である依頼者の方がその半分の1000万円を相続していることを知りました。

2 相続放棄をする場合の問題点

 この事案の問題点は、相続放棄の期限が、父親が亡くなった日から3ヶ月であることです。

 つまり、相続放棄の期限は7年前に過ぎているのです。

 その理由は以下の2つです。

① 借金を知らなくても、死亡したことを知っていれば、相続放棄の3ヶ月の期限はスタートする。

② 未成年者の場合、子供が知らなくても、親(=法定代理人)が知ったときから相続放棄の3ヶ月の期限はスタートする。

 ①については、民法で「自己のために相続の開始を知ったときから3ヶ月」と定められており、この「自己のために相続の開始を知ったとき」というのは、原則は借金の存在は知らなくても良いとされています。 

民法 915条

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

 ②については、民法で次のように定められています。

民法 第917条

 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間(相続放棄の期限)は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 そのため今回は、母親が、父親の死亡を知った7年前に相続放棄の3ヶ月の期限がスタートしてしまうのです。

3 解決方法

 今回は、相続放棄の3ヶ月の期限のスタート地点を、子供である依頼者の方が借金を知ったときにする必要があります。

 この点については、有名な裁判例があり、いくつか条件を満たせば、亡くなった人の借金を知ったときから3ヶ月以内の相続放棄を認めた先例があります。

最高裁 昭和59年4月27日判決(判例タイムズ528号81頁、判例時報1116号29頁 )
 熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知った時から起算すべきものであるが、相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識うべかりし時から起算するのが相当である。

 しかし、これだけでは②の問題点をクリアできません。

 母親が、亡くなった父親の借金を知っていたため、いずれにしろ7年前に相続放棄の期限は過ぎてしまいます。

 そこで、母親が相続放棄をしなかったこと(相続の単純承認)が利益相反に当たるとして、取消しを主張したところ、無事に相続放棄が認められました。

(本当は、不作為である単純承認が取り消せるのかといった問題など、様々な問題がありましたが、そこもどうにかなりました。)

4 3ヶ月を過ぎた相続放棄は弁護士に

 3ヶ月を過ぎたケースでも、相続放棄を認められるケースはあります。

 司法書士の先生などは、3ヶ月を過ぎた時点で「無理だから諦めた方が良い」と案内をすることも多いようですが、弁護士がちゃんと意見書を書けばそのような場合でも相続放棄できることがあります。

 3ヶ月を過ぎてしまった場合でも、まずは弁護士に相談してみてください。

 なお、このケースは、弊社の相続が詳しい弁護士にも「難しいかもしれない」と言われてはいました笑

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3か月を経過した相続放棄の解決事例1

 昨年の私が行った相続放棄の件数を数えたところ、約320件でした。

 もちろん、320件の中には、死亡したことを知ってから3か月を経過した案件もかなりの数ありました。

 依頼をいただいた案件は、100%相続放棄は成功しているのですが、その中でも特に難しかった案件をいくつか紹介したいと思います。

1 3年前に死亡した父の借金の手紙を、開けずに放置していたケース

概要)

 父が、40年前に自宅を買い住宅ローンを組んだが、支払ができず自宅は競売になってしまい、借金も残ってしまった。

 そのとき、まだ息子である相談者は高校生で、住宅ローンがあることすら知らず、なぜか引っ越しになったくらいにしか考えていなかった。

 3年前に父が死亡したときにも、父宛に未払の住宅ローンの請求は届いていたが、封筒を開けなかったため借金の存在に気づけなかった。

 父死亡の3年後に、相談者宛に約8000万円の住宅ローンの支払を求める手紙が届き、相続放棄ができないか、急いで弁護士に相談した。

問題点)

 相続放棄の期限は、「自己のために相続の開始を知った時から3か月」とされています。

 3か月の期限のスタートになる「自己のために相続の開始を知った」とは、このケースでは、父親が死亡したことを知った時から3か月になります。

 問題は、借金を知った時から3か月ではないため、原則は、相続放棄の期限自体は3年前に過ぎてしまっていることです。

 このケースは、借金を知った時から3か月で相続放棄を認めた最高裁判所の裁判例に紐づけて意見書を書いたことで、借金を知った時から3か月以内の相続放棄が認められました。

2 30年以上前に死亡した祖父母の実家の固定資産税の支払を求められたケース

概要)

 30年以上前に祖父母が亡くなり、実家は祖父母名義のままだった。

 実家には、祖父母の長男(相談者から見て叔父)の夫婦が住んでいた。

 1年前に、相談者の叔父家族が亡くなったため、今頃になって相談者に固定資産税の支払の請求が来た。

問題点)

 この件は、

祖父母 死亡

     ↓ 25年後

相談者の母(長女) 死亡

    ↓ 5年後

相談者(孫) 相続放棄

と相続をしています。

 そのため、相続放棄をするのであれば、5年前に相談者の母(祖父母の長女)が相続放棄をしていなければなりませんでした。

 再転相続放棄という制度もあるのですが、その場合も、祖父母が死亡してから3か月以内に母親が死亡している必要があります。

 つまり、本来は、以下のようなスケジュールで放棄をする必要があります。

祖父母 死亡

      ↓ 3か月以内

相談者の母(長女) 死亡

      ↓ 3か月以内

相談者(孫) 相続放棄

 2か所で3か月の期限を、25年、5年と大幅に過ぎてしまっています

 このケースも、実家については居住している長男の所有物だと思っていたことを理由に、相続放棄が認められました。

 このケースは、退職した裁判官にも「無理だから諦めた方がいい」と言われていましたが、何とか解決できました。

 司法書士や専門でない弁護士はまず断る案件でしょうが、弁護士が意見書を書くことでどうにかなることもある、いい例かなとは思います。

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任意整理と利息カット

1 任意整理とは

借金の任意整理とは、貸金業者などと弁護士を通じて交渉をすることで、分割払いにする手続きです。

たとえば、クレジットカードをリボ払いにしていたところ、借金の残高が240万円になってしまい、今月は20万円支払わなければいけなくなってしまったとします。

こういった場合でも、任意整理が上手く行けば、毎月4万円を5年間(=60回)支払っていけばよくなる可能性があります。

自己破産や個人再生などの、裁判所を利用する「法的整理」より、柔軟に簡素な手続きで借金整理をできるのが任意整理の魅力です。

2 任意整理では将来の利息カットができる可能性がある

任意整理のメリットは、毎月の支払額を抑えられることです。

これに加えて、任意整理の大きなメリットとして、将来の利息がカットできる場合があります。

利息カットというとイメージしづらいですが、以下の図をみるとわかりやすいです。

ここで、よく見ていただきたいのが、最初の月は4万円払っているのに、そのうちの3万円が利息の支払いで、借金の返済は1万円しかされていません。

そして、240万円の支払いが終わるころには、206万3761円の利息を追加で払っています。

これをもし、将来利息のカットができると、4万円支払えば、借金が4万円減っています。

そして、240万円を支払終わるまでに240万円を支払えばいいため、利息の約200万円分だけ得をしていることになります。

また、返済期間も112か月から60か月と約半分になっています。

これが、将来利息カットの効果で、イメージはしづらいですが効果絶大です。

任意整理は、「自己破産などと違って借金は減らない手続き」と思われがちですが、実際には利息カットにより借金の総支払額が大幅に減る可能性があります。

返済の終わりが見えないと思ったら、まずは弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

弁護士法人心でも任意整理に関する相談を無料で承っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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民法改正と借金の消滅時効

1 時効の期間は、借入先や借り入れた時期により年数は変わる。

消滅時効は、現在の民法では、原則は返済期限から5年とされています。

もっとも、これは、令和2年4月1日に改正された民法で、改正前は10年とされていました。

また、この時効には特例がたくさんあり、借金において特に関係があるのが商法の商事消滅時効と裁判を起こされた場合です。

そのため、いくつか場合分けをして紹介をしたいと思います。

2 時効の年数

⑴ 令和2年4月1日以降に借りた借金:5年

借金を借りたときの民法が適用されるため、民法改正後に借りた借金は返済期限が来てから5年で時効になります。

また、返済期限を決めずに借りた借金は、返済の請求を受けたときから5年の時効がスタートします。

⑵ 令和2年4月1日以前に借りた借金:10年

民法改正前は、時効の一般規定は10年とされていました。

そのため、これより前に借りた借金は10年で時効になります。

なお、次で説明しますが、10年になるのは、家族や友人などに借りた借金で、金融業者に借りた借金は5年です。

⑶ 銀行や貸金業者から借りた借金:5年

旧民法の10年というのは一般原則で、銀行や貸金業者から借りた借金は商法の特別規定で消滅時効が5年になります。

商法 第522条

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合 を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。

銀行や貸金業者から借金をする行為は商行為に当たるため、この条文が適用されます。

なお、民法改正により原則が5年になったため、この条文は現在では削除されています。

⑷ 裁判を起こされた場合:10年

今まで説明したとおり、基本的には借金の時効は5年です。

ただし、裁判を起こされた場合、特則で、敗訴判決が出て判決が確定してから10年が時効になります。

民法 第169条

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

裁判は欠席すると、欠席のまま敗訴判決が出てしまうため、5年で時効だと思っていたら知らない間に裁判が起こされていて時効になっていなかったという可能性はあり得ます。

3 民法改正で変わったのは、友人・知人からの借入

結局のところ、民法改正で変わったのは、友人知人など(≠貸金業者などの「商人」)から借りた借金が、

 令和2年4月1日以前:10年

 令和2年4月1日以降:5年

に変更になった点です。

そのほかの部分はあまり変わってはおらず、借金の多くは貸金業者が中心だと思うので、あまり民法改正が影響してくる場面は少ないでしょう。

時効は、時効の中断などややこしい問題もあるので、まずは弁護士に相談してみましょう。

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個人再生の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

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自己破産の免責

1 免責により借金がなくなる。

自己破産は、免責許可決定が出ると手続きが終了します。

この免責許可決定が出ることにより、借金を請求されることがなくなります。

そのため、自己破産は、免責を受けるための手続きと言っても良いでしょう。

免責は、法律で決められた免責不許可事由(破産法252条1項各号)がなければ、認められることになっています。

また、仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判官の裁量により免責を受けることができます、

2 借金がなくならない場合(免責不許可事由)

⑴ 不当な財団価値減少行為

支払不能後(借金が返せなくなった後)に、自身の財産を不当に消費、贈与、安価での売却をした場合です。

例えば、破産すると車を失ってしまう場合に、親族や知人に、車を相場の50万円ではなく、10万円など極めて安い金額で売却する行為がこれに当たります。

また、財産隠しなども該当します。

⑵ 不当な債務負担行為・不利益処分

破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で借金をした場合や、クレジットカードで購入して安価で売却した場合です。

例えば、借金が返せなくなって、闇金で借りてしまう場合があります。

また、借金を返すために、クレジットカードでカメラやスマートフォンを購入した後、その購入物を原価より安く売却して現金を得る行為も該当します。(いわゆる「現金化」)

⑶ 不当な偏波弁済

偏波弁済(「へんぱべんさい」)とは、一部の借金だけ返して、他の借金を返さないなど、借金に差をつけて返済することです。

例えば、クレジットカードや消費者ローンは返さずに、親族や知人の借金だけを返す行為がこれに当たります。

また、車を残すために、車のリース料金だけ支払う場合も該当します。

⑷ 浪費・賭博等による財産減少行為・債務負担行為

「浪費」とは、破産者の地位、職業、収入、及び財産状態に比して通常の程度を超えた支出をすることを言います。

自身の収入で返済できない金額の買い物をクレジットカードでしてしまう場合です。

「賭博」には、競馬・パチンコなどのいわゆるギャンブルです。

また、株の売買やFX取引等、投機的な取引も、この項目に該当します。

⑸ 詐術による信用取引

収入などを偽ってかりいれることは、免責不許可事由にあたります。

また、積極的に嘘をついた場合だけでなく、誤解させるような表現をしたり、返済可能性がないことなどを黙って借り入れることも、詐術に当たる可能性があります。

⑹ 説明義務違反

裁判所による調査に対して説明を拒んだり嘘の説明をする場合や、そのほかの破産法が定める義務に違反する場合です。

仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判所に対して隠し事をしたり嘘をついたりすると余計に状況が悪化するため、弁護士には正直に話して、裁判所への説明を考えていくのが良いでしょう。

3 免責不許可事由があっても、免責される場合(裁量免責)

仮に、免責不許可事由があっても、裁判官の裁量で免責となり、借金がなくなる場合があります。

裁量免責になるかは、次のような事情が考慮されます。

⑴ 浪費、ギャンブル等がある場合

・使った金額

・浪費、ギャンブルをしていた期間

・浪費、ギャンブルをしていた時期

・破産手続きに誠実に協力したか

⑵ 詐術による信用取引の場合

・嘘をついて借り入れた額

・悪質性

・債権者の免責意見の有無

・破産手続きに誠実に協力したか

⑶ 裁判所への説明義務違反

・説明義務違反の内容、程度

・説明義務違反が破産手続きに与えた影響

4 破産してもなくならないもの(非免責債権)

破産をしても、免責されない(なくならない)借金等があります。

これを非免責債権と言います。

具体的には、次のものがあげられます。

・税金等

・悪意の不法行為に基づく損害賠償(人を殴った場合などの治療費、慰謝料等)

・故意、重過失による人の生命、身体を害する不法行為に基づく損害賠償(交通事故でけがを負わせた場合の治療費、慰謝料等)

・養育費や婚姻費用等

・従業員の給料等

・故意に債権者名簿に記載しなかった借金

5 まずは、弁護士に相談

・罰金

破産をする場合、大なり小なり免責不許可事由が疑われる事情は出てきます。

しかし、弁護士による説明などによっては、免責になることは珍しくないため、まずは、弁護士に話してみてください。

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個人再生をする場合の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を裁判所に提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

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相続登記の義務化について

1 令和6年4月1日からは、不動産の名義変更をしないと罰金の可能性

不動産登記法が改正され、来年の4月から施行されます。

今回の改正の目玉は、相続登記の3年以内の申請の義務化で、違反すると、10万円以下の過料(罰金のようなものです。)が発生する可能性もあります。

今までは、全く問題なかったところが、義務化され罰金もあるということで衝撃は大きいかとは思います。

制度の概要について、紹介します。

2 何が変わった?何をすればいい?

今までは、死亡した人の名義の不動産は、名義を書き換えなくとも、何も罰則はありませんでした。

そのため、先代、先々代の名義のまま放置されていることは珍しくありませんでした。

それが、これからは、名義変更をしておかないと罰則が科されるようになりました。

具体的には、死亡してから3年以内に

①相続登記

②相続人申告登記

のどちらかを行わなければいけません。

3 相続登記と相続人申告登記の違い

①相続登記

相続登記は、不動産の所有者が死亡し、相続する人が所有者が決まったら、その新所有者に名義変更をすることです。

「相続登記」という単語は法律には書いておらず、手続的には「所有権移転登記手続」という名前にはなります。

相続登記をするためには、次のような書類が必要です。

遺言がある場合

・遺言書

・死亡した人の戸籍謄本、住民票

・相続する人の戸籍謄本、住民票

・固定資産評価証明書、固定資産税納税通知書

・申請者の印鑑登録証明書

遺言がない場合

・遺産分割協議書

・死亡した人の出生~死亡までの全ての戸籍謄本

・死亡した人の住民票

・相続人全員の戸籍謄本・住民票

・固定資産評価証明書、固定資産税納税通知書

・相続人全員の印鑑登録証明書

②相続人申告登記

相続人申告登記は、今回の法律改正で新たに作られた制度です。

相続登記は、遺言書があるか、相続人全員が話し合って1枚の遺産分割協議に実印を押すかしないといけないので、3年以内にできない可能性があります。

そういった場合に、暫定的に行う登記が相続人申告登記です。

法務局の登記簿には、所有者が死亡したこと、相続人申告登記をした人の氏名・住所が記載されます。

必要な書類は、次のとおりです。

・申出をする相続人が、死亡した人(登記名義人)の相続人であることがわかる戸籍謄本等

4 いつまでに申請が必要か

相続登記もしくは相続人申告登記の期限は、相続の開始があったことを知った時から3年です。

つまり、原則は、死亡したことを知った時から3年以内に申告をする必要があります。

遺言があるか、3年以内に遺産分割協議が終わる場合には、相続登記を行います。

また、3年以内に遺産分割協議が終わらない場合には、とりあえずは相続人申告登記をしておけば罰金の心配はありません。

なお、令和6年4月1日より前に死亡している場合は、令和6年4月1日から3年後、すなわち令和9年(2027年)4月1日までが期限となります。

今まで名義変更を放っておいた人も、令和9年(2027年)4月1日までに全ての不動産について行う必要があり、一斉に期限が来てしまうので注意が必要です。

両親、祖父母が土地を持っていたけれど、サインや相続の手続きなどをした覚えがないという人は、まずは弁護士に相談した方が良いでしょう。

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