1 令和6年の戸籍法改正と相続放棄への影響
令和6年に戸籍法が改正され、一般の方でも戸籍が取りやすくなりました。
今まで、戸籍は本籍地のある市役所でしか取得することができませんでした。
本籍地は引越しをしても変わらないため、例えば、東京都に住んでいても本籍は実家のある福島にあるということは良くあります。
こうした場合は、戸籍法の改正前は、福島の市役所に戸籍を取りに行くか、郵送で戸籍を取りに行く必要がありました。
しかし、戸籍法の改正により、どこの市役所でも戸籍を取得することができるようになりました。
相続放棄においては遠隔地の戸籍取得の難しさが、自身で相続放棄をするハードルの一つであったため、戸籍法改正により相続放棄を自身でやるハードルは下がりました。
2 兄弟姉妹、叔父叔母の戸籍は取れない
もっとも、戸籍法改正で相続放棄における弁護士の役割がなくなったわけではありません。
戸籍を取得できるのは、以下の関係の人です。
〇本人
〇配偶者
〇父母、祖父母など(直系尊属)
〇子、孫など(直系卑属)
つまり、兄弟姉妹、叔父叔母の戸籍は取ることができません。
亡くなった人に子供がおらず(相続放棄した場合も含む)、両親もなくなっている場合は、その人の兄弟姉妹や甥姪まで相続人になってしまいます。
そのため、こういったケースではいまだに自身で戸籍を取寄せるのは困難であるため、専門家に依頼する必要があり得ます。
3 相続放棄は、裁判所の手続き以外にもやることが多い
相続放棄は裁判所の手続きだけやれば完全解決というわけではありません。
亡くなった人の部屋の片づけ、遺品整理、携帯や公共料金等の契約内容の変更、車の処分、葬儀費用の支払いなどをしてしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。
一方で、これらを全て放置すると、亡くなった人の自宅の大家から問い合わせがあったり、車の移動を求められたりと対応の依頼が殺到します。
法律上は放置しても問題ない場合もありますが、相手は法律の専門家ではないため
「相続放棄といっても、こちらは部屋を片付けてもらわないと困るんだ!どうにかしろ!」
と問い合わせが止まらないことも多々あります。
また、相続放棄をしても管理責任が残る場合もあるため、相続放棄をしても放置できないこともあります。
そのため、相続放棄は裁判所の手続きさえ終われば完全解決、となることは稀です。
戸籍が取りやすくなったからと言って、安易に自分で相続放棄をしようとは思わず、やはり弁護士に相談するのが良いでしょう。