3か月を経過した相続放棄の解決事例

1 事案の概要

実家には、両親と兄が住んでいましたが、10年以上前に両親が亡くなり、昨年、兄が亡くなったため、実家の土地と建物が残りました。

実家の建物は古く、このまま放っておくと倒壊する恐れもあるため、取り壊しをする必要がありました。

建物を解体するとなると数百万円単位の費用がかかってしまうため、兄が亡くなったタイミングで相続放棄をしようと考えました。

しかし、法務局で土地と建物の名義を調べたところ、父と母と兄の名義がそれぞれ入っていました。

そこで、どうにか管理責任を免れるために、弁護士に相談をしました。

2 相続放棄をする場合の問題点

このケースの問題点は、兄の相続放棄をしても、実家に父と母の名義が残っているため、不動産の管理責任が残ってしまうことです。

不動産の管理責任があると、万が一、実家が倒壊して周りの住民に損害を負わせたら、それを賠償する必要があります。

しかし、父と母の相続放棄をしようにも、両親は10年以上前に亡くなっているため、相続放棄の期限である3か月を大幅に過ぎてしまっています。

そこで、10年以上前に亡くなった父と母の相続放棄をする必要があります。

3 解決方法

亡くなったことを知った時から3か月を過ぎた場合は、財産や借金の存在を知らなくても、原則として相続放棄はできません。

しかし、過去の裁判例で、いくつかの条件を満たせば、例外的に相続放棄ができる場合があります。

その条件は、次の2つです。

① 被相続人に、相続財産又は相続債務が一切ないと信じていたこと

② 相続財産や相続債務が一切ないと信じたことに相当な理由があること

つまり、今回の場合は、実家が兄の名義で両親の名義ではないと信じていたこと(①)、実家の名義が兄の名義であると信じたことに理由があること(②)が必要になります。

もっとも、相続人は、被相続人が死亡したときに財産を調査する義務があるため、単に「知りませんでした。」というだけでは「調べたらわかることなのに、調べなかった方が悪い。」ということで、相当な理由がないと裁判所が認定し相続放棄が却下されてしまいます。

そこで、実家の名義が両親のものだと知らなかったことがどれだけ仕方ないことか、説得的に説明できるかが重要になります。

今回のケースでは、

両親が亡くなったあとに、10年以上も兄が実家に暮らしていたこと

昔、実家の名義を兄の名義に変更する手続きをしたことがあること

(司法書士に任せていたため、実際には、一部の名義しか変わっていなかった)

から、実家が兄の名義であると信じたことに相当な理由があるとして相続放棄が認められました。

3か月を経過した相続放棄の解決事例2

 今回ご紹介する件は、相続放棄の期限は 年前に過ぎていましたが、かなり複雑な法律構成をしたところ、どうにか相続放棄が認められた事案です。

1 事案の概要

 父親は個人事業をしていましたが上手くいかず、銀行から2000万円以上の借金をしていました。

 7年前、父親が亡くなりましたが、その時、依頼者の方はまだ高校生でした。

 そのため、葬式や死亡手続などは母親が全て行い、依頼者の方は借金があることを教えられていませんでした。

 その後、7年経ち、母親宛で自宅に届いていた封筒を開けたところ、父の借金が2000万円以上残っており、長男である依頼者の方がその半分の1000万円を相続していることを知りました。

2 相続放棄をする場合の問題点

 この事案の問題点は、相続放棄の期限が、父親が亡くなった日から3ヶ月であることです。

 つまり、相続放棄の期限は7年前に過ぎているのです。

 その理由は以下の2つです。

① 借金を知らなくても、死亡したことを知っていれば、相続放棄の3ヶ月の期限はスタートする。

② 未成年者の場合、子供が知らなくても、親(=法定代理人)が知ったときから相続放棄の3ヶ月の期限はスタートする。

 ①については、民法で「自己のために相続の開始を知ったときから3ヶ月」と定められており、この「自己のために相続の開始を知ったとき」というのは、原則は借金の存在は知らなくても良いとされています。 

民法 915条

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

 ②については、民法で次のように定められています。

民法 第917条

 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間(相続放棄の期限)は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 そのため今回は、母親が、父親の死亡を知った7年前に相続放棄の3ヶ月の期限がスタートしてしまうのです。

3 解決方法

 今回は、相続放棄の3ヶ月の期限のスタート地点を、子供である依頼者の方が借金を知ったときにする必要があります。

 この点については、有名な裁判例があり、いくつか条件を満たせば、亡くなった人の借金を知ったときから3ヶ月以内の相続放棄を認めた先例があります。

最高裁 昭和59年4月27日判決(判例タイムズ528号81頁、判例時報1116号29頁 )
 熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知った時から起算すべきものであるが、相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識うべかりし時から起算するのが相当である。

 しかし、これだけでは②の問題点をクリアできません。

 母親が、亡くなった父親の借金を知っていたため、いずれにしろ7年前に相続放棄の期限は過ぎてしまいます。

 そこで、母親が相続放棄をしなかったこと(相続の単純承認)が利益相反に当たるとして、取消しを主張したところ、無事に相続放棄が認められました。

(本当は、不作為である単純承認が取り消せるのかといった問題など、様々な問題がありましたが、そこもどうにかなりました。)

4 3ヶ月を過ぎた相続放棄は弁護士に

 3ヶ月を過ぎたケースでも、相続放棄を認められるケースはあります。

 司法書士の先生などは、3ヶ月を過ぎた時点で「無理だから諦めた方が良い」と案内をすることも多いようですが、弁護士がちゃんと意見書を書けばそのような場合でも相続放棄できることがあります。

 3ヶ月を過ぎてしまった場合でも、まずは弁護士に相談してみてください。

 なお、このケースは、弊社の相続が詳しい弁護士にも「難しいかもしれない」と言われてはいました笑

3か月を経過した相続放棄の解決事例1

 昨年の私が行った相続放棄の件数を数えたところ、約320件でした。

 もちろん、320件の中には、死亡したことを知ってから3か月を経過した案件もかなりの数ありました。

 依頼をいただいた案件は、100%相続放棄は成功しているのですが、その中でも特に難しかった案件をいくつか紹介したいと思います。

1 3年前に死亡した父の借金の手紙を、開けずに放置していたケース

概要)

 父が、40年前に自宅を買い住宅ローンを組んだが、支払ができず自宅は競売になってしまい、借金も残ってしまった。

 そのとき、まだ息子である相談者は高校生で、住宅ローンがあることすら知らず、なぜか引っ越しになったくらいにしか考えていなかった。

 3年前に父が死亡したときにも、父宛に未払の住宅ローンの請求は届いていたが、封筒を開けなかったため借金の存在に気づけなかった。

 父死亡の3年後に、相談者宛に約8000万円の住宅ローンの支払を求める手紙が届き、相続放棄ができないか、急いで弁護士に相談した。

問題点)

 相続放棄の期限は、「自己のために相続の開始を知った時から3か月」とされています。

 3か月の期限のスタートになる「自己のために相続の開始を知った」とは、このケースでは、父親が死亡したことを知った時から3か月になります。

 問題は、借金を知った時から3か月ではないため、原則は、相続放棄の期限自体は3年前に過ぎてしまっていることです。

 このケースは、借金を知った時から3か月で相続放棄を認めた最高裁判所の裁判例に紐づけて意見書を書いたことで、借金を知った時から3か月以内の相続放棄が認められました。

2 30年以上前に死亡した祖父母の実家の固定資産税の支払を求められたケース

概要)

 30年以上前に祖父母が亡くなり、実家は祖父母名義のままだった。

 実家には、祖父母の長男(相談者から見て叔父)の夫婦が住んでいた。

 1年前に、相談者の叔父家族が亡くなったため、今頃になって相談者に固定資産税の支払の請求が来た。

問題点)

 この件は、

祖父母 死亡

     ↓ 25年後

相談者の母(長女) 死亡

    ↓ 5年後

相談者(孫) 相続放棄

と相続をしています。

 そのため、相続放棄をするのであれば、5年前に相談者の母(祖父母の長女)が相続放棄をしていなければなりませんでした。

 再転相続放棄という制度もあるのですが、その場合も、祖父母が死亡してから3か月以内に母親が死亡している必要があります。

 つまり、本来は、以下のようなスケジュールで放棄をする必要があります。

祖父母 死亡

      ↓ 3か月以内

相談者の母(長女) 死亡

      ↓ 3か月以内

相談者(孫) 相続放棄

 2か所で3か月の期限を、25年、5年と大幅に過ぎてしまっています

 このケースも、実家については居住している長男の所有物だと思っていたことを理由に、相続放棄が認められました。

 このケースは、退職した裁判官にも「無理だから諦めた方がいい」と言われていましたが、何とか解決できました。

 司法書士や専門でない弁護士はまず断る案件でしょうが、弁護士が意見書を書くことでどうにかなることもある、いい例かなとは思います。

任意整理と利息カット

1 任意整理とは

借金の任意整理とは、貸金業者などと弁護士を通じて交渉をすることで、分割払いにする手続きです。

たとえば、クレジットカードをリボ払いにしていたところ、借金の残高が240万円になってしまい、今月は20万円支払わなければいけなくなってしまったとします。

こういった場合でも、任意整理が上手く行けば、毎月4万円を5年間(=60回)支払っていけばよくなる可能性があります。

自己破産や個人再生などの、裁判所を利用する「法的整理」より、柔軟に簡素な手続きで借金整理をできるのが任意整理の魅力です。

2 任意整理では将来の利息カットができる可能性がある

任意整理のメリットは、毎月の支払額を抑えられることです。

これに加えて、任意整理の大きなメリットとして、将来の利息がカットできる場合があります。

利息カットというとイメージしづらいですが、以下の図をみるとわかりやすいです。

ここで、よく見ていただきたいのが、最初の月は4万円払っているのに、そのうちの3万円が利息の支払いで、借金の返済は1万円しかされていません。

そして、240万円の支払いが終わるころには、206万3761円の利息を追加で払っています。

これをもし、将来利息のカットができると、4万円支払えば、借金が4万円減っています。

そして、240万円を支払終わるまでに240万円を支払えばいいため、利息の約200万円分だけ得をしていることになります。

また、返済期間も112か月から60か月と約半分になっています。

これが、将来利息カットの効果で、イメージはしづらいですが効果絶大です。

任意整理は、「自己破産などと違って借金は減らない手続き」と思われがちですが、実際には利息カットにより借金の総支払額が大幅に減る可能性があります。

返済の終わりが見えないと思ったら、まずは弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

弁護士法人心でも任意整理に関する相談を無料で承っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

民法改正と借金の消滅時効

1 時効の期間は、借入先や借り入れた時期により年数は変わる。

消滅時効は、現在の民法では、原則は返済期限から5年とされています。

もっとも、これは、令和2年4月1日に改正された民法で、改正前は10年とされていました。

また、この時効には特例がたくさんあり、借金において特に関係があるのが商法の商事消滅時効と裁判を起こされた場合です。

そのため、いくつか場合分けをして紹介をしたいと思います。

2 時効の年数

⑴ 令和2年4月1日以降に借りた借金:5年

借金を借りたときの民法が適用されるため、民法改正後に借りた借金は返済期限が来てから5年で時効になります。

また、返済期限を決めずに借りた借金は、返済の請求を受けたときから5年の時効がスタートします。

⑵ 令和2年4月1日以前に借りた借金:10年

民法改正前は、時効の一般規定は10年とされていました。

そのため、これより前に借りた借金は10年で時効になります。

なお、次で説明しますが、10年になるのは、家族や友人などに借りた借金で、金融業者に借りた借金は5年です。

⑶ 銀行や貸金業者から借りた借金:5年

旧民法の10年というのは一般原則で、銀行や貸金業者から借りた借金は商法の特別規定で消滅時効が5年になります。

商法 第522条

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合 を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。

銀行や貸金業者から借金をする行為は商行為に当たるため、この条文が適用されます。

なお、民法改正により原則が5年になったため、この条文は現在では削除されています。

⑷ 裁判を起こされた場合:10年

今まで説明したとおり、基本的には借金の時効は5年です。

ただし、裁判を起こされた場合、特則で、敗訴判決が出て判決が確定してから10年が時効になります。

民法 第169条

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

裁判は欠席すると、欠席のまま敗訴判決が出てしまうため、5年で時効だと思っていたら知らない間に裁判が起こされていて時効になっていなかったという可能性はあり得ます。

3 民法改正で変わったのは、友人・知人からの借入

結局のところ、民法改正で変わったのは、友人知人など(≠貸金業者などの「商人」)から借りた借金が、

 令和2年4月1日以前:10年

 令和2年4月1日以降:5年

に変更になった点です。

そのほかの部分はあまり変わってはおらず、借金の多くは貸金業者が中心だと思うので、あまり民法改正が影響してくる場面は少ないでしょう。

時効は、時効の中断などややこしい問題もあるので、まずは弁護士に相談してみましょう。

個人再生の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

自己破産の免責

1 免責により借金がなくなる。

自己破産は、免責許可決定が出ると手続きが終了します。

この免責許可決定が出ることにより、借金を請求されることがなくなります。

そのため、自己破産は、免責を受けるための手続きと言っても良いでしょう。

免責は、法律で決められた免責不許可事由(破産法252条1項各号)がなければ、認められることになっています。

また、仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判官の裁量により免責を受けることができます、

2 借金がなくならない場合(免責不許可事由)

⑴ 不当な財団価値減少行為

支払不能後(借金が返せなくなった後)に、自身の財産を不当に消費、贈与、安価での売却をした場合です。

例えば、破産すると車を失ってしまう場合に、親族や知人に、車を相場の50万円ではなく、10万円など極めて安い金額で売却する行為がこれに当たります。

また、財産隠しなども該当します。

⑵ 不当な債務負担行為・不利益処分

破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で借金をした場合や、クレジットカードで購入して安価で売却した場合です。

例えば、借金が返せなくなって、闇金で借りてしまう場合があります。

また、借金を返すために、クレジットカードでカメラやスマートフォンを購入した後、その購入物を原価より安く売却して現金を得る行為も該当します。(いわゆる「現金化」)

⑶ 不当な偏波弁済

偏波弁済(「へんぱべんさい」)とは、一部の借金だけ返して、他の借金を返さないなど、借金に差をつけて返済することです。

例えば、クレジットカードや消費者ローンは返さずに、親族や知人の借金だけを返す行為がこれに当たります。

また、車を残すために、車のリース料金だけ支払う場合も該当します。

⑷ 浪費・賭博等による財産減少行為・債務負担行為

「浪費」とは、破産者の地位、職業、収入、及び財産状態に比して通常の程度を超えた支出をすることを言います。

自身の収入で返済できない金額の買い物をクレジットカードでしてしまう場合です。

「賭博」には、競馬・パチンコなどのいわゆるギャンブルです。

また、株の売買やFX取引等、投機的な取引も、この項目に該当します。

⑸ 詐術による信用取引

収入などを偽ってかりいれることは、免責不許可事由にあたります。

また、積極的に嘘をついた場合だけでなく、誤解させるような表現をしたり、返済可能性がないことなどを黙って借り入れることも、詐術に当たる可能性があります。

⑹ 説明義務違反

裁判所による調査に対して説明を拒んだり嘘の説明をする場合や、そのほかの破産法が定める義務に違反する場合です。

仮に、免責不許可事由がある場合でも、裁判所に対して隠し事をしたり嘘をついたりすると余計に状況が悪化するため、弁護士には正直に話して、裁判所への説明を考えていくのが良いでしょう。

3 免責不許可事由があっても、免責される場合(裁量免責)

仮に、免責不許可事由があっても、裁判官の裁量で免責となり、借金がなくなる場合があります。

裁量免責になるかは、次のような事情が考慮されます。

⑴ 浪費、ギャンブル等がある場合

・使った金額

・浪費、ギャンブルをしていた期間

・浪費、ギャンブルをしていた時期

・破産手続きに誠実に協力したか

⑵ 詐術による信用取引の場合

・嘘をついて借り入れた額

・悪質性

・債権者の免責意見の有無

・破産手続きに誠実に協力したか

⑶ 裁判所への説明義務違反

・説明義務違反の内容、程度

・説明義務違反が破産手続きに与えた影響

4 破産してもなくならないもの(非免責債権)

破産をしても、免責されない(なくならない)借金等があります。

これを非免責債権と言います。

具体的には、次のものがあげられます。

・税金等

・悪意の不法行為に基づく損害賠償(人を殴った場合などの治療費、慰謝料等)

・故意、重過失による人の生命、身体を害する不法行為に基づく損害賠償(交通事故でけがを負わせた場合の治療費、慰謝料等)

・養育費や婚姻費用等

・従業員の給料等

・故意に債権者名簿に記載しなかった借金

5 まずは、弁護士に相談

・罰金

破産をする場合、大なり小なり免責不許可事由が疑われる事情は出てきます。

しかし、弁護士による説明などによっては、免責になることは珍しくないため、まずは、弁護士に話してみてください。

個人再生をする場合の流れ

1 弁護士との初回相談

まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。

初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。

2 契約、受任通知の送付

相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。

(契約までの相談は、初回相談で契約する場合もあれば、何回か打ち合わせをすることもあります。)

契約後、受任通知というものを、借入先全てに送ります。

受任通知を送ると、各社からの督促はじきに止まってきます。

3 資料収集、家計簿の作成

契約後は、申立書の準備を進めます。

個人再生の申立てには、過去2年分の通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書など、添付する必要があります。

また、申立直前3か月の家計簿を提出する必要があります。

資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていくので、ご安心ください。

4 申立書の作成

資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。

5 個人再生の申立

資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を裁判所に提出します。

6 申立書の補正

裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。

裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。

7 個人再生手続きの開始(開始決定)

申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。

8 債権の届け出・異議申述

個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。

債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。

9 再生計画案の作成

確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。

借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か所有している財産の総額のどちらか大きい方の金額にまで減額できます。

また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。

10 再生計画案の決議

再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。

小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。

給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。

11 再生計画の認可・不認可

再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。

認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。

12 手続き完了・返済開始

手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。

返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。

相続登記の義務化について

1 令和6年4月1日からは、不動産の名義変更をしないと罰金の可能性

不動産登記法が改正され、来年の4月から施行されます。

今回の改正の目玉は、相続登記の3年以内の申請の義務化で、違反すると、10万円以下の過料(罰金のようなものです。)が発生する可能性もあります。

今までは、全く問題なかったところが、義務化され罰金もあるということで衝撃は大きいかとは思います。

制度の概要について、紹介します。

2 何が変わった?何をすればいい?

今までは、死亡した人の名義の不動産は、名義を書き換えなくとも、何も罰則はありませんでした。

そのため、先代、先々代の名義のまま放置されていることは珍しくありませんでした。

それが、これからは、名義変更をしておかないと罰則が科されるようになりました。

具体的には、死亡してから3年以内に

①相続登記

②相続人申告登記

のどちらかを行わなければいけません。

3 相続登記と相続人申告登記の違い

①相続登記

相続登記は、不動産の所有者が死亡し、相続する人が所有者が決まったら、その新所有者に名義変更をすることです。

「相続登記」という単語は法律には書いておらず、手続的には「所有権移転登記手続」という名前にはなります。

相続登記をするためには、次のような書類が必要です。

遺言がある場合

・遺言書

・死亡した人の戸籍謄本、住民票

・相続する人の戸籍謄本、住民票

・固定資産評価証明書、固定資産税納税通知書

・申請者の印鑑登録証明書

遺言がない場合

・遺産分割協議書

・死亡した人の出生~死亡までの全ての戸籍謄本

・死亡した人の住民票

・相続人全員の戸籍謄本・住民票

・固定資産評価証明書、固定資産税納税通知書

・相続人全員の印鑑登録証明書

②相続人申告登記

相続人申告登記は、今回の法律改正で新たに作られた制度です。

相続登記は、遺言書があるか、相続人全員が話し合って1枚の遺産分割協議に実印を押すかしないといけないので、3年以内にできない可能性があります。

そういった場合に、暫定的に行う登記が相続人申告登記です。

法務局の登記簿には、所有者が死亡したこと、相続人申告登記をした人の氏名・住所が記載されます。

必要な書類は、次のとおりです。

・申出をする相続人が、死亡した人(登記名義人)の相続人であることがわかる戸籍謄本等

4 いつまでに申請が必要か

相続登記もしくは相続人申告登記の期限は、相続の開始があったことを知った時から3年です。

つまり、原則は、死亡したことを知った時から3年以内に申告をする必要があります。

遺言があるか、3年以内に遺産分割協議が終わる場合には、相続登記を行います。

また、3年以内に遺産分割協議が終わらない場合には、とりあえずは相続人申告登記をしておけば罰金の心配はありません。

なお、令和6年4月1日より前に死亡している場合は、令和6年4月1日から3年後、すなわち令和9年(2027年)4月1日までが期限となります。

今まで名義変更を放っておいた人も、令和9年(2027年)4月1日までに全ての不動産について行う必要があり、一斉に期限が来てしまうので注意が必要です。

両親、祖父母が土地を持っていたけれど、サインや相続の手続きなどをした覚えがないという人は、まずは弁護士に相談した方が良いでしょう。

相続放棄を弁護士に依頼するメリット

1 そもそも相続放棄は弁護士に依頼すべき?

インターネットで何でも調べられるご時世、相続放棄も、弁護士に依頼しなくても、調べれば自身でできてしまうようにも思えます。

もっとも、インターネットで調べてわかることは法律の一部だけで、本当に注意すべき点はホームページに書いていないことだったりします。

そこで、弁護士に依頼するメリットをいくつか紹介したいと思います。

2 1度きりの相続放棄は失敗できない

相続放棄の手続は、一度申立をして却下されてしまうと、それを覆すのは至難の業です。

「3ヶ月の期限を過ぎてしまう」「裁判所からの問合せの対応を間違えてしまう」など、ご本人で手続きをして失敗してしまうケースは多々あります。

私も、ご本人が申立されて相続放棄が却下されてしまった後に相談を受けたこともありますが、その時点ではもう却下を覆すことはできない状況でした。

裁判所に申し立てる前に相談をいただいていればどうにかできたケースだったので残念でした。

弁護士に依頼すれば、本当なら認められるはずの相続放棄をミスで失敗してしまうということはないのは、メリットの一つでしょう。

3 弁護士に任せっきりにできる

相続放棄を自身で行うと、申立の準備・資料集め・裁判所からの問合せへの対応など、全て自身で対応しなければなりません。

(ご家族の方が代わりに対応することもできません。)

戸籍謄本などの資料を、市役所・区役所が開いている平日の午後5時までに集めるのは、お仕事をされている方ですと中々大変です。

また、本籍地が住んでる場所から遠くにある場合ですと、取り寄せることになり一苦労です。

また、申立書の書き方や裁判所からの問合せの回答を間違えてしまうと相続放棄できなくなってしまうこともあります。

相続放棄が終わるまで、本当に認められるか不安ばかりというのも精神的に辛いものがあります。

この点、弁護士に依頼すれば、これらの面倒事を任せられるので、あとは終わるまで待つだけで精神的にも楽です。

4 まずは弁護士に相談を

相続放棄の相談をしていると、本人は問題だと思っていなかったことが、弁護士からすると大問題で、相談していただいて良かったなんてこともよくあります。

手続も裁判所の手続きとなり大変ですので、まずは弁護士に無料相談をしてみるのが良いかとは思います。

横浜で相続放棄をお考えの方は、こちらをご覧ください。

自己破産、個人再生に領収書は必要?

1 自己破産、個人再生ではお金の使い途を審査される。

 自己破産や個人再生は、「お金を借りてしまったけれど、どうしても返済ができないので、裁判所の審査のもとで借金を減らす」という手続です。

 そのため、過去に浪費やギャンブルをしていないかなどお金の使い途は、裁判所の審査の対象となります。

 また、自己破産は、いま手元にある財産は(自由財産を残して)返済に充てて、残った借金をゼロにします。

 個人再生は、手持ちの財産の総額まで借金を減らす手続です。

 したがって、自分の財産を減らす行為は、債権者への返済金額を減らすことに繋がるので、厳しく審査されます。

2 領収書が必要な理由

 自己破産や個人再生では、過去から申立前まで、無駄遣いしていないかをチェックされます。

 そのため、領収書で無駄遣いをしていないことを証明する必要があるのです。

 仮に、使い途を説明できないと、使途不明金ということで無駄遣いと同視されてしまう可能性もあります。

 使途不明金となってしまうと、自己破産の場合は使途不明金の金額だけ裁判所に納めたり(財団組入れ)、個人再生の場合は将来の返済額を増やされたり(清算価値の上乗せ)してしまう可能性があります。

 このため、領収書が必要になってきます。

3 領収書が必須の場面

① ライフラインの領収書

 自己破産、個人再生の必要書類に家計簿があります。

 毎月の収入と出費を記録して家計簿を作り、裁判所への申立書と一緒に提出します。

 この家計簿に書く、家賃、水道光熱費、駐車場代、保険料などは1円単位で正確に記入し、領収書を添付します。

 領収書がないと、必要書類が足りないということで、そもそも自己破産や個人再生の審査をしてもらえません。

 そのため、家賃、水道光熱費、駐車場代、保険料などの領収書は必須のため、捨てないようにしてください。

② 高額な出費をした場合

 自己破産や個人再生では、無駄遣いを厳しく審査されます。

 領収書がないと、無駄遣いではない場合でも、使途不明金ということでその分だけ弁償しなければならない場合まであります。

 また、浪費は免責不許可事由として、破産が認められなくなる理由の一つです。

 そのため、高額な出費をした場合は、必ず領収書を残しておくようにしましょう。

4 領収書がいらない場合

① ライフラインの支払を口座引落などで支払っている場合

 口座引落や決済サービスで家賃や水道光熱費を支払っている場合は、領収書は不要です。

 口座引落の場合は通帳のコピー、決済サービスの場合は利用明細やWEBページのスクリーンショットなどが代わりに必要になります。

 ただし、携帯料金などが金額が高額になる場合は、領収書や支払明細の提出を求められることもあるので注意が必要です。

② 食費、日用品などの生活費

 毎月作成する家計簿には、食費や日用品の購入費を記入する欄があります。

 この欄は月ごとの合計額を記入しますが、1円単位に正確である必要はなく、ある程度は丸めて書いても大丈夫です。

 食費のレシートを何十枚も集める必要などはないです。

 ただし、通帳の出金額とズレがある場合や毎月の合計額が高額になる場合は、領収書などで説明が必要になります。

5 まずは弁護士に相談を

 領収書が必要かどうかは、ケースバイケースです。

 「領収書がないから破産できない」といったことはなく、弁護士と相談しながら集めていけばいい場合も多いです。

 まずは一人で悩まず相談をしてみましょう。

自己破産・個人再生の必要資料

 自己破産・個人再生など、裁判所を使った手続きを行う場合は、資料集めが一つのハードルになります。

 実際には、弁護士と相談しながら資料を集めていくため、最初から全てを完璧に揃えておく必要はなく、まずは気軽に相談をしてみることをお勧めします。

1 直近2年分の通帳

 持っている全ての通帳のコピーが必要になります。

 WEB通帳やアプリの場合は、印刷をしたもので大丈夫です。

 また、通帳をなくしてしまっている場合は、銀行の窓口で過去の履歴を発行することができます。

 何年間も一切使っていない0円の口座でも、口座を解約していない場合は提出対象になる点は、注意が必要です。

 また、長期間記帳をしていない通帳は「おまとめ記帳」といって、何件かの取引が合算した金額になっています。

 「おまとめ記帳」になっている期間は、銀行の窓口で履歴を別で取寄せる必要があります。

2 家計簿

 直近1~3か月の家計簿を作成して提出する必要があります。

 書式は、裁判所の書式があります。

 弁護士に依頼してから申立までに数か月程度の準備期間があるため、その間に作ることになります。

 そのため、弁護士に相談する前に家計簿はなくて大丈夫です。

3 毎月固定の生活費(ライフライン)の領収書のコピー

 家賃・ガス・水道・電気・通信(電話代)費・保険料等の直近1~3か月の領収書のコピーが必要になります。

 口座引き落としの場合は、通帳のコピーで大丈夫です。

 また、WEBやアプリで利用明細が出る場合は、画面を印刷したものやスクリーンショットでも大丈夫です。

 これらの領収書も、弁護士に依頼してから申立てまでの準備期間に用意するため、今までの分を捨ててしまっていても心配はありません。

4 給与明細のコピー

 自己破産・個人再生をする人の給与明細はもちろん、同居している人の給与明細も必要となります。

 生計を別にしている場合、不要でない場合でも、同居している場合は必要となってきます。

5 年金、児童手当などの受給者証のコピー

 児童手当、年金、生活保護、失業保険等の国や地方自治体から給付を受けてる場合は、その受給者証や受給金額がわかる資料のコピーが必要になります。

 証明書は、はがきなどが送られてきている場合や、窓口で発行が必要な場合があります。

6 賃貸借契約書のコピー

 住んでいる家の契約書のコピーが必要になります。

 契約が数年ごとに更新されてる場合は、更新されている最新のものが必要になります。

 また、更新契約の場合は、貸主・借主・毎月の家賃・敷金が省略されていることがあるため、その場合は、一番最初の契約書(原契約)が必要になります。

7 不動産の査定書・登記簿等

 持ち家に住んでいる場合は、今売った時の金額を評価してもらった査定書が必要になります。

 方法としては、インターネットで不動産会社に査定する方法や、不動産屋の窓口で「この不動産売った時の値段を教えてください」など聞いていただく方法があります。

 査定書は2~3社からとることになります。

 注意点としては、一般の顧客に売った場合と不動産会社が買い取る場合で金額が違うので、一般の顧客に売った場合の査定書を作ってもらう必要があります。

8 車の査定書・車検証

 車やバイクも査定書が2~3社分必要になります。

 不動産と違い、正式に査定書を作ってくれないケースも多いです。

 その場合は、中古買取業者の担当者の名刺の裏に、口頭で教えてもらった金額をメモしておくことでも代用できます。

9 直近2年分の源泉徴収票のコピー、課税証明書の原本

10 保険証券のコピー・解約返戻金計算書

 保険は、生命保険・医療保険・火災保険・自動車の任意保険・自賠責保険などあらゆる保険が対象となります。

 また、保険を解約したときに、いくらお金(解約返戻金)が戻ってくるかを計算した書類も必要となります。

 解約返戻金計算書は、毎年手紙が来ているなどしない場合、最初から手元にないことも多いので、その場合は、保険会社に問い合わせることになります。

生活保護を受けていた場合の相続放棄

1 財産が残っていないことが多い

 生活保護を受けるには、収入が最低生活費以下であること、保有資産が一定以下であることなどの条件があります。

 そのため、亡くなった時点でプラスの財産が残っている可能性は低いです。

 相続をしても、マイナスになってしまうことが多いため、相続放棄をした方がいいケースが多いです。

2 数か月経ってから請求が来ることがある

 「借金がないから相続放棄しなくても大丈夫だろう」と放っておくと、数か月してから市役所などから税金や保険料の請求が来てしまうこともあります。

 未払の住民税や水道料金などは、亡くなってすぐ相続人に請求は来ないです。

 独り暮らしで亡くなった場合は、発見後、市役所等が相続人の住所を調査してから、その後に請求書を送ってきます。

 請求書が死亡してから半年、1年経ってに届くことは珍しくありません。

 相続放棄は、亡くなったことを知った日から3か月以内に行うことが原則であるため、請求書が届いてから相続放棄をしても認められないことが多いです。

 そのため、相続人に請求が来ていなくとも、相続放棄をしておくことをお勧めします。

3 生活保護費の返還を求められることも

 生活保護を受けていた方の場合、相続人が、数百万円の生活保護費の返還を求められることがあります。

 生活保護を受けるには、資産が一定以下でなければならず、持ち家がある場合など資産がある場合は、原則として生活保護を受けられません。

 しかし、持ち家を売却して引っ越しをするとかえって費用が掛かってしまう場合や、賃貸物件が借りられない場合は、例外的に持ち家を売却せずに生活保護を受けられることがあります。

 この場合は、生活保護を受けている方が亡くなった後に、受け取った生活保護費を返還しなければいけなくなることがあります。

 生活保護費の返還額は、持ち家の売却金額になるため、多くは数百万円になってきます。

4 生活保護を受けている方の相続は放棄するべき?

 そもそも、相続は、

① 既にわかっているプラスの財産があるとき

② 借金がないことが確実な場合

のどちらかの場合に行うべきで、それ以外の場合は、相続放棄をした方が良いケースがほとんどです。

 しかし、

「生活保護を受けている」

=プラスの財産はまずなく(≠①)、親戚の支援を受けられなかった結果として生活保護になっているため財産状況を知っている人がほとんどいません(=②)。

 そのため、生活保護を受けている方の相続は、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多く、相続をすると赤字になってしまうケースが多いです。

 そのため、費用をかけてでも速やかに相続放棄をした方が良いケースが多いです。

 

相続土地国庫帰属制度はあまり役に立たない?

 令和5年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度ですが、近年ニュースでもよく取り上げられる「相続空き家問題」などを法律で解決してくれる画期的な制度に聞こえます。

 しかし、制度の中身を見ていくと、おそらくあまり役には立ちそうもありません・・・

1 相続土地国庫帰属制度とは?

 相続土地国庫帰属制度とは、その名のとおり、相続で取得した土地を国庫に帰属、すなわち国の物にしてしまう制度です。

 国のものにしてしまうということは、今後、草刈りなどの管理や固定資産税の支払いなどをしなくてよくなるということです。

 法務省のHPでも、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由が挙げられています。

 こういった土地が放置されると、一応は他人の土地ということで国すらも手が付けられなくなってしまうので、それを解消しようという制度です。

 これだけ聞くと確かに便利そうな制度です。

2 そもそも、なぜ土地を手放したい?

 管理が大変であれば、売ってお金に換えてしまえば終わりです。

 それができないのは、次のような理由があるからです。

⑴ 価値のない土地で費用の方が高く赤字になる。

 東京の都心の土地であれば、一戸建てで1億円を超えることも珍しくありません。

 しかし、地方の土地は、土地の価値が100万円に対し、空き家の解体費用が400万円なんてことは珍しくありません。

 また、土地に値段がつけばいい方で、いわゆる田畑や山林などは、そもそも価値がなく買い手すら見つかりません。

 そのため、売ろうにも、赤字になってしまうため売れないのです。

⑵ 相続放棄をしたくても、管理責任が残ってしまう。

 手放すだけであれば、既に相続放棄という便利な制度があります。

 しかし、相続放棄は、放棄した後も管理責任が残ってしまいます。

 空き家を相続放棄して放置してしまうと、倒壊したときの賠償責任が、ということもありえます。

 相続して空き家を解体しようにも、名前も連絡先も知らない相続人がいて解体ができない。

 一方で、相続放棄をして相続財産管理人を立てようにも、弁護士費用や裁判所への予納金で100万円単位でお金が必要とジレンマに陥ってしまうのです。

3 相続国庫土地帰属制度は役に立つ?

 では、今回の制度は、今までの「赤字になる」「空き家の解体ができない」といった問題点を解決できるのかというと、できません。

⑴ 10年分の管理費を支払う必要

 まず、この制度は、申請の際に10年分の管理費を納めなければなりません。

 しかし、「お金がかかるから」「赤字になるから」という理由で手放せない人のために作られた制度なのに、結局お金がかかるので本末転倒です。

 お金がかかるなら、国に寄付せずとも、二束三文でも売った方がまだマシというものです。

⑵ 面倒な土地は引き取ってもらえない。

 この制度は、なんでも引き取ってくれるわけではありません。

 引き取れない土地としては、次のようなものがあります。

【引き取ることができない土地の要件の概要】

・ 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)

 A 建物がある土地
 B 担保権や使用収益権が設定されている土地
 C 他人の利用が予定されている土地
 D 土壌汚染されている土地
 E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
 

・ 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)

 A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
 B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
 C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
 D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
 E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

 こちらを見てわかるとおり、建物が立っていると引き取ってもらえません。

 また、山林などの価値のない土地も引き取ってもらえません。

 「空き家を解体できない」「山林などは買い手が見つからない」という理由で土地が放置されるのに、この制度は、そういった土地を対象外にしているのです。

4 新たに法律ができるのを待つしかない。

 今回の制度で対象になる土地は、すぐにでも建物を建てて有効利用できるような価値のある土地に限られており、そのような土地であればそもそも売ってお金にしてしまいます。

 売ればお金になる土地を、10年分の管理費を払って国に寄付する人はいないため、今回の制度はおそらく利用が進まなさそうです。

 費用面を税金でカバーするような制度や、所有者の同意がなくても価値のない空き家は取り壊しができるような制度など、今の日本の法律ではできないことを可能にする制度ができないと抜本的な解決はまだ先になりそうです。

相続土地国庫帰属制度について

1 概要

 相続等で土地を取得した人が、法務大臣に対して申請をすることで、土地を国の物にしてもらうことができます。

 要は、いらない土地を国に寄付することができます。

 令和5年4月27日に始まった制度で、相続した空き家が放置される社会門題が解決するのではないかとニュースでもよく取り上げられていました。

 空き家問題については、現行の日本の法律では制度上解決できないものでしたが、今回新たに法律が作られたことにより少しは前に進むかもしれません。

2 手続きの流れ

 手続きの流れは次のとおりです。

⑴ 法務大臣に対する申請

⑵ 法務大臣による審査

⑶ 負担金の納付

⑷ 国庫帰属(手続完了)

 どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではなく、法務局の審査を通過して、初めて国に寄付することができます。

3 申請できる人

 申請できるのは、「相続又は相続人に対する遺贈によって土地を取得した人」です。

 相続以外で土地を取得した場合は、この制度は使えません。

 また、相続人以外の人が受け取った場合もこの制度は利用できません。

 子がいる場合に、遺言で全財産を受け取った兄弟が要らない土地だけを寄付するといったことはできません。

 なお、土地を一人で全部所有していなくても、共有者の一人だけが寄付するといったことも可能です。

4 申請先

 申請先は、帰属の承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)です。

 法務局には、本局と支局・出張所がありますが、取り扱いがあるのは本局のみです。

5 引き取ることができない土地

 対象となる土地については、どんな土地でもいいわけではなく、要件があります。

 細かく見ていくとややこしいですが、要は「建物のない綺麗な更地」です。

【引き取ることができない土地の要件の概要】

(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)

 A 建物がある土地

   空き家は取り壊してからでないと引き取ってもらえません。
 B 担保権や使用収益権が設定されている土地

   購入したときの抵当権がついていると、利用できません。
 C 他人の利用が予定されている土地

   私道など、他人が利用している土地は対象外となります。
 D 土壌汚染されている土地

   工場跡地などは、調査の結果土壌汚染がされていることがあります。
 E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

   土地の境界が、過去の測量などで、隣地所有者との間で同意されている必要があります。

   境界がはっきりしていない場合、所有者と隣地の人全員で境界を確定してから申請します。
 

 (2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)

 A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

   崖の上にある土地などは、崖崩れの危険があるため、対象外です。

   また、土地が傾いている場合は、建築の際に大規模な工事が必要になるため対象外です。
 B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

   建物とまでは言えなくとも、倉庫やカーポートなどがある場合は、撤去をする必要があります。

   また、山林だと木が生えている場合も対象外です。

 C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
   地下には、過去に建物を解体したときの廃棄物が埋められていることがあります。

   また、地下に井戸がある場合も撤去の必要があります。

 D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

   建物や木の枝などが他人の土地に越境している場合、枝を切る切らないで揉めている場合などは対象外です。

 E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

6 審査手数料

14,000円

 

お墓と相続

1 法律における「お墓」

相続の相談において、お墓をどうするべきか聞かれることは少なくありません。

お墓の引継ぎ先も法律で定められていますが、ここで言う「お墓」は法的には「祭祀財産」の一つとされ、次のようなものを指します。

①系譜:家系図などのこと

②祭具:位牌、仏壇などの祭祀、礼拝に用いられるもの

③墳墓:墓石、墓牌など、遺骨や遺体を葬っている設備

2 お墓は遺産分割できない

お墓を始めとする「祭祀財産」は,民法897条により祖先の「祭祀の主宰者」に帰属すると定められているため,遺産分割協議で誰が引継ぐかを決めるものではありません。

そのため,遺産分割前であっても,お墓の名義変更を行うことは可能となります。

名義変更の方法につきましては,お墓ごとに異なるため,お墓の管理者の方へお問い合わせいただくのが良いでしょう。

また,「祭祀財産」は遺産とはならないため,これを引き継いだ人が他の相続人より相続の取り分が少なくなることはありません。

3 お墓を引継ぐ人の決め方

お墓を引き継ぐこととなる「祭祀の主宰者」は次の順番で決まります。

① 被相続人の指定

② 慣習

③ 家庭裁判所の審判

したがって,亡くなった方が遺言などによりお墓の引き継ぐ人を決めていた場合は,その人がお墓を引き継いでいくこととなります。

そして,遺言等がない場合は,慣習により引き継ぐ人が決まることとなります。

この慣習が明らかでないときは,裁判所に申し立てることにより審判で決定されることとなります。

4 遺骨の引継先

遺骨については最高裁判所の判例において「慣習上の祭祀主宰者に遺骨が帰属する。」とされているため,先ほど述べたお墓を引き継ぐ「祭祀承継者」が一緒に引き継ぐこととなります。

5 お墓・遺骨と相続放棄

お墓や遺骨についても,相続財産とはなりません。

そのため,遺骨を引き取ってしまったとしても,相続放棄できなくなることはありません。

また,お墓の名義変更も相続放棄と関係なく行うことはできます。

6 困ったら弁護士へ

お墓の問題のみが問題となるケースは少なく、大抵は相続問題とセットです。

そのため、お墓の件でお悩みの場合、まずは、弁護士に相談をしてみるのが良いでしょう。

空家問題

 近年ニュースで問題となっているものとして、空き家問題があります。

 この問題の根本的な原因は、日本の法律制度にあります。

 相続した空き家を売却や解体するためには、日本の法律上、空き家をどうするのかについて、相続人全員で合意する必要があります。

 しかし、今までは名義変更が義務化されていなかったため、家の名義が祖父や曾祖父といったことは珍しくありません。

 そのため、名義変更しようにも、誰が相続人かわからないといった事態が発生しています。

 また、連絡が取れても、一人でも反対をする人がいると、空き家の解体や売却は不可能です。

 そのため、そのまま空き家が放置されてしまうのです。

 また、相続放棄をしても、空き家の管理責任は残ります。

 相続放棄をすると、遺産の所有権自体は失いますが、遺産を管理する責任は残ります。

 空き家は、そのまま放置すると、動物が住み着いたり、建物が倒壊するといった可能性が出てくるため、非常に危険です。もし、空き家が原因で、誰かに損害が発生した場合は、損害賠償請求をされる可能性があります。

 相続放棄をして空き家の管理責任から免れるためには、最終的には、相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てる必要があります。

 しかし、この相続財産管理人の選任が大変なうえ、申立のための弁護士費用や裁判所への予納金などで数十万円単位のお金がかかってしまいます。

 この手続きの煩雑さや費用の面も、空き家が放置されてしまう理由の一つです。

 

 空き家になった不動産を相続して、しかも特に活用方法がない場合は、税金だけが発生する「負の財産」になってしまいます。

 税金を支払うだけになるくらいであれば、すぐに売った方がメリットがあります。

 一定の条件を満たせば、売却時の税金を安くできる可能性があるため、税理士に相談することをお勧めします。

 ただし、相続した空き家の建築時期や、売却価格などについて条件があります。

 また、この特例が使えるのは、相続開始から3年以内であるため、相続した空き家を売却するのであれば、できる限り早くに売却手続きを行う必要があります。

法律的な縁切り

よくご相談をいただくこととして、親族と「縁を切りたい」と言われます。

家を出て行った子供に財産をあげたくない、離婚した父親と連絡を取りたくないなど、理由は様々ですが、色々と需要はあるみたいです。

しかしながら、民法に「縁を切る」という制度はありません。

・特別養子縁組をした場合

・遺言書を偽造した場合(相続人の欠格)

・被相続人に対して虐待などをした場合(相続人の廃除)

など、相続人としての資格を失うという、縁切りのような制度はありますが、いわゆる「縁を切る」という制度はありません。

なお、親を虐待した場合の相続人の廃除なども、相続人間の話合いでまとまればよいですが、それでも権利を主張する相続人がいる場合は裁判所での手続きが必要となりハードルは高いです。

具体的には、「欠格事由」がある場合、もしくは相続人から「廃除」された場合には相続人としての資格を失います。

「相続人の欠格事由」とは、相続人が被相続人に対して、ある一定の行為を行った場合(欠格事由がある場合)に、相続人としての資格を失う制度です。

具体例としては、

・遺言書を偽造したり、隠したりした場合

・詐欺・脅迫により遺言書を書かせた場合

などがあります。

(民法891条参照)

「相続人の廃除」は、家庭裁判所に申立てをし、申立てが認められることで、相続人としての資格を失わせます。

具体的には、被相続人を虐待したり、重大な侮辱をしたりした場合に認められます。

(民法892条参照)

また、養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の二つの方法があります。

その違いは、産みの親との親族関係が残るかどうかです。

普通養子縁組は、産みの親との親族関係はそのまま残るため、産みの親と養親(=養子先の親)の両方から相続をすることになります。

一方で、特別養子縁組は、産みの親との親族関係がなくなるため、産みの親が亡くなっても、そちらから相続することはできません。

このように、一般にイメージされるような「縁を切る」という制度は存在しません。

財産を渡したくないのであれば遺言書などの生前対策を、相続したくないのであれば相続放棄などを行っていくのが現実的でしょう。

相続放棄と遺族年金

 相続放棄をした場合、財産の相続ができなくなるため、入院給付金や介護保険料の還付などの相続に伴う金銭の受け取りはできなくなります。

 しかし、未支給年金や遺族年金など一部の金銭は、相続放棄をしても受け取ることができます。

 これは、遺族年金が、遺産ではないと考えられているからです。

 相続放棄は、一切の遺産を受け継がないという制度であるため、その言葉のイメージから「亡くなった方に関するお金は、一切受け取ることができない」と思われがちです。

 確かに、相続放棄をすると、亡くなった方の遺産については、取得ができません。

 しかし、遺族年金は、亡くなった方に支給されるお金を相続しているわけではありません。収入を支えていた方が亡くなった後に、遺された遺族に対して支給される財産です。

 そのため、相続放棄をしても、遺族年金の受給資格を失うことはありません。

 これは、そもそも、遺族年金がどういうものかという性質とも関連しています。

 たとえば妻が専業主婦で、夫の収入によって生計がなりたっているような世帯がある場合、突然夫が亡くなると、その世帯は一気に収入を失うことになります。

 そうなれば、残された妻や子は、生活ができなくなる可能性があります。

 そういった事態を防ぐために、残された遺族に支給されるものが、遺族年金です。

もちろん、夫が専業主夫で、妻の収入によって生計が成り立っている場合も同じです。

 支給対象は、亡くなった方の収入で生計を維持していた子か、子がいる妻(夫)です。

 遺族厚生年金は、亡くなった方が厚生年金に加入していた場合に、遺された遺族に支給されます。

 遺族厚生年金の受給資格には、順番が定められています。

 優先順位で言うと、1番が亡くなった方の妻(夫)と、亡くなった方の子どもです。2番目の優先権を持つのは、亡くなった方の両親で、3番目が孫、4番目が祖父母です。

 相続の権利は、法律上、妻と両親などが同時に権利を取得します。

 この点、妻が受け取る場合は両親が受け取れなくなる遺族年金は、民法上の相続の考え方とは異なってきているわけです。

相続放棄の前の財産調査の必要性

相続放棄の前に財産調査をする必要はありますか?

1 相続放棄の前に財産を調査する必要性

相続放棄をした後に,予想だにしなかった財産が見つかった場合は,相続をしておけばよかったと思うかもしれません。

また,相続放棄をしたら,自宅が亡くなった人の名義で出ていかなければならなくなったという事例もあります。

そのため,相続放棄をする前には,専門家に依頼して財産調査を行っておいた方がいい場合が多いです。

2 財産調査を行うケース

⑴ 財産がどれだけあるのか不明な場合

財産がどれだけあるのか不明な場合は,区役所や市役所、法務局、銀行など様々な機関に調査を行い,土地や預金口座がないかを調査します。

相続財産調査の経験が豊富で,様々な調査方法を熟知した専門家であれば,調査漏れがないよう網羅的に財産を調査することができます。

⑵ 借金がいくらあるのかが不明な場合

借金がどれだけあるのかわからないと,相続放棄をするか相続するかは決められません。

借金がないからと相続をした後に借金が見つかってしまった場合、借金の支払に負われることになってしまいます。

そこで,専門家に依頼して,網羅的に借金の全容を調査することをお勧めします。

どこから借りたのか,何社からの借金があるのかがわからなくても借金の有無を調査することができます。

3 財産調査が不要な場合

財産調査は可能であれば行う方が良いですが,これをしないと相続放棄ができないというわけではありません。

全く連絡を取っていない遠縁の親戚が亡くなり相続してしまった場合には,財産調査をせず相続手続に関与しないために相続放棄をする方もいます。

この場合は,放棄によりプラスの財産があっても引き継げなくはなりますが,それよりも相続手続に関与したくないとお考えの方が多いようです。

4 財産調査でお悩みの方はまずは弁護士に相談を

財産や借金の調査は様々な機関で調査をしなければならず,調査方法や必要な提出書類は市役所ごと、銀行ごとにバラバラです。

そのため,調査を網羅的に行おうとすると,相当な手間と時間がかかります。

また,平日の日中に窓口に行かなければならないことも多く,調査のために仕事を何度も休む必要があります。

そこで,手間と時間のかかる手続は専門家に一任することをお勧めします。

また,財産調査をしない場合のリスクについてもわかるため,まずは弁護士に相談するのが良いでしょう。