ペットと遺言

1 ペットのためにできる法的な対策

前回,ペットは,法律上は飼い主の所有物として遺産にあたり,相続の対象となるとお話ししました。

そのため,そのまま相続をしてしまうと相続人の所有物となってしまい,世話を見てくれるか不安です。

そこで,自分の死後,ペットが不幸にならないようにするための法的な対策をご紹介したいと思います。

 

2 遺言書の作成

生前の対策として遺言書は極めて有効です。

それは,遺言書は遺言を作る人の意思が絶対で,有効な遺言であれば相続人の意向に関係なく相続の方向を決定づけるからです。

 

しかし,ペットのための遺言となると,法的に有効なものとするためには工夫が必要です。

ペットはあくまで物であり,人ではないため,ペットに財産を渡すということはできません。

「飼い猫の〇〇に当面のごはん代として〇〇万円を相続させる」との遺言を作成しても無効となってしまいます。

 

また,「長男の〇〇は,飼い犬の面倒を最期までしなければならない」との文言を作成したとしても,法的に効力はありません。

あくまで,法的効力のない付言事項として,相続人に対して遺言者からのお願いをしているに留まります。

 

3 負担付き遺贈

そこで,自分の死後,ペットの面倒を誰かに見てもらうことを法的に強制するための方法として挙げられるのが負担付き遺贈です。

負担付き遺贈とは,遺言書で財産を譲る代わりに,財産をもらう人に一定の負担を課すものです。

今回でいえば,現金等の財産を譲る代わりにペットの世話という負担を課すというものです。

財産をもらった人がペットの世話を行わない場合には,所定の手続を経ると,渡した現金を返さなくてはならなくなります。

 

4 具体的な遺言書の文面

負担付き遺贈の具体的な文面案としては次のようなものが一例として考えられます。

「 第〇条 遺言者は,長男〇〇に対して,現金500万円を遺贈する。

2 長男〇〇は,前項の遺贈の負担として,遺言者の飼い猫であるルリの世話をし,ルリの死亡後は,

東京都内のペット霊園に埋葬しなければならない。                         」

※「ルリ」は猫の名前

 

5 負担付き遺贈を行う際の注意点

遺言書で譲る財産は,現金でも土地・建物などの不動産でもなんでも大丈夫です。

もっとも,譲る財産の額がペットの世話のためにかかる費用を上回るものでなければなりません。

これは,ペットの世話にかかる費用が貰った財産の金額を超えてしまう場合,法律上それ以上ペットの世話をしなくともよいからです。

不動産など,現金化しにくい財産を渡されてもペットの世話代が払えなくなってしまうおそれがあるため,できればある程度の現金を渡す方がよいでしょう。

 

またもらった人が世話をしなかったからとお金を取り上げたとしても,結局ペットの世話をしてくれる人がいなくなってしまうため,できれば信頼できる人に託すのがよいと思われます。

 

6 おわりに

以上,ペットのための相続対策の方法を一つ紹介させていただきました。

また,機会があれば他の方法も紹介していけたらと思います。

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