死後にやるべき相続の手続ー期限のないものー

死亡後にやるべき相続の手続の一覧については、以下の記事をご覧ください。

⑾ 明確な期限はないが必要な手続

㉒ 遺言書の検認

 死亡した人が手書きの遺言(自筆証書遺言)を作成していた場合、原則は、裁判所での検認手続が必要です。

 これは、遺言書の保管者か遺言書を最初に発見した相続人が行わなければなりません。

 検認手続には、「〇か月以内」といった期限はありませんが、いつやってもいいわけではなく、基本的には、死亡後に速やかに行わなければいけません。

 検認手続を遅らせた場合は、5万円の科料(罰金のようなものです。)が科せられる可能性もあるため、注意して下さい。

 検認を行う裁判所は、死亡した人の住所地の家庭裁判所になります。

 申立には、

・申立書(家庭裁判所のHPからダウンロードすることはできます。)

・遺言者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・既に亡くなっている子や親がいる場合の,その人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

などが必要となります。

 全ての戸籍の収集を漏れなく行うことは難しいため、弁護士に手続を依頼してしまうのが楽です。

 なお、法務局の保管制度を利用して、遺言を法務局で保管していた場合は、検認手続が不要になります。

㉓ 遺産分割協議

 相続が発生したら遺産分割協議を行う必要があります。

 遺言などがない限り、遺産分割協議を行わないと、不動産の名義変更や、凍結された預貯金の解約などができません。

 この手続は相続人同士で話し合うというもので、何か書類を作成したり市役所などの公的機関に何かを提出することが必須ではありません。

 もっとも、実際には、話合いの結果を、遺産分割協議書という形で残すのが一般的です。

 この遺産分割協議書を提出して、不動産の名義変更や凍結された預貯金の解約を行います。

 なお、期限はなく、十年以上前に死んだ人のの遺産分割協議を行うこともあります。

 しかし、実際には、遺産分割が終わっていないと相続税の申告に影響があるため、相続税進行の期限である10か月以内に終わらせてしまうのが良いでしょう。

死亡後にやるべき相続の手続ー3年~5年以内ー

死亡後にやるべき相続の手続の一覧については、以下の記事をご覧ください。

⑼ 3年以内に必要な手続

⑳ 生命保険金の請求

死亡した人が生命保険の被保険者であった場合,生命保険が受け取れます。

保険金受取人に指定されている人から、保険会社に対して請求します。

請求期限は、保険会社ごとに異なるため保険会社に確認を取る必要がありますが,3年を期限としている保険会社が多いです。

なお、生命保険については、入っていると知らずに請求し忘れてしまうこともあるので、亡くなった方のご自宅にある資料等から保険会社に連絡を取ってみるのがよいでしょう。

また、死亡した人が生命保険に加入していたかどうかは、「生命保険契約照会制度」を用いることで、調査をすることができます。

⑽ 5年以内に必要な手続

㉑ 遺族年金の受給申請

遺族年金とは,国民年金や厚生年金保険の加入者が死亡した時に,死亡した人の収入で生活していた遺族が受け取ることができる年金です。

「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり,死亡した人の年金に応じて,いずれか又は両方の年金が支給されます。

申請に必要な用紙は,市役所や年金事務所でもらえます。

・遺族基礎年金

 →18歳未満の子供のいる配偶者か子供が受け取ることができます。

  申請先としては,市役所・区役所等になります。

・遺族厚生年金

 →妻,子,孫,55歳以上の夫・父母・祖父母が受け取ることができます。

  申請先としては,年金事務所または年金相談センターになります。

  (横浜市内でも、区ごとに管轄区域が異なります)

(正確に子供とは,子供が18歳になる年度の3月31日を経過していない場合か,子供20歳未満で障害年金等級1級/2級の場合を指します。)

死亡後にやるべき相続の手続ー1年以内ー

死亡後にやるべき相続の手続の一覧については、以下の記事をご覧ください。

⑺ 1年以内に必要な手続

⑯ 遺留分侵害額請求

生前贈与や遺言により、一部の人が遺産の大半を受取る結果、本来貰えるはずだった遺産をもらえない人は、金銭の請求を行うことができます。

これを遺留分侵害額請求と言います。

遺留分というのは,生前の贈与や遺言書などにより相続人の貰う遺産が少なくなったとしても,最低限

は遺産がもらえることが保障されている制度です。

▶例)「全ての遺産を長男に相続させる」という遺言があったとしても,何ももらえなかった次男は,全財産の1/4の金額を、長男に支払うよう請求ができます。

遺留分侵害額請求は1年の時効があるため、それを過ぎてしまうと時効により請求ができなくなってしまいます。

この1年という期間は,「遺留分が侵害されていることを知った日から1年」であるため,厳密には、死亡日から1年ではありません。

死亡日から1年を過ぎて請求をする場合は、遺言の存在を知ったのが直近1年以内であることの証拠などを用意をしたりする必要が出てくるため、可能であれば、死亡日の1年以内に請求をしてしまうのが良いでしょう。

なお、1年以内に解決までする必要はなく、請求の意思表示だけしておけば時効によって消滅する心配は当面なくなります。

(請求の際は、証拠を残すなどする必要があるので、弁護士に相談をしてください)

死亡後にやるべき相続の手続ー4か月~10か月以内ー

死亡後にやるべき相続の手続の一覧については、以下の記事をご覧ください。

⑸ 4ヵ月以内に必要な手続

⑭ 準確定申告

収入がある人が死亡した場合、その相続人は、4か月以内に確定申告を行わなければいけません。

この手続を準確定申告と言います。

毎年2月15日~3月15日の間に行う確定申告を、死亡した人だけは特別に4か月以内に行うイメージです。

準確定申告の対象となるのは,死亡した年の1月1日から死亡日までに発生した所得です。

準確定申告の対象となるのは,亡くなった年の1月1日から亡くなった日までに発生した所得です。

この手続は,他の相続手続と比べると手間と時間がかかるため,期限内に行うことができるよう注意が必要です。

⑹ 10ヵ月以内に必要な手続

⑮ 相続税の申告と納付

遺産が一定の金額を超える場合には,相続税が発生します。

相続税の申告は、死亡した人の住所地の税務署に行います。

横浜の場合は、区によって管轄が変わりますが、横浜西税務署と横浜中税務署の2つがあります。

また、相続税は、納税も10か月以内に行わなければいけない点は、注意が必要です。

この、「一定の金額」のことを「基礎控除額」といい、次のような計算式で求められます。

相続税の申告を税務署に行う必要があります。

基礎控除額:3000万円+(法定相続人の数)×600万円

▶例)父が亡くなり,妻と子供が相続人となった場合は

▶例)父が亡くなり,妻と子供が相続人となった場合は

3000万円+2人×600万円=4200万円

が基礎控除額となります。

この場合、父の相続が4200万円を超える場合には相続税の申告をしなければなりません。

一方で、遺産が基礎控除額以下の場合は、そもそも、相続税の申告をする必要はありません。

仮に,相続税の申告をしなければならないのに申告しないまま10ヵ月を過ぎてしまうと,延滞税や利子税を課される可能性もあるため,早めに専門家に相談して準備をしておく必要があります。

死亡後にやるべき相続の手続ー3か月以内ー

死亡後にやるべき相続の手続の一覧については、以下の記事をご覧ください。

⑷ 3ヶ月以内に必要な手続

⑫ 相続放棄または限定承認

相続をすると,亡くなった方の財産だけでなく,負債・借金も引き継いでしまいます。

この点,相続放棄をすると財産をもらえない代わりに,借金も一切引き継がずに済みます。

限定承認は、財産も借金も相続しますが、返済すべき借金が相続した財産の範囲まで減少します。

自宅(評価額:3000万円)を相続したいが、1億円の借金があるという場合、相続放棄をすると自宅を失ってしまいます。

一方で、限定承認であれば、自宅を相続しつつ、借金を自宅の金額(3000万円)まで減らすことができます。

これらの手続は,3ヶ月以内に亡くなった方の住所地の家庭裁判所に申立の手続を行わなければなりません。

この3ヶ月というのは,「亡くなったのを知った時から」3ヶ月であるため,厳密には、死亡日から3ヶ月ではありません。

死亡日から3か月を過ぎていても,亡くなった時より後であれば相続放棄をできる可能性があります。

(申立内容は少々複雑になります。)

なお、相続放棄は亡くなった方の財産を処分してしまうとできなくなってしまうため,もし相続放棄を検討しているのであれば,亡くなった方のお金や持ち物を売却したり、捨てたりしないように注意をしなければなりません。

⑬ 相続の承認又は放棄の期間の伸長

財産の調査が終わらないために、相続するか放棄をするかが決められない場合は、期間を延期することができます。

この期間の延期の手続も,3ヶ月以内に家庭裁判所に申立の手続を行う必要があります。

なお、いくらでも認められるわけではなく、裁判所の許可を得なければ延期はできないため、実際に申立を検討する場合は、弁護士に相談をすることをお勧めします。

死亡後にやるべき相続の手続ー10日~14日以内ー

死亡後にやるべき相続手続の一覧については、以下の記事をご覧ください。

⑵ 10日以内に必要な手続

④ 厚生年金の受給停止の手続

⑤ 厚生年金受給権者死亡届の提出

お住まいの地域の社会保険事務所で行うことができます。

(横浜であれば、区ごとに担当地域があり、5か所の年金事務所があります。)

必要な資料としては,年金証書,死亡診断書(または死体埋葬火葬許可書),亡くなった方の戸籍謄本,亡くなった方と年金受給者の住民票が必要となります。

また,受け取っていない年金が残っている場合には,一緒に給付の請求も行ってください。

年金の支払いは2か月ごとにされますが、前回の支払い日~死亡日の期間については、日割りで年金を受け取る権利があります。

この、日割りの年金(未支給年金)については、受取り手続きを別で行わなければいけないため、忘れずに行いましょう。

また,国民年金の手続と異なり,期限が4日短いので(厚生:10日,国民:14日),注意が必要です。

また,国民年金の手続と異なり,期限が4日短いので(厚生:10日,国民:14日),注意が必要です。

⑶ 14日以内に必要な手続

⑥ 国民年金の受給停止

⑦ 国民年金受給権者死亡届

厚生年金の手続と同じで,社会保険事務所に行くとできます。

厚生年金より期限は少し長いですが,必要書類も変わらないため,厚生年金の手続と一緒にやってしまうのがよいでしょう。

⑧ 国民健康保険資格喪失届

⑨ 国民健康保険証の返却

亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合,保険資格喪失届の提出と保険証の返却をする必要があります。

また,75歳以上の方が亡くなった場合は,後期高齢者医療資格喪失届をあわせて提出しなければなりません。

届け出は,亡くなった人の住所地の市役所・区役所になります。

手続の際は,保険証と,死亡届や戸籍謄本等の死亡を証明できる資料,手続をする方の身分証明書(運転免許証,パスポート,住基カードなど),印鑑などが必要となります。

⑩ 介護保険の資格喪失届

こちらは,亡くなった方が,介護保険に加入していた場合に行わなければならない手続です。

届け出先は,健康保険と同じく,市役所や区役所になります。

また,要介護認定を受けていた場合は,介護保険者証も変換する必要があります。

⑪ 世帯主の変更届

世帯主が亡くなったときに,世帯に15歳以上の人が2人以上残っている場合に提出が必要になります。

届け出先は亡くなった方の住所地の市役所などになります。

死亡届と一緒に行うのが一般的です。

手続に必要な書類は,

・本人確認書類(運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど)

・届出人の印鑑

・国民健康保険証

になります。

死亡後にやるべき相続の手続ー7日以内ー

死亡後にやるべき相続の手続の一覧は以下の記事をご覧ください。

7日以内に行わなければいけない手続は

⑴ 7日以内に必要な手続

① 死亡診断書(死体検案書)の取得

死亡診断書(死体検案書)とは,医師が,故人が死亡したことを証明する書類です。

今後の様々な手続きに必要になる重要な書類です。この書類がないと,葬儀や火葬といった手続きを進めることができません。

書類を作成する医師が生前に診察したことのある人が,その病気やケガが原因で亡くなった場合には,死亡診断書となります。一方で,書類を作成する医師が診察したことのない人である場合には死体検案書が作成されます。

●取得手続

・病院で亡くなった場合

→担当医師が死亡診断書を発行してくれます。特に手続きはいりません。

・自宅で亡くなった場合

▶病院で診察を受けてから24時間以内+死因が診察を受けたケガや病気

→主治医に連絡

主治医が発行します。特別な手続きは必要ありません。

▶病院で診察を受けてから24時間以降+死因が診察を受けたケガや病気

→主治医に連絡

主治医が死後診察を行ったうえで,発行します。

・それ以外の場合

→主治医に連絡。

主治医がいない場合は119番に連絡。

死体検案の後に死体検案書が発行されます。

② 死亡届の提出

死体検案書と同じ用紙の左ページにあります。

・亡くなった方の死亡地

・亡くなった方の本籍地

・届出人の所在地

のいずれかの役所に提出します。

(関西に住んでいた親が亡くなった場合でも、届出人が横浜に住んでいる場合は、横浜の市役所・区役所で提出できるため、一番便利な場所を選ぶと良いでしょう。)

用紙は,市区町村役場や病院でもらえます。

届け出ることができる人は

・親族、同居人、家主、地主、家屋管理人、土地管理人、後見人

などです。

死亡から7日以内に届け出がないと,5万円以下の過料を支払わなければならないので注意が必要です。

③ 死体埋葬火葬許可証の取得

死亡届と同時に火埋葬許可申請書を役所に提出します。

これがないと,火葬を行うことができません。

取得したら,葬儀業者に渡してください。

死亡後にやるべき相続の手続

一人の人が亡くなると、市役所(区役所)、銀行、法務局など、様々な場所で様々な手続が必要になります。

しかも、期限がバラバラで、近いものだと1週間以内のものもあります。

そこで、必要な手続とその期限を一覧にまとめました。

もっとも、これだけに限らないので、実際には、弁護士などの専門家にまとめて依頼をしてしまうのが楽かもしれません。

一つ一つの手続については、別の記事で紹介をしていこうと思います。

(原則は亡くなった日を0日目とする)

⑴ 7日以内

 ① 死亡診断書・死体検案書の取得

 ② 死亡届の提出

 ③ 死体埋葬火葬許可証の取得

⑵ 10日以内

 ④ 厚生年金受給停止の手続

 ⑤ 厚生年金受給権者死亡届の提出

⑶ 14日以内

 ⑥ 国民年金受給停止の手続き

 ⑦ 国民年金受給権者死亡届の提出

 ⑧ 国民健康保険資格喪失届

 ⑨ 国民健康保険証の返却

 ⑩ 介護保険の資格喪失届

 ⑪ 世帯主の変更届

⑷ 3か月以内

 ⑫ 相続放棄または限定承認

 ⑬ 相続の承認又は放棄の期間の伸長

⑸ 4か月以内

 ⑭ 準確定申告

⑹ 10か月以内

 ⑮ 相続税の申告

⑺ 1年以内

 ⑯ 遺留分減殺請求

⑻ 2年以内

 ⑰ 葬祭費・埋葬料の請求

 ⑱ 高額療養費の払戻し

 ⑲ 死亡一時金の請求

⑼ 3年以内

 ⑳ 生命保険の請求

⑽ 5年以内

 ㉑ 遺族年金の受給申請

⑾ その他の手続き

 ㉒ 遺言書の検認

 ㉓ 遺産分割協議

遺言執行者をつけるべきか

1 遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言の内容のとおりに相続手続を行う人です。

遺言に遺言執行者をしておいたり、死亡後に家庭裁判所に選任をしてもらいます。

遺言執行者が選任されていると、土地建物の名義変更や、預金の払戻手続、払い戻された預金の分配などを遺言執行者が行います。

遺言執行者は、必須ではないですが、遺言のとおりに相続手続を全て行うのは大変なので、遺言執行者については、専門家を選任してしまうのが楽です。

もっとも、

・遺言執行者が必須の場合

・遺言執行者をつけてはいけない場合

があるので注意が必要です。

2 遺言執行者が必須の場合

相続手続は、財産を受取る相続人やその依頼を受けた専門家が手続を行えます。

しかし、遺言執行者がいないとできない手続が存在するため、その場合は、遺言執行者をつけることが必須となります。

遺言執行者が必須の手続としては、次のようなものがあります。

・遺言による認知

・遺言による相続人の廃除

・遺贈の内容の実現

・一般財団法人設立のための定款作成

3 遺言執行者をつけてはいけない場合

遺言執行者は、財産目録の作成と交付義務があり、相続人全員に連絡をすることになります。

つまり、遺言の内容を兄弟などに知られずに相続を済ませたい場合に、遺言執行者をつけてしまうと、その時点で、相続人全員に通知が行ってしまいます。

そのため、このような場合は、遺言執行者をつけない方が良いでしょう。