法律的な縁切り

よくご相談をいただくこととして、親族と「縁を切りたい」と言われます。

家を出て行った子供に財産をあげたくない、離婚した父親と連絡を取りたくないなど、理由は様々ですが、色々と需要はあるみたいです。

しかしながら、民法に「縁を切る」という制度はありません。

・特別養子縁組をした場合

・遺言書を偽造した場合(相続人の欠格)

・被相続人に対して虐待などをした場合(相続人の廃除)

など、相続人としての資格を失うという、縁切りのような制度はありますが、いわゆる「縁を切る」という制度はありません。

なお、親を虐待した場合の相続人の廃除なども、相続人間の話合いでまとまればよいですが、それでも権利を主張する相続人がいる場合は裁判所での手続きが必要となりハードルは高いです。

具体的には、「欠格事由」がある場合、もしくは相続人から「廃除」された場合には相続人としての資格を失います。

「相続人の欠格事由」とは、相続人が被相続人に対して、ある一定の行為を行った場合(欠格事由がある場合)に、相続人としての資格を失う制度です。

具体例としては、

・遺言書を偽造したり、隠したりした場合

・詐欺・脅迫により遺言書を書かせた場合

などがあります。

(民法891条参照)

「相続人の廃除」は、家庭裁判所に申立てをし、申立てが認められることで、相続人としての資格を失わせます。

具体的には、被相続人を虐待したり、重大な侮辱をしたりした場合に認められます。

(民法892条参照)

また、養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の二つの方法があります。

その違いは、産みの親との親族関係が残るかどうかです。

普通養子縁組は、産みの親との親族関係はそのまま残るため、産みの親と養親(=養子先の親)の両方から相続をすることになります。

一方で、特別養子縁組は、産みの親との親族関係がなくなるため、産みの親が亡くなっても、そちらから相続することはできません。

このように、一般にイメージされるような「縁を切る」という制度は存在しません。

財産を渡したくないのであれば遺言書などの生前対策を、相続したくないのであれば相続放棄などを行っていくのが現実的でしょう。