相続放棄をした場合、財産の相続ができなくなるため、入院給付金や介護保険料の還付などの相続に伴う金銭の受け取りはできなくなります。
しかし、未支給年金や遺族年金など一部の金銭は、相続放棄をしても受け取ることができます。
これは、遺族年金が、遺産ではないと考えられているからです。
相続放棄は、一切の遺産を受け継がないという制度であるため、その言葉のイメージから「亡くなった方に関するお金は、一切受け取ることができない」と思われがちです。
確かに、相続放棄をすると、亡くなった方の遺産については、取得ができません。
しかし、遺族年金は、亡くなった方に支給されるお金を相続しているわけではありません。収入を支えていた方が亡くなった後に、遺された遺族に対して支給される財産です。
そのため、相続放棄をしても、遺族年金の受給資格を失うことはありません。
これは、そもそも、遺族年金がどういうものかという性質とも関連しています。
たとえば妻が専業主婦で、夫の収入によって生計がなりたっているような世帯がある場合、突然夫が亡くなると、その世帯は一気に収入を失うことになります。
そうなれば、残された妻や子は、生活ができなくなる可能性があります。
そういった事態を防ぐために、残された遺族に支給されるものが、遺族年金です。
もちろん、夫が専業主夫で、妻の収入によって生計が成り立っている場合も同じです。
支給対象は、亡くなった方の収入で生計を維持していた子か、子がいる妻(夫)です。
遺族厚生年金は、亡くなった方が厚生年金に加入していた場合に、遺された遺族に支給されます。
遺族厚生年金の受給資格には、順番が定められています。
優先順位で言うと、1番が亡くなった方の妻(夫)と、亡くなった方の子どもです。2番目の優先権を持つのは、亡くなった方の両親で、3番目が孫、4番目が祖父母です。
相続の権利は、法律上、妻と両親などが同時に権利を取得します。
この点、妻が受け取る場合は両親が受け取れなくなる遺族年金は、民法上の相続の考え方とは異なってきているわけです。