自己破産、個人再生の場合の携帯の端末代

1 自己破産、個人再生では、携帯電話が返却になる可能性がある

スマートフォンを購入したときの端末代は、iPhoneであれば10万~20万することが当たり前ですので、多くの方が分割払いにしていると思います。

この端末代の分割払いは、ローンという形になり、いわば借金です。

自己破産や個人再生をすると、弁護士から手紙(受任通知)を送り全ての借金の支払を止めるので、当然、端末代の分割払いも弁護士が介入してストップします。

そのため、端末代が未払になり、携帯キャリアなどから携帯電話の返却を求められることがあります。

2 端末の分割払いをしているときの対応方法

端末の分割払いをしているときの対応方法としては、以下の2つがあります。

⑴ 携帯電話を返却し、代用の携帯を一括払いで購入する。

携帯電話は返却をしなければいけないため、代用の携帯電話を用意しなければいけません。

しかし、ここで再びローンを組んで分割払いにしてしまっては元の木阿弥です。

大切なのは、現金で一括払いにすることです。

もちろん、新品の最新機種を現金で一括払いをすることは、自己破産をしなければいけない状況では難しいと思います。

しかし、中古の型落機であれば5万円以下でそれほど不便しないものを購入できますので、検討の余地があります。

なお、家族がローンを組んで携帯電を購入することはOKですが、ローンの返済はローンを組んだ本人が行う必要があります。

⑵ 第三者の援助で、端末代の残ローンを一括返済してしまう。

端末代の残っているローンを一括返済してしまえば借金ではなくなるので、現在使っている端末をそのまま残します。

ここで重要なのが、自己破産や個人再生をする本人のお金を絶対に使わないことです。

手続中はあらゆる借金の返済が禁止になるので、最悪の場合、自己破産等が認められない(免責不許可)となる可能性があります。

一方で、親族や友人等の第三者による援助であれば返済はOKなので、端末代だけ支払えるという仕組みです。

なお、援助を組んだ人にお金を渡すと、援助者への返済ということになるのでこれも禁止です。

3 端末代の返済を続けてしまうと

「弁護士に端末の分割払いのことを話すと、携帯が返却になる」ということで、弁護士に端末代のことを隠しておけばいいのかというと、そうではありません。

横浜地方裁判所では、携帯電話の支払について、WEBページのスクリーンショットなどで支払の明細の提出を求められることがあります。

その場合、明細に「端末代」とあると、その時点で裁判所にはバレしまいます。

もし、裁判所に後々見つかった場合は、一部の借金だけ支払っていた(偏波弁済をしていた)ということで免責不許可事由となります。

免責不許可事由がある場合、最悪のケースでは借金がなくなりません(免責不許可)。

また、仮に免責不許可まで行かなくとも、管財事件になるため、裁判所に追加で20万円を予納金として納めた上で、弁護士介入後から現在までに支払った端末代も追加で裁判所に納めなければいけなくなります。(財団組入れ)

リスクしかないので、必ず弁護士に相談しましょう。

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相続放棄しても車を処分していいか

1 車の処分は相続放棄ができなくなる可能性がある

民法では、故人の財産を処分すると、単純承認になると定められています。

単純承認をすると、相続する(条文上は「被相続人の権利義務を承継する」)ことになるため、相続放棄ができなくなってしまいます。

そのため、条文を文字通り読めば、車を廃車にするなどしてしまうと相続放棄ができないということになります。

民法902条

 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

民法903条

 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
第1号 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

2 本来は相続財産清算人を立てる

ただし、相続放棄をしたからと言って、放置をしていいかどうかという問題があります。

賃貸の駐車場に停めてある場合は、賃貸人から撤去を強く求められるうえ、賃料がかかり続けます。

民法改正で、相続放棄をすれば「現に占有」をしていない財産であれば管理責任を負わなくなったため、そのまま駐車したままでも賃料の支払義務は負いません。

民法904条 第1項

 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

もっとも、亡くなったのが同居の親で自宅に車の鍵がある場合は「現に占有」していると言えるので、車を移動させない限りは賃料を支払う義務が発生します。

また、駐車場を賃貸しておらず自己所有の駐車場に駐車している場合でも、そのまま置いておくわけにはいきません。

このような場合は、相続財産清算人の選任を裁判所に申立てをし、相続財産清算人に車を処分してもらうというのが民法の建前です。

しかし、相続財産清算人の申立ては、申立ての際の弁護士報酬や裁判所への予納金で数十万円はかかるため、悩ましいところです。

3 車を処分した後の流れ

そこで、頻繁に質問をいただくのが「価値がない車なので、相続放棄の後に処分していいか?」です。

ここについては、「車を処分すると相続放棄できなくなる」とはよく言われているものの、具体的な流れは余り説明がないことも多いです。

相続放棄が裁判所に受理された後に車を処分すると、やはり、単純承認となり、相続放棄は無効となります。

一方で、無効になる場合としては、債権者(故人にお金を貸していた人)などが車が処分されていることに気づいて、相続放棄が無効であることを訴訟で争ってくる場合です。

つまり、債権者が、車が処分されていることに気づかなければ、そのまま問題になることもなく終わってしまう可能性があります。

実際に、貸金業者などは故人が車を所有していたことすら知らないことがほとんどで、仮に知っていたとしても誰が処分したか不明であるため、車を処分されたものの相続放棄できてしまうというケースは多くありそうです。

ただし、だからと言って放棄しても車を処分してもOKとはならず、いつでも相続放棄が無効になるリスクは忘れてはいけないのかとは思います。

まずは弁護士に相談した方が良いでしょう。

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ボーナスで借金を支払うべきか

1 ボーナスを使う前に弁護士に相談

たまにご相談いただくのが「ボーナスが入るのですが、ある程度返してから弁護士に依頼すべきですか?」という質問です。

この答えは、絶対に「NO」です。

もちろん、「返せるものは返さないと・・・」というお気持ちは素晴らしいものですし、できる限りのことをしてからでないと自己破産などは認められないのではないかという発想もよくわかります。

しかし、ボーナスで返済をしてしまうことはデメリットだらけです。

2 自己破産では「偏波弁済」として、認められなくなる可能性がある。

自己破産は、「今ある財産は全て借金の返済に回して、返しきれない借金を0円にする」手続きです。

これだけ聞くと「ボーナスで借金を返すべきではないか!となるのですが、自己破産に置いては「借金を平等に返さなければいけない」というルールがあります。

借金を全額は返しきれないので、残っているお金を金額に応じて平等に返すこととなっており、一部だけ返済をすることは「偏波弁済」として禁止されています。

「偏波弁済」は免責不許可事由にあたり、場合によっては破産そのものができなくなるリスクすらあります。

そのため、ボーナスでいくつか返済できる借金があったとしても、返済はせずに支払いを止めて弁護士に相談した方が安全です。

3 任意整理においては、頭金を求められることがある

裁判所を用いず、分割払い交渉を行うのが任意整理です。

例えば、120万円の借金を2万円×60か月(5年)の分割払いにできることがあります。

しかし、過去の利用状況によっては、頭金の支払を求められることがあり、支払えないと破産をせざるを得ないこともあります。

任意整理では、他の借金を支払うこと自体は禁止されないのですが、弁護士を入れて先延ばしにできる借金を払ってしまい頭金が払えなくなると本末転倒です。

どの借金を支払って、どの借金の支払を止めるかは弁護士が専門的な見地から判断するのが一番安全です。

ボーナスで返済して、預金がすっからかんの状況で相談に来た結果、本来は破産しなくてよかったのに破産となってしまう方もよく見かけます。

ボーナスは使う前に弁護士に相談することをオススメします。

4 ボーナスで弁護士費用を支払う

弁護士費用の分割払いが終わってから自己破産の申立てをするという方針の事務所が多いです。

そのため、自己破産の準備は終わっているのに分割払いが終わっていないから申立てができないという事態に陥りがちです。

そのため、ボーナスで弁護士費用を払ってしまえば、それだけ早く解決をできます。

もちろん、そんなことをしたらボーナスが使えずもったいないと思うかもしれませんが、実はそうではありません。

自己破産の手続き中は浪費は禁止され、返済もないのにボーナスが残っていないと浪費と判断され、自己破産が認められなかったり、認められたとしても使ったボーナスを裁判所に納めるかを求められたりします。

そのため、ボーナスは手を付けずに残しておくしかないのですが、ボーナスは残しておいても、結局は返済に回さなければいけません。

しかし、ボーナスを弁護士費用に充ててしまえば、本来は裁判所に納めるお金で弁護士費用を賄えてしまうので、実質的に弁護士費用が浮くためお得です。

早く申立ができれば、その分だけ早く破産手続きが進み、早く貯金を始められます。

そのため、ボーナスで弁護士費用を払うのが、結果的に一番お得だったりします。

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個人再生で減額できる金額

1 個人再生とは

個人再生は、借金を減額して3〜5年にかけて分割払いする手続です。

各社と交渉して分割払いにする任意整理との最大の違いは借金そのものを減額できることです。

また、同じ裁判所を通して借金を減らす自己破産との違いは、自宅や車などを売却したりしないで済むことです。

個人再生で借金をいくらに減らせるかは、いくつかルールがあります。

以下で紹介していきます。

2 最低弁済額

個人再生では法律で決められた最低弁済額という基準があります。

最低弁済額は借金の合計額で決まり、次のとおりです。

よくホームページなどで紹介される「借金を最大10分の1にできる」と謳われているのはこちらです。

この金額を3年〜5年にかけて分割するので、難しい法律の知識がなくとも将来の返済額をシミュレーションしやすいです。

100万円未満:全額

100~500万円:100万円

500~1500万円:借金総額の5分の1

1500~3000万円:300万円

3000~5000万円:借金総額の10分の1

例)

300万円

→最低額の100万円

→約1万7000円×60ヶ月(5年)

600万円

→1/5で120万円

→毎月2万円×60ヶ月(5年)

3 清算価値

清算価値とは、簡単に言えば自身の財産を全て売却したときに手元に金額です。

預金、住宅、車、保険契約を解約した際の払戻金、退職金など様々な財産が対象になり、全てを足し合わせて計算します。

そして、小規模個人再生では、清算価値と最低弁済額のうち高い方の金額を返済する必要があります。

弁護士の方で計算してみたら想定外に高額になるケースもありますので注意が必要です。

例)

自宅:売却価格3000万円、住宅ローン2800万円

預金:0円

退職金:400万円

保険解約返戻金:20万円

清算価値

=自宅(3000万円ー2800万円)+退職金400万円×1/8+保険解約返戻金20万円

=270万円

仮に借金が600万円の場合、最低弁済額は120万円となりますが、清算価値270万円の方が高いため、返済額は270万円になります。

これを60回(5年)で返済するので、毎月の返済額は4万5000円となります。

4 詳しくは弁護士に

個人再生の返済額のシミュレーションは、実際には法律のルールがたくさんありかなり複雑です。

詳しくは弁護士に相談して、正確なシミュレーションをすることをお勧めします。

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浪費をしたら自己破産はできないか

自己破産は申し立てたら必ず借金がなくなるものではなく、裁判所から「免責許可決定」が出ると初めて借金の支払い義務がなくなります。

そして、自己破産には「免責不許可」という制度があり、浪費やギャンブルなど免責不許可事由がある場合は、免責にならない(=借金の支払い義務がなくならない)ことになっています。

では、浪費をしたらもう借金はなくならないのでしょうか?

破産法における「浪費」は「」といわれています。

世間一般では「無駄遣い」とはまでいえない出費も、「その収入だと贅沢だよね」となってしまえば「浪費」に当たりうるわけです。

例えば、子どもを私立に行かせるための学費はもちろん無駄遣いではないですが、「返すアテもないのに借金をして私立に行かせる」となると「」と言われてしまうわけです。

こういう意味では、破産をしている以上、多かれ少なかれ「」はあるはずです。

(「交通事故で収入がなくなって、最低限の食費もなくて借金した。借金総額は2ヶ月間の生活費で30万円です。」という、絶対に浪費でないケースはほとんどないと思います。)

そのため、何でもかんでも浪費になるわけではなく、毎月の少しの無駄遣いが積み重なって借金が膨れ上がっただけでは、浪費と言われないことも多いです。

免責不許可事由があるとしても、それで借金がなくならないことが確定するわけではありません。

「裁量免責」という制度があり、裁判官の裁量で借金がなくなることがあります。

実際には、免責不許可事由があっても何らかの形で裁量免責になることがほとんどです。

ただし、裁量免責になる場合は、同時廃止ではなく管財事件となることが多いため、予納金として最低でも20万円は用意しなければいけない点は注意が必要です。

1年間で数百万円を浪費してすぐ破産するなど極めて悪質性が高い場合は、裁量免責がもらえない可能性があります。

そういった場合は、浪費した金額全額ではないにしても、ある程度の金額を裁判所に収めて借金の返済を一部でもすることで裁量免責か得られる場合があります。

(借金返済の元手である「破産財団」を増やすため、「財団組入」といわれています。)

「財団組入」するためのお金は、親族から援助を受けたり、破産手続き中に積み立てたりすることが多いです。

極めて悪質性が高く、財団組入するお金も用意できないとなると、いよいよ破産は難しくなります。

もっとも、そういう場合でも個人再生があります。

個人再生は、借金を減額したうえで分割払いする制度です。

極めて悪質性が高い浪費となると、返済額も上乗せされますが、それでも5年間で分割払いがあり得るため、どうにか生活を立て直すことができます。

個人再生を希望する相談者の多くが、「浪費してしまったので破産は無理だと思って…」と言います。

しかし、「浪費=免責不許可」ではなく、簡単にはいかないにしても、弁護士と一緒に手続きを真面目にしっかりやれば、免責になるケースは多いです。

そのため、最初から破産を諦めてしまわずに、まずは弁護士に相談してみましょう。

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弁護士に相続放棄を依頼するメリット

1 令和6年の戸籍法改正と相続放棄への影響

令和6年に戸籍法が改正され、一般の方でも戸籍が取りやすくなりました。

今まで、戸籍は本籍地のある市役所でしか取得することができませんでした。

本籍地は引越しをしても変わらないため、例えば、東京都に住んでいても本籍は実家のある福島にあるということは良くあります。

こうした場合は、戸籍法の改正前は、福島の市役所に戸籍を取りに行くか、郵送で戸籍を取りに行く必要がありました。

しかし、戸籍法の改正により、どこの市役所でも戸籍を取得することができるようになりました。

相続放棄においては遠隔地の戸籍取得の難しさが、自身で相続放棄をするハードルの一つであったため、戸籍法改正により相続放棄を自身でやるハードルは下がりました。

2 兄弟姉妹、叔父叔母の戸籍は取れない

もっとも、戸籍法改正で相続放棄における弁護士の役割がなくなったわけではありません。

戸籍を取得できるのは、以下の関係の人です。

〇本人
〇配偶者
〇父母、祖父母など(直系尊属)
〇子、孫など(直系卑属)

つまり、兄弟姉妹、叔父叔母の戸籍は取ることができません。

亡くなった人に子供がおらず(相続放棄した場合も含む)、両親もなくなっている場合は、その人の兄弟姉妹や甥姪まで相続人になってしまいます。

そのため、こういったケースではいまだに自身で戸籍を取寄せるのは困難であるため、専門家に依頼する必要があり得ます。

3 相続放棄は、裁判所の手続き以外にもやることが多い

相続放棄は裁判所の手続きだけやれば完全解決というわけではありません。

亡くなった人の部屋の片づけ、遺品整理、携帯や公共料金等の契約内容の変更、車の処分、葬儀費用の支払いなどをしてしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。

一方で、これらを全て放置すると、亡くなった人の自宅の大家から問い合わせがあったり、車の移動を求められたりと対応の依頼が殺到します。

法律上は放置しても問題ない場合もありますが、相手は法律の専門家ではないため

「相続放棄といっても、こちらは部屋を片付けてもらわないと困るんだ!どうにかしろ!」

と問い合わせが止まらないことも多々あります。

また、相続放棄をしても管理責任が残る場合もあるため、相続放棄をしても放置できないこともあります。

そのため、相続放棄は裁判所の手続きさえ終われば完全解決、となることは稀です。

戸籍が取りやすくなったからと言って、安易に自分で相続放棄をしようとは思わず、やはり弁護士に相談するのが良いでしょう。

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相続財産清算人を立てるべきか

1 相続財産清算人とは

相続人全員が相続放棄をすると相続人が不存在となり、亡くなった人が持っていた財産や借金は行き場がなくなります。

行き場がなくなった遺産は、国庫に帰属する、つまり国のものになるわけですが、自動的に国のものになるわけではなく家を売却したり、預金を払い戻したり、株式を売却したりといった現金に換えるための手続きが必要になります。

この手続きを行うのが相続財産清算人で、裁判所が選任します。

2 相続財産清算人の申立てをするべきか

相続財産清算人は必須というわけではなく、誰かが相続財産清算人の申立てを裁判所に申立てしないと選ばれないため、相続人全員が相続放棄をした後でも相続財産清算人は選ばれないままになっているケースがほとんどです。

また、相続放棄をした人も相続財産清算人の申立てをする義務はないため、必要がなければ相続財産清算人の申立てをしなくても問題はありません。

相続財産清算人の申立ては、申立の手続きを依頼する弁護士の費用や裁判所の予納金などで最低でも数十万円はかかるため、必要がなければしない方が良いでしょう。

相続財産清算人の申立ては、法定相続人以外にも利害関係人でもできるため、「相続財産清算人が必要な人が申立てをする」というイメージです。

では、どのような場合に相続財産清算人が必要になるかをいくつか紹介していこうと思います。

3 ケース① 空き家がある場合

亡くなった人の自宅など空き家があると、老朽化により家屋の倒壊、塀が崩れる、瓦が飛ぶなど様々な問題が起こります。

放置すると、実際に通行人が怪我をしたり、隣家が損傷したりといったことも起こります。

相続放棄をした人は現に占有している財産について管理責任を負うため、空き家の管理を怠った結果として通行人が怪我をしたら、その治療費を支払わなければいけなくなる可能性もあります。

しかし、相続放棄をしてしまうと空家の取り壊しをする権限もなくなってしまうため、空き家に手を付けられなくなります。

こういったケースで相続財産清算人が必要となり、相続財産清算人が空き家を売却したり取り壊しをしたり手配をすることになります。

逆に、空き家の管理責任を問われないようなケースでは、相続放棄をした人としては相続財産清算人を立てるメリットがないため、あえて相続財産清算人の申立てをする必要はなくなります。

空き家の管理責任を問われないケースとしては、

・空き家を元々管理していないケース

・そもそも家屋がなく、売れない山や畑しかないケース

がありえます。

4 ケース②亡くなった人が賃貸をしていた場合

亡くなった人が建物を借りていた場合、本来であれば相続人が賃貸借契約を解除して退去の手続きをしなければいけません。

しかし、相続放棄をするとその権限もなくなってしまうため、手を付けられなくなってしまいます。

個人の自宅マンション程度であればなぁなぁでどうにかなってしまうこともなくはないですが、亡くなった人が事業を営んでいて、テナントや工場を借りている場合にはそうもいきません。

放置した結果として貸主が次の人に貸せない間にかかった家賃や、テナントに放置していた財産を持って行かれたりしてしまった場合には、家賃や持って行かれた財産を損害として弁償する可能性も出てきます。

(往々にして「相続放棄をする=借金超過」の状況なので、本来は破産すべき場合が多く、亡くなった人の財産をお金を貸した人が持って行ってしまうということも珍しくありません。)

5 ケース③自宅が亡くなった人の名義の場合

自宅が亡くなった人の名義だが、借金が多く、家を相続しても借金が払いきれない場合は相続放棄をすることがほとんどです。(例外的に限定承認という手段はあります。)

相続放棄をすると、当然、家を出ていかなければいけないのですが、上手く行けば相続財産清算人を立てることで家に住み続けられるケースもあります。

相続財産清算人は、家を第三者に売却してその売却代金を残った借金の返済に充てることになるのですが、相続放棄をした後で、第三者として相続財産清算人から家を買い取ることができる可能性があります。

特に、亡くなった人が家の一部の権利だけを持っている場合は、相続財産清算人としても売却が困難なため狙い目です。

6 弁護士に相談を

相続財産清算人が必要なケースは他にも色々と考えられます。

相続財産清算人の申立てをすべきかは判断は、法律面でのメリットデメリットをよく考えなければいけないため、弁護士に相談した方が良いでしょう。

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証拠がないのは有利か不利か

1 裁判における証拠の意味

自己破産や相続放棄の法律相談をしていると、よく相談者から「証拠がないから大丈夫ですよね?」と聞かれることがあります。

ここで大事なのが、証拠がないことがこちらに有利ならいいのですが、証拠がないことがこちらに不利に働く場面もあるということです。

民事訴訟においては、「言った言わない」で揉めないために、紙の証拠が極めて重要視されます。

もちろんドラマのように証人が証言台に立って証言をすることはあり、証言も証拠としての意味はあります。

しかし、裁判の結論は紙の証拠でほぼ決まり、証人尋問で結論が変わることはないと言われるくらい、紙の証拠が重要です。

そして、証拠がなく真実がどちらか不明な場合でも裁判官は判決を出さなければいけないため、「立証責任」という考え方が取られています。

「立証責任」とは、当事者のどちらか一方が証拠を提出して立証する責任を負い、証拠がなければ(立証できなければ)その事実は存在しないものとして扱うというルールです。

誤解を恐れず言えば、証拠がなければ裁判に負けるということです。

そして、証拠を提出する責任ない側は、仮に証拠を持っていても提出する必要はありません。

本当にお金を貸していても借用書がなければ、お金を貸した事実は存在しないことになってしまうのです。

2 証拠がないことが有利/不利になる場面

訴訟において証拠は立証責任を負う側が提出すればいいため、要は自分に不利な証拠は出さなくてよいわけです。

そのため、証拠がないことは、次のような具体的なケースで意味を持ちます。

⑴ 相続放棄をする場合

相続放棄においては、部屋の片づけをしてしまったり、財産処分をしてしまったりすると相続放棄が無効となってしまいます。

しかし、部屋を片付けてしまったとしても、部屋に何があったかの写真は誰も持っていないため片付けをした証拠が出てくる可能性は低いです。

つまり、証拠がない以上は、片付けをしたことは存在しないことになるため、相続放棄が無効になる可能性は低く、相続放棄をした人にとっては有利になります。

一方で、亡くなった人の預金を下ろしてしまった場合、預金の履歴は第三者でも取得できるため、預金を下ろした証拠は出てきます。

亡くなった人が預金を下ろせるわけはないため、預金を下ろした人は無くなった人の遺族とすぐにわかるため、相続放棄した遺族側としては「預金を下ろしたのは自分ではない」ことの証拠を提出する責任を負い、証拠を出さなければ相続放棄が無効になってしまいます。

そのため、亡くなった人の預金を下ろした場合は、「預金を下ろしたのは自分ではない」ことの証拠を出せないと、遺族としては不利になってしまうわけです。

このように、ケースによって、証拠がないことは有利にも不利にもなります。

⑵自己破産をする場合

自己破産をする場合、自分のお金と言えど浪費してしまうと、免責不許可(借金の支払義務がなくならないこと)となってしまいます。

お金の使った場合は、領収書など、浪費と疑われないような証拠を残しておく必要があります。

自己破産の手続きは通常の訴訟手続きとは違いますが、立証責任の考え方は当てはまるもので、証拠を提出する責任は破産者にあるということになります。

そして、お金の使い道の証拠をちゃんと示せないと、浪費したものと同視されて、免責不許可となったり財産組入(裁判所への弁償のようなもの)を求められることもあります。

このように、証拠がないことは一概に有利不利が決まる話ではないため、「証拠がないから大丈夫」「証拠がないから不安」と決めつけず、弁護士に相談してみましょう。

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自己破産、個人再生における夫婦のクレジットカード

1 夫(妻)が自己破産するときに、妻(夫)はクレジットカードを使い続けられるか

 自己破産や個人再生をする場合、申立をする人はクレジットカードを使えなくなります。

 一方で、自己破産などをしない配偶者名義のクレジットカードを使い続けて良いかという問題はあります。

2 法律的には、配偶者のクレジットカードは止まらない。

 利用が停止されるのは、あくまで自己破産をする本人名義のクレジットカードだけであるため、配偶者名義のカードは使い続けられます。

 もっとも、自己破産などの裁判所の手続きとの関係ではいくつか問題があります。

3 配偶者のクレジットカード支払のためにお金を渡すのはNG

 奥さんのクレジットカードの支払いは、あくまで奥さんの借金であるため、これを旦那さんの給料で払うことは、旦那さんから奥さんに対する贈与になります。

 また、奥さんの口座にお金を移して財産隠しをしていると裁判所から指摘されることもあります。

(奥さんに給料があり、給料の範囲で支払うのは問題はないです。)

4 生活費の支払は本人の給料(口座)から直接支払う

 「奥さんにお金を渡さないと、クレジットカード払いにしている光熱費が払えない」というお悩みはあると思います。

 夫婦で収入があり生活費を折半している場合は、配偶者から破産をする本人の口座にお金を入金して対応するのが安全です。

5 クレジットカードを使わないでも生活はできる。

 そうはいっても、このネット社会でクレジット決済ができないのは不便です。

 もっとも、代わりにデビットカードなどを活用すると意外と不便はしません。

 また、ETCも、クレジットカード式のものではなくデポジット式(事前にお金をチャージするタイプ)などで代用できます。

6 そもそもクレジットカードに頼らない生活を

 ここからは、法律から離れた話になりますが、夫のものか妻のものかなど関係なく、クレジットカードの利用はやめるべきです。

 厳しいことを言うと、破産になる理由は多かれ少なかれ、お金の管理ができなかったことが原因です。

 クレジットカードは、使ったあと2ヶ月後に支払ったりリボ払いにできたりとお金の管理が難しく、そこで管理に失敗したことに原因があります。

 本人のものではないからとクレジットカードの利用を続けると、結局は同じ失敗を繰り返し、次はありません。

 まずはクレジットカードをすっぱり使わないように徹底することが生活再建の第一歩です。

7 弁護士に相談を

 生活再建のための家計管理は、正直なところ難しいです。

 このあたりは、破産や個人再生をする弁護士であれば慣れているため、弁護士と相談しながら生活を変えていくことをオススメします。

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個人再生で減額できない債権

1 税金など一部の未払金は減額されない

個人再生は、借金を減額した上で3年や5年といった期間かけて分割払いしていく手続きです。

もっとも、全ての借金や未払金が減額されるわけではなく、税金など一部の債権は個人再生をしても減額されることはなく、そのまま支払い続けなければなりません。

民事再生法122条において「一般の先取特権その他一般の優先権」(一般優先債権)は、個人再生を行っても減額されません。

また、抵当権など担保がついている債権は、個人再生をしても担保権の実行をすることができるため、個人再生で減額をする前に債権回収が行われてしまいます。

個人再生で減額されない債権は、一覧にすると以下のとおりです。

もっとも、細かくみていくと、民事再生法以外の法律も関係してくるため、減額されるのか減額されないのか、弁護士でも判断に困ることもあります。

そこで、以下でいくつかピックアップして細かく説明します。

2 担保権のついている債権

 自宅に抵当権を付けるなどして担保に借入を行った借金は、別除権を有します。(民事再生法53条1項)

 別除権を有する債権は、個人再生の手続中であっても別除権の行使が可能です。(民事再生法53条2項)

 つまり、例えば自宅に抵当権を借りた不動産担保ローンについては、自宅を競売にかけて売却することができ、借金を自宅の売却代金から回収されてしまいます。

 また、リースで購入した自動車については、所有権留保が自動車についているため、自動車は引き揚げられて売却されてしまいます。

 なお、「個人再生において住宅ローンは残せる」とよく言われますが、住宅ローンも別除権付債権にあたり、原則は自宅の競売が可能です。

 しかし、住宅ローンについては特例があり、要件を満たせば例外的に住宅を売却されずに残せることになっています。

3 租税等の請求権

「租税等の請求権」については、「一般優先債権」(民事再生法第122条1項)にあたり、個人再生で減額ができません。

租税というと、いわゆる税金をイメージしますが、税金以外の国民健康保険料や社会保険料なども租税債権に含まれます。

「租税等の請求権」は、「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」とされています。(破産法97条4号)

国税徴収法では通常の民事訴訟等を経ないで差し押さえをすることができますが、市税や保険料などは、国税徴収法と同じ仕組みで差押等の手続きをすることができます。

つまり、このような仕組みで差押ができる請求権は、「租税等の請求権」として、個人再生を行っても減額できません。

具体的には、市県民税、固定資産税などの市税や国民健康保険料や社会保険料などの保険料が減額できません。

4 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求とは、人を殴った場合の慰謝料など、故意に行った違法行為についての損害賠償を指します。

 ここでいう「悪意」とは法律用語で、言い換えるなら「わざと」という言葉が一番しっくりくるかもしれません。

 「悪気があって」という意味とは少々ニュアンスが違います。

 稀にあるケースとして、借金の返済に困って会社のお金に手を付けてしまった場合などはこれにあたり、個人再生をしても減額することができません。

 また、支払うお金がないからと返さないと刑事事件にされるリスクもあるため、扱いは慎重にならなければいけません。

5 故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

 典型例としては、交通事故で相手に怪我をさせた場合の治療費などがこれにあたります。

 「故意又は重大な過失」が条件であるため、裏返すと通常の過失や軽過失により発生した事故によりけがを負わせた場合は、個人再生で減額の対象になる可能性があります。

 もっとも、このようなケースでは被害者側からの強い反対が想定され、個人再生の手続きが難航する恐れがあるため、よく弁護士に相談しましょう。

6 まずは弁護士に相談

以上を見ていくとわかるように、どれが減額できてどれが減額できないかは、個別に見ていくとかなり専門的な内容です。

もっとも、減額できると思っていたものが減額できないとすると将来の返済計画が大きく崩れます。

そのため、不安がある場合は、まずは弁護士に相談しましょう。

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