相続人と連絡が取れない場合②

1 相続人から無視される場合

以前,相続人の居場所や生死すら不明な場合の調査方法をご紹介しました。

一方で、連絡先がわかっていても、メールやライン、手紙などを無視されるケースがあります。

もっとも、預金の払戻しや不動産の名義変更のために必要となる遺産分割協議書は相続人全員がサインと判子を押さなければなりません。
また、遺留分減殺請求においては、手紙を送っていても無視されている限り1年間の時効が止まらない場合もあります。
そこで今回は、このような「連絡先がわかっていても無視される場合」の対処方法をご紹介します。
2 弁護士からの連絡
まずは、弁護士から手紙を送ります。
その際にどのような手紙を送るかはケースバイケースで、決まった内容はありません。
一例として、「ご連絡をいただけない場合はやむを得ず家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをいたします。」と末尾に記載する場合もあります。
この手紙は法的な手続ではありませんが、弁護士からの連絡ということで連絡をもらえる場合は多いです。
3 遺産分割調停の申立て
手紙を送っても、返事をもらえない場合や、そもそも受け取らず手紙が戻ってきてしまう場合もあります。
この場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を提起します。
遺産分割調停とは、遺産分割の話合いを裁判所で行うものです。
調停を申し立てると、裁判所から調停期日への呼び出しがあります。
裁判所からの呼び出しと言うことで、調停に出席する人は多いですが、呼出しの強制力はないため、一応は調停にすら応じないことは可能です。
4 遺産分割審判の申立て
調停への呼出しすら無視をする場合は、遺産分割審判を申し立てます。
審判と調停の最大の違いは、話し合いではなく裁判官が遺産の分け方を決定することです。
調停はあくまで話し合いのため、相手が出席しなかったり合意ができなかったりする場合に、強制的に分け方を決めることはできません。
そして、裁判所からの手紙を受け取らず審判にも出席しない相続人がいる場合は、「書留郵便に付する送達(付郵便送達)」を行うことにより、裁判所からの手紙を受け取ったものとして,その相続人を抜きで審判手続きを行うことができるようになります。
5 無視される場合も、どこかでは解決できる
このようにして、最終的には、無視し続ける相続人がいる場合でも遺産を分けることができるようになります。
ただし,裁判所での手続を利用する必要があり,どうしても時間はかかってしまいます。
次回は、相続人が行方不明の場合の対処法を紹介したいと思います。