遺産分割協議の前にお金が必要になった場合の3つの対処法

1 死亡後に凍結される預金を引き出すには、相続人全員のサインと判子が必要

人が死亡すると、死亡した人の預金口座は凍結されます。

預金口座が凍結されると、一切の引き出しや入金ができなくなってしまいます。

凍結を解除して預金口座からお金を引き出すためには、各銀行所定の相続手続を行います。

この相続手続には、遺言書がないと、相続人全員がサインと判子をした遺産分割協議書が必要になります。

そのため、相続人の間でもめてしまうと、預金が引き出せなくなってしまいます。

そこで、葬儀費用の支払いや相続税の支払いなどで遺産分割協議前に預金を引き出す必要がある場合の3つの対処方法をメリットとデメリットを簡単にご紹介します。

詳しくは、それぞれ別の記事で紹介するので、そちらをご覧ください。

2 遺産分割前の預金の払戻し

令和2年の民法改正で新設された制度で、遺産分割協議を行わずに預金の一部を払い戻すことができます。

この制度の特徴は、次のとおりです。

メリット

・家庭裁判所での特別な手続きなどが必要ない

・1か月程度で引き出しができること

デメリット

・引き出しに限度額があること

3 家庭裁判所での遺産の一部分割

家庭裁判所に、遺産の一部分割の審判を申し立てて、裁判所の許可を得て預金を引き出すことができます。

令和2年の民法改正で、明文化されました。

(以前も可能とは解釈されてはいましたが、法律に明記されていなかったため、可能かどうかに争いがありました。)

この制度の特徴は、次のとおりです。

メリット

・裁判所の許可があれば限度額がない。

デメリット

・手続が複雑

・払戻ができるかどうかが裁判所の審査で決まる。

・時間がかかる(早くとも3~6か月程度)

4 ATMを使って引き出す

預金口座は自動的に凍結されるのではなく、口座名義人が死亡したことを銀行に連絡をして初めて凍結されます。

つまり、カードと暗証番号を用いてATMで引き出す分には、死亡後も預金を引き出すことはできてしまいます。

こちらは、便利な反面、様々な問題点があります。

メリット

・その日に引き出すことができる。

・特別な手続きが一切必要なく、カードと暗証番号があればよい

デメリット

・違法である可能性が高い。

・後々、責任追及をされるおそれがある。

・定期預金は引き出せない。

5 まずは弁護士に相談を

人が亡くなったあとは、色々とお金が入用です。

3つほど方法を紹介しましたが、一時的に預金を引き出すのにどの方法が適切かは慎重に判断しなければなりません。

そのため、迷ったら、まずは弁護士に相談をしてみるのがよいでしょう。