3ヶ月を過ぎたあとの相続放棄

1 相続放棄の期限は3ヶ月!

相続放棄は、死亡したことを知った日から3ヶ月です。

3ヶ月以内に裁判所に申立てをしなければいけません。

もっとも、この話は誰もが知ってるわけではないので、「3ヶ月を過ぎてしまったが、相続放棄ができるか」というご相談をよくいただきます。

結論から言えば、3ヶ月を過ぎても相続放棄ができることはあります。

今回はこのケースについて紹介します。

2 知らない借金が出てきたときは、3ヶ月過ぎても相続放棄ができることがある。

死亡を知ってから3ヶ月過ぎて例外的に相続放棄が認められた裁判例があります。

死亡の事実及びこれにより自己が相続人となつた事実を知つた当時、亡増治郎の相続財産が全く存在しないと信じ、そのために右各事実を知つた時から起算して三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたものであり、しかも被上告人らが本件第一審判決正本の送達を受けて本件連帯保証債務の存在を知るまでの間、これを認識することが著しく困難であつて、相続財産が全く存在しないと信ずるについて相当な理由があると認められるから、民法915条1項本文の熟慮期間は、被上告人らが本件連帯保証債務の存在を認識した昭和56年2月12日ないし同月14日から起算されるものと解すべき

(最判昭和59年4月27日民集38-6-698)

この裁判例は、昭和55年3月5日に死亡した被相続人について、約1年後の昭和56年2月26日に相続放棄の申立てをしたケースで、借金を知った時から3か月を相続放棄の期限としました。

この裁判例のポイントは、

・相続財産が全く存在しないと信じていた

・相続財産が全く存在しないと信じたことに相当な理由がある

・借金があることを知ることが著しく困難であった

の3点を理由として、死亡を知った時から3か月を過ぎた後に相続放棄を認めています。

3 放棄ができる具体例

① 離婚した父親の生活保護費の返還が来た…

両親が5歳のときに離婚してから母親と暮らしており、父親とは20年会っていなかった。市役所から父親が死んだ連絡を受けたが自分には関係ないと思って気にしていなかった。ところが、1年後に突然、100万円の生活保護費の返還を求められた。

→父親とは20年間全く会っていないため、財産が存在するなんて思っていないのは仕方がないと言えるでしょう。

そして、離婚してどこにいるかもわからない父親なので、そのように信じたことにも相当な理由があります。

そして、借金があることを予想することも難しいです。

このケースは、市役所から100万円の支払いを求められてから3か月以内であれば、相続放棄できる可能性が高いです。

② 父の友人が借用書を持ってきた!

同居していた父親が亡くなったので、預金を確認したところほとんど残っていなかった。家も借家で大した財産もないが、借金の督促が家に来たこともないので放っておいた。ところが、3年後に突然、父親の友人を名乗る人が借用書をもってきて、父に貸した300万円を返してほしいと言ってきた。借用書には父の実印が押してあり、筆跡も父のものだった。

→同居していて、預金通帳も全て手元にあるため、預金を見て財産がないと思うのは当然で、相当な理由があります。

また、銀行やクレジットカード会社から借金があると、通常は自宅に督促が届きます。

しかし、一緒に住んでいて、そのような手紙が一度も届いたことがないのであれば、借金がないと思うのも仕方がないです。

特に友人などから借りたお金は、日記にでも書いてなければ、手掛かりが全くないことも多いです。

そのため、このようなケースは相続放棄が認められる可能性があります。

4 3か月を過ぎていても、諦めずに弁護士に相談を

紹介したケース以外にも、3か月を過ぎて相続放棄ができるケースはあります。

もっとも、3か月を過ぎたケースは、裁判所のホームページにある申立書を埋めるだけでは不十分で、過去の裁判例を踏まえて事情説明書を作成したり、証拠を用意しないと難しいです。

3か月を過ぎた場合でも、早ければ早い方がいいので、まずは弁護士に相談をしてみましょう。