遺言書とあわせてビデオレターを遺す

1 遺言書作成と一緒にビデオレターを撮影する理由

遺言書作成とあわせてお勧めしたいことが,ビデオレターを撮影して遺言書と一緒に保管することです。

多くの人は,結婚式のムービーのためくらいでしか,ビデオレターの撮影はしたことがないのではないかと思います。

結婚式というお祝いの場で友人のためならともかく,自分の死後に子供や家族が見るためにビデオレターを撮影するというのは,少々気恥しいかもしれません。

しかし,このビデオレターが相続において役立つのです。

 

2 ビデオレターは遺留分対策にもなる

遺言書作成でもっとも頭を悩ませるのが遺留分減殺請求への対策です。

例えば,一人の子供に全ての遺産を相続させる遺言を作成した際に,その子供に対してもう一人の子供が金銭を請求してくるという場合です。

高額な不動産を相続したときに,高額な遺留分を支払うだけの現金が用意できない場合は対策が難しくなります。

このような場合に,ビデオレターが重要な意味を持っていきます。

 

3 文章では伝わりにくい想いをビデオで伝える

また,ビデオレターは,法律的な対策というだけでなく,子供や孫,兄弟などに想いを伝える手段としても有効です。

遺言書は,どうしても法律的な文章になってしまい硬い印象を与えるうえ,文章で想いを全て伝えるのは難しいです。

そういった場合も,ビデオレターなら,表情や身振り手振り,もしくは写真や思い出の品などを手に取りながら相続人への想いを伝えることができます。

 

4 ビデオレターは将来とても重要な意味を持つ

ビデオレターを撮影する現在は,それこそ今一緒に住んでいる子供たちへのメッセージと言われても,直接話せばいいと思ってしまうかもしれません。

しかしながら,将来お亡くなりになられた後,生きて話しているご両親の姿というものは,人生で最後に聞くご両親の言葉として真摯に受け止めます。

また,亡くなって何年も経つと,どれだけ一緒に過ごしていても,その顔,その声というのは忘れてしまうものです。

そうしたときに見て聞いて思い出せるビデオレターというのは,お子様たちの宝物になるかもしれません。

 

5 ビデオレターで何を話そうか迷ったら弁護士にご相談を

では,ビデオレターを撮ろうと思っても,改まって何を話せばいいのかわからないという方も多いかもしれません。

そういう場合は,是非,弁護士にご相談ください。

どのようなことを話せば法的な対策になるのか,どのような内容だと家族に想いが伝わるか,ご事情を詳細におうかがいしてご一緒にビデオレターの作成をお手伝いいたします。

もちろん,遺言書の作成もあわせてご相談を承ります。

 

是非一度,遺言書を作成される際はビデオレターの作成もご検討ください。

 

ペットと遺言

1 ペットのためにできる法的な対策

前回,ペットは,法律上は飼い主の所有物として遺産にあたり,相続の対象となるとお話ししました。

そのため,そのまま相続をしてしまうと相続人の所有物となってしまい,世話を見てくれるか不安です。

そこで,自分の死後,ペットが不幸にならないようにするための法的な対策をご紹介したいと思います。

 

2 遺言書の作成

生前の対策として遺言書は極めて有効です。

それは,遺言書は遺言を作る人の意思が絶対で,有効な遺言であれば相続人の意向に関係なく相続の方向を決定づけるからです。

 

しかし,ペットのための遺言となると,法的に有効なものとするためには工夫が必要です。

ペットはあくまで物であり,人ではないため,ペットに財産を渡すということはできません。

「飼い猫の〇〇に当面のごはん代として〇〇万円を相続させる」との遺言を作成しても無効となってしまいます。

 

また,「長男の〇〇は,飼い犬の面倒を最期までしなければならない」との文言を作成したとしても,法的に効力はありません。

あくまで,法的効力のない付言事項として,相続人に対して遺言者からのお願いをしているに留まります。

 

3 負担付き遺贈

そこで,自分の死後,ペットの面倒を誰かに見てもらうことを法的に強制するための方法として挙げられるのが負担付き遺贈です。

負担付き遺贈とは,遺言書で財産を譲る代わりに,財産をもらう人に一定の負担を課すものです。

今回でいえば,現金等の財産を譲る代わりにペットの世話という負担を課すというものです。

財産をもらった人がペットの世話を行わない場合には,所定の手続を経ると,渡した現金を返さなくてはならなくなります。

 

4 具体的な遺言書の文面

負担付き遺贈の具体的な文面案としては次のようなものが一例として考えられます。

「 第〇条 遺言者は,長男〇〇に対して,現金500万円を遺贈する。

2 長男〇〇は,前項の遺贈の負担として,遺言者の飼い猫であるルリの世話をし,ルリの死亡後は,

東京都内のペット霊園に埋葬しなければならない。                         」

※「ルリ」は猫の名前

 

5 負担付き遺贈を行う際の注意点

遺言書で譲る財産は,現金でも土地・建物などの不動産でもなんでも大丈夫です。

もっとも,譲る財産の額がペットの世話のためにかかる費用を上回るものでなければなりません。

これは,ペットの世話にかかる費用が貰った財産の金額を超えてしまう場合,法律上それ以上ペットの世話をしなくともよいからです。

不動産など,現金化しにくい財産を渡されてもペットの世話代が払えなくなってしまうおそれがあるため,できればある程度の現金を渡す方がよいでしょう。

 

またもらった人が世話をしなかったからとお金を取り上げたとしても,結局ペットの世話をしてくれる人がいなくなってしまうため,できれば信頼できる人に託すのがよいと思われます。

 

6 おわりに

以上,ペットのための相続対策の方法を一つ紹介させていただきました。

また,機会があれば他の方法も紹介していけたらと思います。

遺言のご相談を東京でお考えの方はこちら

ペットと相続

 

コロナウイルスに関して緊迫した情勢が続く昨今,もし自分が感染したら,ということはどうしても考えてしまいます。

特に,自分がいなくなった後,家族はどうなるのかという心配は絶えません。

もしもの時に備えて,この機会に遺言を作ろうとお考えの方も増えてきているとうかがっています。

 

さて,遺言といえば,家族に財産を遺したり,想いを伝えたりするものですが,家族の形も人それぞれです。

中には,家にいる愛犬・愛猫が心配という方もいらっしゃるかもしれません。

お子様は自立して独立した生活を送っていれば心配すべきことは少ないです。

しかし,ペットの場合は,一人暮らしの自分が死んでしまったら誰が面倒を見てくれるのか心配でなりません。

 

 

こんな話を聞いたことがあります。

東京でお独りでお住まいの方が,ペットの猫と穏やかな生活を送っていましたが,外出中に脳梗塞で倒れ病院に運ばれてしまいました。

その方は一命は取りとめたものの,しばらく意識が戻りませんでした。

そして,意識が戻られてまず仰られた言葉が

 

「家に猫がいるから助けてほしい」

 

でした。

幸いにも,猫は残っていたご飯とシンクの水で生きながらえていて,大事とはなりませんでしたが,このまま意識が戻らなかった場合を考えると背筋が冷たくなります。

このようなリスクはどなたにでも訪れうるものです。

 

 

 

そこで,ペットの法的な扱いと,もしもの時に備えてペットにしてあげられる法的な対策というものをご紹介していきたいと思います。

 

まず,前提として,民法上,ペットは飼い主の財産・所有物という扱いになります。

ペットは家族だと私も思っているので,この扱いには疑問が残りますが,法律はそうなっています。

したがって,飼い主が亡くなった場合,通常,ペットの所有権は相続人に相続されます。

すなわち,ペットは飼い主の奥様やお子様のものになるということです。

そして,悲しいことですが,ペットの所有権を獲得したからといって,相続人がペットの面倒を見てくれるとは限りません。

法律上もペットの面倒を見る義務というものは発生しないので,そのまま放っておかれても文句を言えません。

 

そこで,次回は,ペットのためにできることはないかということを紹介していきたいと思います。

コロナ情勢と弁護士

1 弁護士業務とコロナ

昨今,猛威を振るう新型コロナウイルスですが,弁護士業務も無関係ではいられません。

弁護士業務は次の2つの点からテレワークに向いていないからです。

 

2 ①仕事道具を外に持ち出しにくい

弁護士は,事件の資料を事務所外に持ち出すことは原則禁止とされている場所が多いです。

これは,弁護士の扱う情報はプライバシー性や機密性が高いため,外部で紛失した場合に依頼者や関係者の方々に大変なご迷惑をかけてしまうからです。

プライバシー性の高い資料としては,一例として,住所が記載されている住民票や病歴の記載されているカルテなどがあります。

また,企業法務の場合には,報道前の情報などの機密情報もありえます。

このように,プライバシー情報や機密情報を扱う機会が多いため,これらを持ち出しにくい弁護士業務はテレワークに不向きです。

また,セキュリティ上の観点から,パソコンのデータに外部からアクセスするのも危険であることも理由の一つです。

 

3 ②対面で話をする必要がある

弁護士がテレワークをするのを妨げる要因に,実際に向かい合って話す必要があるという点があります。

これは,資料の現物を実際に確認しなければならない場面があること及び実際に裁判所に行く必要があることが理由です。

 

⑴ 資料の現物を確認する必要

お電話でお話をうかがっているときに,手元の資料についてご説明をお願いすることはしばしばあります。

しかしながら,法的な文章や税金に関わる通知書などは難解で一見して意味が取りづらいものも多いです。

そのような書類をお電話で説明をお願いするのはかなりのご負担を強いることになるため,実際に資料をご持参いただいて現物を弁護士が確認した方がよい場合があるのです。

また,資料の中には,一見して重要には見えない記載でも法的に重要な意味を持つ記載があります。

このような記載を電話での説明だと見落としてしまうリスクがあるため,やはり,弁護士が資料の現物を確認した方が安全です。

 

⑵ 裁判所に行く必要

裁判所の手続は,実際に裁判所へ行かなければならないものが多いです。

確かに,書面のみを提出し直接裁判所に行かない場合や,電話での期日を行うこともあります。

しかし,全てを書面の提出のみで終わらせることは難しいです。

また,遠方の裁判所でない場合は電話での期日を認められない場合もあります。

このため,結局どこかのタイミングでは裁判所に行かなければならず,完全なテレワークを行うことは難しいです。

 

4 リモートデスクトップ等の活用

リモートデスクトップにより,事務所のPC上の資料に比較的にリスクを減らしてアクセスすることはできます。

また,資料についても,依頼者の方にスキャンして送っていただくことで対応する場面も多くなっています。

裁判所も,会議システムを利用した裁判期日を行う取り組みを始めており,いずれは弁護士が裁判所に行く必要はなくなるかもしれません。

しかしながら,リモートデスクトップでもセキュリティ面でのリスクは0にはできません。

また,依頼者の方の中には,ご高齢で技術的に資料送付が難しい方もいらっしゃいます。

裁判所の取り組みも試験的に始まったばかりで,全面的な活用までは今しばらくの時間を要するでしょう。

このため,弁護士が完全なテレワークを行うことはもう少し先になりそうです。

 

5 手洗いうがいをこまめに

とは言いつつも,このご時世,感染リスクは極めて大きいので,皆様,不要不急の外出を控えて,手洗いうがいをこまめに行って,お体にお気をつけてください。

 

 

自筆証書遺言の法務局での保管サービスに関して

最近,相続業界でも話題なのが,今年の7月10日から始まる,自筆証書遺言を法務局で保管してくれるサービスです。

遺言書には

①自筆証書遺言

②公正証書遺言

③秘密証書遺言

の3種類がありますが,今回新設される制度は①の自筆証書遺言を国が保管してくれる制度です。

 

①の自筆証書遺言は,特別な手続きがなくとも自宅で一人で作れる反面,自宅等で保管することから

⑴ 隠しておいたら隠し場所を忘れてしまい,見つからない。

⑵ 汚してしまったり,自宅の火災で焼失してしまった。

⑶ 故人が周囲には内緒で作っていたため,亡くなったあと誰も存在を知らない

⑷ 相続人が自分に不利な遺言を隠したり,改竄してしまう

⑸ 亡くなった後,遺言書を裁判所に持っていく検認手続というものをしなければならない

⑹ 次のような形式要件があり,せっかく作っても無効になってしまう可能性がある。

・原則として全て遺言者が自書すること

・作成した日付の記入

・遺言者の署名

・印鑑を押すこと

といったデメリットがありました。

こういった場合,せっかく遺言を作っていても遺言は効力を発揮できません。

また,仮に遺言がちゃんと綺麗に見つかっても,自分に不利なことが書かれている相続人が「その遺言は改竄されているから無効だ。」などと言いがかりをつけてきて,紛争の火種になってしまいます。

 

一方で,②の公正証書遺言は,公証役場という場所に行き,公証人に遺言の内容を伝えると,公証人が遺言書を作成し保管してくれます。

この公証役場というのは,全国の比較的大きな都市にはだいたいあり,東京ですと43ヶ所あります。

公正証書遺言による場合は,①自筆証書遺言のような,紛失・汚損・改竄のリスクや,せっかく作っても形式が間違っており無効となるリスクはありません。

しかしながら

⑴ 公証役場の料金が数万円~十数万円程度かかる

(「1億円の財産を,奥さんに6000万円,長男に4000万円相続させる」との遺言の場合は,8万3000円かかります。)

⑵ 遺言書を作ったことが他の相続人にバレてしまうリスクがある

といった,デメリットが公正証書遺言にもあります。

 

この一長一短の制度を補うものとして,今回の自筆証書遺言の制度が設けられました。

この制度のメリットとしては次のような点が挙げられます。

⑴ 国が保管してくれるため遺言書を紛失したり,汚したりしてしまうリスクがない

⑵ 他人に見つかり,隠されたり改竄されてしまうリスクがない

⑶ 亡くなった場合,遺言書があれば国が通知してくれる

⑷ 手数料が公正証書遺言より安い(手数料はまだ未定ですが,少なくとも十数万円することはないと思われます)

⑸ 亡くなった後,裁判所に遺言を持っていく(検認手続をする)必要がない

もっとも,遺言が形式不備で無効になってしまうなどのリスクは存在するため,注意は必要です。

 

このように,従来の制度の短所を埋める形で,安く手軽に遺言ができるようになる今回の法務局での保管サービスは,私としても今後利用をしていきたいと思います。

また,別の機会に,保管サービスの具体的な利用方法などをご紹介できたらと思います。

 

 

最近は新型ウイルスも他人事とは言えなくなってきましたので,手洗い・マスク等を徹底して,皆様どうかお気を付けください。