浪費をしたら自己破産はできないか

自己破産は申し立てたら必ず借金がなくなるものではなく、裁判所から「免責許可決定」が出ると初めて借金の支払い義務がなくなります。

そして、自己破産には「免責不許可」という制度があり、浪費やギャンブルなど免責不許可事由がある場合は、免責にならない(=借金の支払い義務がなくならない)ことになっています。

では、浪費をしたらもう借金はなくならないのでしょうか?

破産法における「浪費」は「」といわれています。

世間一般では「無駄遣い」とはまでいえない出費も、「その収入だと贅沢だよね」となってしまえば「浪費」に当たりうるわけです。

例えば、子どもを私立に行かせるための学費はもちろん無駄遣いではないですが、「返すアテもないのに借金をして私立に行かせる」となると「」と言われてしまうわけです。

こういう意味では、破産をしている以上、多かれ少なかれ「」はあるはずです。

(「交通事故で収入がなくなって、最低限の食費もなくて借金した。借金総額は2ヶ月間の生活費で30万円です。」という、絶対に浪費でないケースはほとんどないと思います。)

そのため、何でもかんでも浪費になるわけではなく、毎月の少しの無駄遣いが積み重なって借金が膨れ上がっただけでは、浪費と言われないことも多いです。

免責不許可事由があるとしても、それで借金がなくならないことが確定するわけではありません。

「裁量免責」という制度があり、裁判官の裁量で借金がなくなることがあります。

実際には、免責不許可事由があっても何らかの形で裁量免責になることがほとんどです。

ただし、裁量免責になる場合は、同時廃止ではなく管財事件となることが多いため、予納金として最低でも20万円は用意しなければいけない点は注意が必要です。

1年間で数百万円を浪費してすぐ破産するなど極めて悪質性が高い場合は、裁量免責がもらえない可能性があります。

そういった場合は、浪費した金額全額ではないにしても、ある程度の金額を裁判所に収めて借金の返済を一部でもすることで裁量免責か得られる場合があります。

(借金返済の元手である「破産財団」を増やすため、「財団組入」といわれています。)

「財団組入」するためのお金は、親族から援助を受けたり、破産手続き中に積み立てたりすることが多いです。

極めて悪質性が高く、財団組入するお金も用意できないとなると、いよいよ破産は難しくなります。

もっとも、そういう場合でも個人再生があります。

個人再生は、借金を減額したうえで分割払いする制度です。

極めて悪質性が高い浪費となると、返済額も上乗せされますが、それでも5年間で分割払いがあり得るため、どうにか生活を立て直すことができます。

個人再生を希望する相談者の多くが、「浪費してしまったので破産は無理だと思って…」と言います。

しかし、「浪費=免責不許可」ではなく、簡単にはいかないにしても、弁護士と一緒に手続きを真面目にしっかりやれば、免責になるケースは多いです。

そのため、最初から破産を諦めてしまわずに、まずは弁護士に相談してみましょう。

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弁護士に相続放棄を依頼するメリット

1 令和6年の戸籍法改正と相続放棄への影響

令和6年に戸籍法が改正され、一般の方でも戸籍が取りやすくなりました。

今まで、戸籍は本籍地のある市役所でしか取得することができませんでした。

本籍地は引越しをしても変わらないため、例えば、東京都に住んでいても本籍は実家のある福島にあるということは良くあります。

こうした場合は、戸籍法の改正前は、福島の市役所に戸籍を取りに行くか、郵送で戸籍を取りに行く必要がありました。

しかし、戸籍法の改正により、どこの市役所でも戸籍を取得することができるようになりました。

相続放棄においては遠隔地の戸籍取得の難しさが、自身で相続放棄をするハードルの一つであったため、戸籍法改正により相続放棄を自身でやるハードルは下がりました。

2 兄弟姉妹、叔父叔母の戸籍は取れない

もっとも、戸籍法改正で相続放棄における弁護士の役割がなくなったわけではありません。

戸籍を取得できるのは、以下の関係の人です。

〇本人
〇配偶者
〇父母、祖父母など(直系尊属)
〇子、孫など(直系卑属)

つまり、兄弟姉妹、叔父叔母の戸籍は取ることができません。

亡くなった人に子供がおらず(相続放棄した場合も含む)、両親もなくなっている場合は、その人の兄弟姉妹や甥姪まで相続人になってしまいます。

そのため、こういったケースではいまだに自身で戸籍を取寄せるのは困難であるため、専門家に依頼する必要があり得ます。

3 相続放棄は、裁判所の手続き以外にもやることが多い

相続放棄は裁判所の手続きだけやれば完全解決というわけではありません。

亡くなった人の部屋の片づけ、遺品整理、携帯や公共料金等の契約内容の変更、車の処分、葬儀費用の支払いなどをしてしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。

一方で、これらを全て放置すると、亡くなった人の自宅の大家から問い合わせがあったり、車の移動を求められたりと対応の依頼が殺到します。

法律上は放置しても問題ない場合もありますが、相手は法律の専門家ではないため

「相続放棄といっても、こちらは部屋を片付けてもらわないと困るんだ!どうにかしろ!」

と問い合わせが止まらないことも多々あります。

また、相続放棄をしても管理責任が残る場合もあるため、相続放棄をしても放置できないこともあります。

そのため、相続放棄は裁判所の手続きさえ終われば完全解決、となることは稀です。

戸籍が取りやすくなったからと言って、安易に自分で相続放棄をしようとは思わず、やはり弁護士に相談するのが良いでしょう。

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相続財産清算人を立てるべきか

1 相続財産清算人とは

相続人全員が相続放棄をすると相続人が不存在となり、亡くなった人が持っていた財産や借金は行き場がなくなります。

行き場がなくなった遺産は、国庫に帰属する、つまり国のものになるわけですが、自動的に国のものになるわけではなく家を売却したり、預金を払い戻したり、株式を売却したりといった現金に換えるための手続きが必要になります。

この手続きを行うのが相続財産清算人で、裁判所が選任します。

2 相続財産清算人の申立てをするべきか

相続財産清算人は必須というわけではなく、誰かが相続財産清算人の申立てを裁判所に申立てしないと選ばれないため、相続人全員が相続放棄をした後でも相続財産清算人は選ばれないままになっているケースがほとんどです。

また、相続放棄をした人も相続財産清算人の申立てをする義務はないため、必要がなければ相続財産清算人の申立てをしなくても問題はありません。

相続財産清算人の申立ては、申立の手続きを依頼する弁護士の費用や裁判所の予納金などで最低でも数十万円はかかるため、必要がなければしない方が良いでしょう。

相続財産清算人の申立ては、法定相続人以外にも利害関係人でもできるため、「相続財産清算人が必要な人が申立てをする」というイメージです。

では、どのような場合に相続財産清算人が必要になるかをいくつか紹介していこうと思います。

3 ケース① 空き家がある場合

亡くなった人の自宅など空き家があると、老朽化により家屋の倒壊、塀が崩れる、瓦が飛ぶなど様々な問題が起こります。

放置すると、実際に通行人が怪我をしたり、隣家が損傷したりといったことも起こります。

相続放棄をした人は現に占有している財産について管理責任を負うため、空き家の管理を怠った結果として通行人が怪我をしたら、その治療費を支払わなければいけなくなる可能性もあります。

しかし、相続放棄をしてしまうと空家の取り壊しをする権限もなくなってしまうため、空き家に手を付けられなくなります。

こういったケースで相続財産清算人が必要となり、相続財産清算人が空き家を売却したり取り壊しをしたり手配をすることになります。

逆に、空き家の管理責任を問われないようなケースでは、相続放棄をした人としては相続財産清算人を立てるメリットがないため、あえて相続財産清算人の申立てをする必要はなくなります。

空き家の管理責任を問われないケースとしては、

・空き家を元々管理していないケース

・そもそも家屋がなく、売れない山や畑しかないケース

がありえます。

4 ケース②亡くなった人が賃貸をしていた場合

亡くなった人が建物を借りていた場合、本来であれば相続人が賃貸借契約を解除して退去の手続きをしなければいけません。

しかし、相続放棄をするとその権限もなくなってしまうため、手を付けられなくなってしまいます。

個人の自宅マンション程度であればなぁなぁでどうにかなってしまうこともなくはないですが、亡くなった人が事業を営んでいて、テナントや工場を借りている場合にはそうもいきません。

放置した結果として貸主が次の人に貸せない間にかかった家賃や、テナントに放置していた財産を持って行かれたりしてしまった場合には、家賃や持って行かれた財産を損害として弁償する可能性も出てきます。

(往々にして「相続放棄をする=借金超過」の状況なので、本来は破産すべき場合が多く、亡くなった人の財産をお金を貸した人が持って行ってしまうということも珍しくありません。)

5 ケース③自宅が亡くなった人の名義の場合

自宅が亡くなった人の名義だが、借金が多く、家を相続しても借金が払いきれない場合は相続放棄をすることがほとんどです。(例外的に限定承認という手段はあります。)

相続放棄をすると、当然、家を出ていかなければいけないのですが、上手く行けば相続財産清算人を立てることで家に住み続けられるケースもあります。

相続財産清算人は、家を第三者に売却してその売却代金を残った借金の返済に充てることになるのですが、相続放棄をした後で、第三者として相続財産清算人から家を買い取ることができる可能性があります。

特に、亡くなった人が家の一部の権利だけを持っている場合は、相続財産清算人としても売却が困難なため狙い目です。

6 弁護士に相談を

相続財産清算人が必要なケースは他にも色々と考えられます。

相続財産清算人の申立てをすべきかは判断は、法律面でのメリットデメリットをよく考えなければいけないため、弁護士に相談した方が良いでしょう。

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証拠がないのは有利か不利か

1 裁判における証拠の意味

自己破産や相続放棄の法律相談をしていると、よく相談者から「証拠がないから大丈夫ですよね?」と聞かれることがあります。

ここで大事なのが、証拠がないことがこちらに有利ならいいのですが、証拠がないことがこちらに不利に働く場面もあるということです。

民事訴訟においては、「言った言わない」で揉めないために、紙の証拠が極めて重要視されます。

もちろんドラマのように証人が証言台に立って証言をすることはあり、証言も証拠としての意味はあります。

しかし、裁判の結論は紙の証拠でほぼ決まり、証人尋問で結論が変わることはないと言われるくらい、紙の証拠が重要です。

そして、証拠がなく真実がどちらか不明な場合でも裁判官は判決を出さなければいけないため、「立証責任」という考え方が取られています。

「立証責任」とは、当事者のどちらか一方が証拠を提出して立証する責任を負い、証拠がなければ(立証できなければ)その事実は存在しないものとして扱うというルールです。

誤解を恐れず言えば、証拠がなければ裁判に負けるということです。

そして、証拠を提出する責任ない側は、仮に証拠を持っていても提出する必要はありません。

本当にお金を貸していても借用書がなければ、お金を貸した事実は存在しないことになってしまうのです。

2 証拠がないことが有利/不利になる場面

訴訟において証拠は立証責任を負う側が提出すればいいため、要は自分に不利な証拠は出さなくてよいわけです。

そのため、証拠がないことは、次のような具体的なケースで意味を持ちます。

⑴ 相続放棄をする場合

相続放棄においては、部屋の片づけをしてしまったり、財産処分をしてしまったりすると相続放棄が無効となってしまいます。

しかし、部屋を片付けてしまったとしても、部屋に何があったかの写真は誰も持っていないため片付けをした証拠が出てくる可能性は低いです。

つまり、証拠がない以上は、片付けをしたことは存在しないことになるため、相続放棄が無効になる可能性は低く、相続放棄をした人にとっては有利になります。

一方で、亡くなった人の預金を下ろしてしまった場合、預金の履歴は第三者でも取得できるため、預金を下ろした証拠は出てきます。

亡くなった人が預金を下ろせるわけはないため、預金を下ろした人は無くなった人の遺族とすぐにわかるため、相続放棄した遺族側としては「預金を下ろしたのは自分ではない」ことの証拠を提出する責任を負い、証拠を出さなければ相続放棄が無効になってしまいます。

そのため、亡くなった人の預金を下ろした場合は、「預金を下ろしたのは自分ではない」ことの証拠を出せないと、遺族としては不利になってしまうわけです。

このように、ケースによって、証拠がないことは有利にも不利にもなります。

⑵自己破産をする場合

自己破産をする場合、自分のお金と言えど浪費してしまうと、免責不許可(借金の支払義務がなくならないこと)となってしまいます。

お金の使った場合は、領収書など、浪費と疑われないような証拠を残しておく必要があります。

自己破産の手続きは通常の訴訟手続きとは違いますが、立証責任の考え方は当てはまるもので、証拠を提出する責任は破産者にあるということになります。

そして、お金の使い道の証拠をちゃんと示せないと、浪費したものと同視されて、免責不許可となったり財産組入(裁判所への弁償のようなもの)を求められることもあります。

このように、証拠がないことは一概に有利不利が決まる話ではないため、「証拠がないから大丈夫」「証拠がないから不安」と決めつけず、弁護士に相談してみましょう。

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自己破産、個人再生における夫婦のクレジットカード

1 夫(妻)が自己破産するときに、妻(夫)はクレジットカードを使い続けられるか

 自己破産や個人再生をする場合、申立をする人はクレジットカードを使えなくなります。

 一方で、自己破産などをしない配偶者名義のクレジットカードを使い続けて良いかという問題はあります。

2 法律的には、配偶者のクレジットカードは止まらない。

 利用が停止されるのは、あくまで自己破産をする本人名義のクレジットカードだけであるため、配偶者名義のカードは使い続けられます。

 もっとも、自己破産などの裁判所の手続きとの関係ではいくつか問題があります。

3 配偶者のクレジットカード支払のためにお金を渡すのはNG

 奥さんのクレジットカードの支払いは、あくまで奥さんの借金であるため、これを旦那さんの給料で払うことは、旦那さんから奥さんに対する贈与になります。

 また、奥さんの口座にお金を移して財産隠しをしていると裁判所から指摘されることもあります。

(奥さんに給料があり、給料の範囲で支払うのは問題はないです。)

4 生活費の支払は本人の給料(口座)から直接支払う

 「奥さんにお金を渡さないと、クレジットカード払いにしている光熱費が払えない」というお悩みはあると思います。

 夫婦で収入があり生活費を折半している場合は、配偶者から破産をする本人の口座にお金を入金して対応するのが安全です。

5 クレジットカードを使わないでも生活はできる。

 そうはいっても、このネット社会でクレジット決済ができないのは不便です。

 もっとも、代わりにデビットカードなどを活用すると意外と不便はしません。

 また、ETCも、クレジットカード式のものではなくデポジット式(事前にお金をチャージするタイプ)などで代用できます。

6 そもそもクレジットカードに頼らない生活を

 ここからは、法律から離れた話になりますが、夫のものか妻のものかなど関係なく、クレジットカードの利用はやめるべきです。

 厳しいことを言うと、破産になる理由は多かれ少なかれ、お金の管理ができなかったことが原因です。

 クレジットカードは、使ったあと2ヶ月後に支払ったりリボ払いにできたりとお金の管理が難しく、そこで管理に失敗したことに原因があります。

 本人のものではないからとクレジットカードの利用を続けると、結局は同じ失敗を繰り返し、次はありません。

 まずはクレジットカードをすっぱり使わないように徹底することが生活再建の第一歩です。

7 弁護士に相談を

 生活再建のための家計管理は、正直なところ難しいです。

 このあたりは、破産や個人再生をする弁護士であれば慣れているため、弁護士と相談しながら生活を変えていくことをオススメします。

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個人再生で減額できない債権

1 税金など一部の未払金は減額されない

個人再生は、借金を減額した上で3年や5年といった期間かけて分割払いしていく手続きです。

もっとも、全ての借金や未払金が減額されるわけではなく、税金など一部の債権は個人再生をしても減額されることはなく、そのまま支払い続けなければなりません。

民事再生法122条において「一般の先取特権その他一般の優先権」(一般優先債権)は、個人再生を行っても減額されません。

また、抵当権など担保がついている債権は、個人再生をしても担保権の実行をすることができるため、個人再生で減額をする前に債権回収が行われてしまいます。

個人再生で減額されない債権は、一覧にすると以下のとおりです。

もっとも、細かくみていくと、民事再生法以外の法律も関係してくるため、減額されるのか減額されないのか、弁護士でも判断に困ることもあります。

そこで、以下でいくつかピックアップして細かく説明します。

2 担保権のついている債権

 自宅に抵当権を付けるなどして担保に借入を行った借金は、別除権を有します。(民事再生法53条1項)

 別除権を有する債権は、個人再生の手続中であっても別除権の行使が可能です。(民事再生法53条2項)

 つまり、例えば自宅に抵当権を借りた不動産担保ローンについては、自宅を競売にかけて売却することができ、借金を自宅の売却代金から回収されてしまいます。

 また、リースで購入した自動車については、所有権留保が自動車についているため、自動車は引き揚げられて売却されてしまいます。

 なお、「個人再生において住宅ローンは残せる」とよく言われますが、住宅ローンも別除権付債権にあたり、原則は自宅の競売が可能です。

 しかし、住宅ローンについては特例があり、要件を満たせば例外的に住宅を売却されずに残せることになっています。

3 租税等の請求権

「租税等の請求権」については、「一般優先債権」(民事再生法第122条1項)にあたり、個人再生で減額ができません。

租税というと、いわゆる税金をイメージしますが、税金以外の国民健康保険料や社会保険料なども租税債権に含まれます。

「租税等の請求権」は、「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」とされています。(破産法97条4号)

国税徴収法では通常の民事訴訟等を経ないで差し押さえをすることができますが、市税や保険料などは、国税徴収法と同じ仕組みで差押等の手続きをすることができます。

つまり、このような仕組みで差押ができる請求権は、「租税等の請求権」として、個人再生を行っても減額できません。

具体的には、市県民税、固定資産税などの市税や国民健康保険料や社会保険料などの保険料が減額できません。

4 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求とは、人を殴った場合の慰謝料など、故意に行った違法行為についての損害賠償を指します。

 ここでいう「悪意」とは法律用語で、言い換えるなら「わざと」という言葉が一番しっくりくるかもしれません。

 「悪気があって」という意味とは少々ニュアンスが違います。

 稀にあるケースとして、借金の返済に困って会社のお金に手を付けてしまった場合などはこれにあたり、個人再生をしても減額することができません。

 また、支払うお金がないからと返さないと刑事事件にされるリスクもあるため、扱いは慎重にならなければいけません。

5 故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

 典型例としては、交通事故で相手に怪我をさせた場合の治療費などがこれにあたります。

 「故意又は重大な過失」が条件であるため、裏返すと通常の過失や軽過失により発生した事故によりけがを負わせた場合は、個人再生で減額の対象になる可能性があります。

 もっとも、このようなケースでは被害者側からの強い反対が想定され、個人再生の手続きが難航する恐れがあるため、よく弁護士に相談しましょう。

6 まずは弁護士に相談

以上を見ていくとわかるように、どれが減額できてどれが減額できないかは、個別に見ていくとかなり専門的な内容です。

もっとも、減額できると思っていたものが減額できないとすると将来の返済計画が大きく崩れます。

そのため、不安がある場合は、まずは弁護士に相談しましょう。

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相続放棄にかかる費用

1 費用の種類

相続放棄では、次のような種類の費用がかかります。

・収入印紙:800円

・予納郵券:約500円

・郵便切手代:数百円~数千円

・定額小為替:300円~750円×戸籍等の枚数

・弁護士費用等:2万円~

以下で、詳細を説明します。

2 収入印紙:800円

相続放棄の申立書には、収入印紙800円を貼る必要があります。

申立書は相続人の人数分だけ用意する必要があるため、子供2人が相続放棄する場合は、800円×2人=1600円必要になります。

3 予納郵券:約500円

相続放棄の申立書には、未使用の郵便切手をつける必要があります。

裁判所は、申述人から提出された切手を使って、様々な書類の郵送をします。

切手の金額と枚数は、裁判所ごとに違うことがあり、随時金額も変更されるため、申し立てる前に裁判所のホームページで確認する必要があります。

東海市を管轄する名古屋家庭裁判所半田支部では、現在時点では、84円切手×5枚が必要になります。

予納郵券は、相続人の人数分用意する必要になることがほとんどです。

4 郵便切手代:数百円~数千円

相続放棄の申述書は、裁判所に持参することもできますが、郵送することもできます。

郵送の場合は、その分の切手代がかかります。

紛失してしまうと一大事のため、念のため簡易書留等を利用した方がいいため、500円程度はかかります。

また、相続放棄をする際は、戸籍や住民票が必要になります。

必要な戸籍等については、以下のとおりです。

戸籍や住民票は、窓口で発行ができますが、遠方の市役所で取得しなければいけない場合は郵送で申請書を送り、郵送で戸籍等を送ってもらいます。

往復の切手代がかかるため、1通取得するのに数百円~1000円程度かかります。

5通取寄せると、3000円程度は見ておいた方が良いでしょう。

5 定額小為替:300円~750円×戸籍等の枚数

相続放棄をする際は、戸籍や住民票が必要になり、手数料がかかります。

発行手数料は市役所ごとに違いますが、

住民票:200~400円

戸籍謄本:450円

除籍謄本:750円

の市役所・区役所がほとんどです。

相続放棄で必要になる戸籍は以下のとおりです。

なお、相続関係によって、追加で戸籍謄本等が必要になることがあるので、正確には専門家に相談することをお勧めします。

⑴ 子供が放棄をする場合

・被相続人の除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

⑵ 孫が相続放棄する場合

・被相続人の除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子(相続人の親)の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑶ 親が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑷ 祖父母が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の両親の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑸ 兄弟姉妹が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の両親の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の祖父母の死亡の記載のある戸除籍謄本

⑹ 甥姪が相続放棄する場合

・被相続人の出生~死亡までの全ての戸除籍謄本

・被相続人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本

・被相続人の子の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の両親の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の祖父母の死亡の記載のある戸除籍謄本

・被相続人の兄弟姉妹(相続人の親)の死亡の記載のある戸除籍謄本

6 弁護士費用等:2万円~

相続放棄を弁護士等の専門家に依頼する場合は、上記のような経費とは別に専門家の費用が掛かります。

相続放棄を依頼する専門家としては、弁護士と司法書士が挙げられますが、料金はほぼ変わらないことが多いです。

料金は事務所ごとにバラバラであるため、よく比較した方が良いですが、相続人1人あたり2万円~10万円程度のことが多いです。

また、相続放棄の料金は、相続関係の複雑さやサービス内容によって変わってくるため、単に値段で比較するので、なにをどこまでやってくれるかを良く確認した方が良いでしょう。

例えば、司法書士は書類を作ることしかできず、裁判所や借金の取立に対する窓口にはなれないため、裁判所からの質問があった場合や借金の取立てがあった場合の対応は自分でやることになります。

一方で、弁護士は代理人となれるため、裁判所や借金の取立に対する窓口などまで任せることができます。

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自己破産をすると勤務先にバレるか?

1 勤務先にバレないことが多い

自己破産をしても、勤務先に連絡は必須ではないため、バレないことが多いです。

もっとも、以下のパターンでは勤務先に自己破産の手続き中であることが伝わってしまう可能性があります。

以下で、詳しく説明します。

2 ①給料の差押えがされた場合

借金を支払わないまま放置しておくと、訴訟や支払督促などの法的手続きを取られます。

そして、裁判所からの呼出等を放置したり、裁判所において分割払いの合意ができなかったりすると、債務名義を取られてしまいます。

給料の差押えは、自己破産でなくとも任意整理(借金の分割払い交渉)でも発生する可能性のある話ですが、自己破産の場合は、

の2点から、早期に分割払いの和解をして差し押さえを止めることができないため、リスクが高くなりがちです。

3 ②勤務先に借金がある場合

勤務先から給料を前借している場合や、社長から借金をして毎月の給与から天引きをしていることはよくあると思います。

自己破産の場合は、借金の支払いを全て止めなければならず、貸金業者には返済せず勤務先だけに返済を継続するということになると、「偏波弁済(へんぱべんさい)」にあたり免責不許可事由として破産ができなくなる一因となってしまいます。

そのため、勤務先に

を説明しなければいけないため、勤務先に自己破産をしていることがバレることにはなってしまいます。

差押えは、破産の申立てをすれば止められるため、対策としては、できる限り早く破産の申立ての準備を終わらせることになります。

4 ③退職金額の証明書を発行依頼する場合

自己破産の手続きにおいては、現在退職した場合の退職金の金額を裁判所に報告する必要があります。

大企業の場合は、人事システムが整備されており、社員がいつでもアクセスして退職金額を調べることができる場合もあります。

しかし、大半の企業ではそこまでシステムが整備されていることは珍しく、退職金額を確認するには、人事部などに問い合わせをしなければいけないことが多々あります。

具体的には、退職金額の報告方法は以下のとおりです。

a.b.d.の場合は、勤務先に必ずしも破産のことを話す必要がありません。

特に注意が必要なのが、退職金がなくとも「退職金がないことを証明する資料」は提出しなければいけないことです。

ご自身のケースで、会社への問合せが必要かは、弁護士に確認をした方が良いでしょう。

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相続放棄の延期(期間伸長)をすべきか

1 相続放棄の3か月の期限は延長できる。

相続放棄は、原則、死亡を知った時から3か月以内に裁判所に申立てを行う必要がありますが、この3か月の期限は延長することができます。

正式には、相続放棄の承認又は放棄の期間伸長申立てといいます。

延長できる期限は、裁判所ごとに違いがありますが、一般的には、3か月間延長しそれでも足りなかったら再度3か月延長の申請をします。

2 相続放棄の期限を延長するには、調査に時間がかかるなどの理由がいる。

相続放棄の期間伸長は、「相続すべきか、相続放棄をすべきかを決めるのに時間が足りない」という理由があって初めて認められます。

特に理由のない期間伸長の申立ては却下されるため、注意が必要です。

一般的なケースとしては、次のような場合です。

このケースの場合は、借金の調査が3か月で終わらなかったので、延長を求めるということになります。

逆に、特にこれ以上調査をすべきこともないとか、何の調査もしないまま、期限を延長したいと言っても却下されるでしょう。

(相続人には、財産調査をする権利があります。)

3 相続放棄の期限は、無制限に延長できるわけではない。

相続放棄の期限は、何回でもいつまでも延長できるわけではありません。

理由としては、借金を請求する立場の人からすれば、相続放棄の期限が延期されている間はいつまで経っても借金の請求ができないという不安定な状況になってしまうためです。

そこで、期限の延期は裁判所が許可した場合しか認められず、理由がなければ却下されます。

もっとも、1回目の延期(3か月→6か月)は比較的緩やかに認められます。

一方で、2回目以降(6か月以上)に延ばすためには、1回目の期限延長の間(3か月~6か月)にどのような調査を行って、どこまで調査が終わり、これからどのような調査を何か月かけて行うかを詳細に報告しなければいけません。

何も調査をせず6か月が経過してしまった場合は、延長が却下されることもありうるため注意が必要です。

4 「相続放棄が間に合わないから、期限を延期する」という選択肢は存在しない。

相続放棄の申立ては、戸籍を集めたりしなければいけないため、急いでも申立まで1~2か月程度かかることがあります。

そのため、「相続放棄の手続きが間に合わないから、期限の延期をしたい」という相談を良くいただくのですが、それは無理です。

なぜなら、相続放棄の期間伸長に必要な書類は相続放棄と全く同じで、期間伸長の理由説明をしなければいけない分、むしろ期間伸長の申立ての方が手間がかかります。

そのため、「相続放棄の手続きが間に合わない」=「期間伸長の申立ても間に合わない」となってしまいます。

「調査をしないと放棄するか決められない」という状況でなければ、期間伸長はせずに、相続をするか放棄をするかを決めて申立てをしてしまった方が良いケースがほとんどです。

相続放棄をすべきかは、弁護士によく相談しましょう。

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自己破産と個人再生における家計簿の作り方

1 自己破産や個人再生では、家計簿を作る必要がある。

 自己破産と個人再生は、裁判所を利用して借金を減らす手続きですが、お金を貸した人は借金が返ってこなくなるという極めて重大な不利益があるため、審査は厳格に行われます。

 裁判所の審査の一つとして、家計簿を作成して裁判所に提出する必要があります。

 裁判所は家計簿を見ることで

① 浪費などがなくなり、生活が改善されているか

② 自己破産等が終わった後に、借金をせずやっていけるか(経済的に立ち直れるか)

③ 毎月の安定した返済が可能か(個人再生のみ)

等を審査します。

 以下で、家計簿の作り方や注意点を紹介します。

2 家計簿は、同居の家族全員分の物が必要

 家計簿は、自己破産等をする本人だけでなく、夫や妻、子供、親などの同居してる家族全員分の収支をまとめる必要があります。

 また、籍を入れていない、いわゆる内縁関係の配偶者や同棲している交際相手も家計簿の対象になります。

 以下で説明しますが、同居人の通帳・給与明細・領収書などを裁判所に提出する必要があるため、同居人に自己破産をすることを伝えて協力を貰う必要があります。

 なお、成人した子供が、家賃代わりに生活費を親に支払っており、それ以外の自分の給料は全て自身で使用している場合などは、家計が別ということで通帳等の提出が必要ない場合もあり得ます。

 もっとも、そのような場合でも、裁判官次第で提出を求められることもあるため、基本は協力は必要と腹積もりをしておいた方が良いです。

3 家計簿のまとめ方

 家計簿は、1か月の収入や出費を1枚の紙にまとめます。

 用紙をみればわかりますが、収入については

給料(申立人) 35万円

給料(配偶者) 10万円

給料(長男) 20万円

当月収入計 65万円

といったようにまとめます。 

また、出費も、食費、家賃など、項目別に1か月分をまとめて記載します。

収入や家賃、水道光熱費などは1円単位で正確に記入する必要がありますが、食費や日用品などは概算でも大丈夫です。

4 家計簿につける資料

家計簿には、セットで資料をつける必要があります。

必要になる資料は、以下のとおりです。

① 通帳のコピー(該当する月のページ、同居人全員分)

② 給与明細(同居人全員分)

③ 児童手当、年金などの受給金額がわかる資料(ハガキや受給証明など)

④ その他、収入の明細がわかる資料(個人事業主の場合、請求書や領収書など)

⑤ 家賃、水道光熱費、保険料などの領収書

⑥ 1万円を超えるような高額な出費の領収書

⑦ ATMでおろした現金の使用した内訳のメモ等

5 家計簿が必要な期間

 家計簿は、もっとも少なければ1か月分、多いと1年間毎月作成する必要があります。

 手続きの内容によって変わってきます。

 具体的には、以下のとおりです。

① 自己破産の同時廃止事件

 申立ての前月、もしくは前々月の家計簿1か月が必要になります。

(7月申立てなら、5月分か6月分の家計簿を提出)

 申立て後は、家計簿の提出は必要ありません。

② 自己破産の管財事件の場合

 申立ての前月、もしくは前々月の家計簿1か月が必要になります。

 また、申立て後、開始決定もしくは初回の管財人面談までの家計簿(追加で1~3か月分くらい)は提出が必要になります。

 また、裁判所などの指示により、さらに追加で必要な場合もあります。

③ 個人再生の場合

 申立て前3か月分の家計簿1か月が必要になります。

(7月申立てなら、4~6月分)

 また、申立て後、返済の練習(履行テスト)を3か月行う必要があり、その期間は家計簿の提出が必要になります。

6 とりあえず弁護士に相談

 裁判所の求める家計簿は少々特殊で、慣れないと作成に戸惑うことがほとんどです。

 また、家計簿の内容も家族ごとに注意点が様々です。

 何はともあれ、弁護士に相談して、自分の場合はどのようなところに注意すればいいかを質問するのがいいでしょう。 

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