1 「収入があると自己破産できない」と言われることがある。
自己破産の相談でよく耳にするのが、「別の弁護士に相談したら、収入が高いので自己破産は無理だ」と言われたというものです。
確かにそういうケースはある一方で、「高収入=自己破産ができない」というわけでもありません。
この点は、破産法にちゃんと理由があるので、それを理解するとどのようなケースで破産ができるかがわかると思います。
2 破産するには、「支払不能」であることが必要
破産手続を行うにあたっては、破産法第15条第1項の「支払不能」の条件を満たすことが必要になります。
破産法 第15条第1項
債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第30条第1項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
支払不能とは、破産法第2条第15号に定義があります。
破産法 第2条第15号
この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(中略)をいう。
簡単に言えば、返済期限が過ぎているものについて、将来的に継続して支払ができない状態を支払不能と言います。
単に、借金の総額>全財産となり、全財産を返済に充てても借金が残ってしまうというだけではなく、今後の給料等を返済に充てていっても間に合わないということが必要になります。
つまり、「高収入=将来にかけて返済が可能=支払不能ではない」という理由で破産が認められない可能性があることになります。
これは「高収入で返済ができるのだから、借金は返すべきだ」という道徳的な話ではなく、法律上の理由がある話ということになります。
3 何をもって「支払不能」とするか
支払不能の概念は、法的な概念で、いくらでも裁判例や論文がある内容です。
そのため、それを全て理解するのは現実的ではないです。
もっとも、単に「来月の返済ができない」というだけでは「支払不能」にはなりません。
一方で、「高収入=支払不能ではない」というわけでもありません。
ここで、一つの基準として、任意整理が可能かという視点は役に立ちます。
毎月の給料が手取50万円、借金の総額が600万円というケースを想定します。
来月の給料日の借金の支払が60万円であれば、給料は50万円しかないため、当然、そのまま自力で返済していくことは不可能です。
一方で、任意整理を行い、弁護士が各社と分割払い交渉をすれば、毎月10万円×60回(5年)払いで和解が成立する可能性があります。
そうすると、毎月の給与50万円から、家賃10万円、水道光熱費2万円、食費8万円・・・・と生活費を支払いしても、生活費を40万円に収めれば、返済を行っていくことは可能になります。
そうすると、給料が手取50万円あっても、将来にわたって安定・継続して支払いが可能であるため、支払不能ではないということになります。
一方で、借金の総額が2000万円になってくると、毎月の返済額は、任意整理をしたとしても30万を優に超えるため、生活は成り立ちません。
このような場合は、支払不能が認められると思います。
要は、収入だけでなく、借金の金額によっても破産ができるかどうかは変わるため、高収入でも破産ができる場合はあります。
4 「支払不能」の判断は難しい
もっとも、収入と借金の金額で全てが決まるわけではありません。
借金の総額がそこまで大きくないとしても、給料の差押えまでされていれば支払不能は認められるでしょう。
また、高収入でも、子供が5人いて生活費が高額になりがちであれば、返済可能な余剰は少なく支払不能が認められやすくなります。
また、住宅ローンが期限の利益を喪失し一括請求を受けている状況では、任意整理で分割払いやリスケジュールを行うことはできません。
かといって、数千万円の住宅ローンを一括で払うこともできないので、支払不能ということになるでしょう。
支払不能かどうかの判断は、法的な判断になるため、一概に判断することは難しいです。
私も、メールで問合せされた内容だけで破産ができるか判断することはまず無理で、相談者の方から色々な話を聞いてみないとわからないというのが本音です。
破産するか迷ったら、まずは弁護士に相談してみましょう。


