1 免責により借金がなくなる。
自己破産は、免責許可決定が出ると手続きが終了します。
この免責許可決定が出ることにより、借金を請求されることがなくなります。
そのため、自己破産は、免責を受けるための手続きと言っても良いでしょう。
免責は、法律で決められた免責不許可事由(破産法252条1項各号)がなければ、認められることになっています。
また、仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判官の裁量により免責を受けることができます、
2 借金がなくならない場合(免責不許可事由)
⑴ 不当な財団価値減少行為
支払不能後(借金が返せなくなった後)に、自身の財産を不当に消費、贈与、安価での売却をした場合です。
例えば、破産すると車を失ってしまう場合に、親族や知人に、車を相場の50万円ではなく、10万円など極めて安い金額で売却する行為がこれに当たります。
また、財産隠しなども該当します。
⑵ 不当な債務負担行為・不利益処分
破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で借金をした場合や、クレジットカードで購入して安価で売却した場合です。
例えば、借金が返せなくなって、闇金で借りてしまう場合があります。
また、借金を返すために、クレジットカードでカメラやスマートフォンを購入した後、その購入物を原価より安く売却して現金を得る行為も該当します。(いわゆる「現金化」)
⑶ 不当な偏波弁済
偏波弁済(「へんぱべんさい」)とは、一部の借金だけ返して、他の借金を返さないなど、借金に差をつけて返済することです。
例えば、クレジットカードや消費者ローンは返さずに、親族や知人の借金だけを返す行為がこれに当たります。
また、車を残すために、車のリース料金だけ支払う場合も該当します。
⑷ 浪費・賭博等による財産減少行為・債務負担行為
「浪費」とは、破産者の地位、職業、収入、及び財産状態に比して通常の程度を超えた支出をすることを言います。
自身の収入で返済できない金額の買い物をクレジットカードでしてしまう場合です。
「賭博」には、競馬・パチンコなどのいわゆるギャンブルです。
また、株の売買やFX取引等、投機的な取引も、この項目に該当します。
⑸ 詐術による信用取引
収入などを偽ってかりいれることは、免責不許可事由にあたります。
また、積極的に嘘をついた場合だけでなく、誤解させるような表現をしたり、返済可能性がないことなどを黙って借り入れることも、詐術に当たる可能性があります。
⑹ 説明義務違反
裁判所による調査に対して説明を拒んだり嘘の説明をする場合や、そのほかの破産法が定める義務に違反する場合です。
仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判所に対して隠し事をしたり嘘をついたりすると余計に状況が悪化するため、弁護士には正直に話して、裁判所への説明を考えていくのが良いでしょう。
3 免責不許可事由があっても、免責される場合(裁量免責)
仮に、免責不許可事由があっても、裁判官の裁量で免責となり、借金がなくなる場合があります。
裁量免責になるかは、次のような事情が考慮されます。
⑴ 浪費、ギャンブル等がある場合
・使った金額
・浪費、ギャンブルをしていた期間
・浪費、ギャンブルをしていた時期
・破産手続きに誠実に協力したか
⑵ 詐術による信用取引の場合
・嘘をついて借り入れた額
・悪質性
・債権者の免責意見の有無
・破産手続きに誠実に協力したか
⑶ 裁判所への説明義務違反
・説明義務違反の内容、程度
・説明義務違反が破産手続きに与えた影響
4 破産してもなくならないもの(非免責債権)
破産をしても、免責されない(なくならない)借金等があります。
これを非免責債権と言います。
具体的には、次のものがあげられます。
・税金等
・悪意の不法行為に基づく損害賠償(人を殴った場合などの治療費、慰謝料等)
・故意、重過失による人の生命、身体を害する不法行為に基づく損害賠償(交通事故でけがを負わせた場合の治療費、慰謝料等)
・養育費や婚姻費用等
・従業員の給料等
・故意に債権者名簿に記載しなかった借金
5 まずは、弁護士に相談
・罰金
破産をする場合、大なり小なり免責不許可事由が疑われる事情は出てきます。
しかし、弁護士による説明などによっては、免責になることは珍しくないため、まずは、弁護士に話してみてください。